漁書日誌 3.0

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恵比寿で実験映画を

昨年出た新刊書で、ようよう古書でひっかかったので購入したもの。

密やかな教育―“やおい・ボーイズラブ”前史

密やかな教育―“やおい・ボーイズラブ”前史

やおいボーイズラブ前史」と副題がある。三島の由紀夫関係についても書かれており、著者が講義で三島扮する「聖セバスチァンの殉教」写真を学生に見せたら悪評芬々だったという。
それから、本日新刊書店で購入してしまったもの。
贈与論 (ちくま学芸文庫)

贈与論 (ちくま学芸文庫)

純白の夜 (角川文庫)

純白の夜 (角川文庫)

塚本邦雄の青春 (ウェッジ文庫)

塚本邦雄の青春 (ウェッジ文庫)

「贈与論」なんか特価書籍で買えばヨカッタかもしれないが、ちくま学芸文庫コーナーが縮小されないために地元新刊書店にて購入。「純白の夜」は、改版初版。組版が新たにされ、小池真理子による解説がついた。それから注目すべきは「塚本邦雄の青春」か。「水葬物語」以前の姿が描かれていて興味深い。三島由紀夫の推挽で「文学界」に「水葬物語」から十首掲載された話も出てくるけれど、本書には書いてないがこの時は「環状路」とか何とかそういうタイトルで掲載された筈。また「ADONIS」に塚本が変名で作品掲載したこともちゃんと触れていた。「装飾楽句」以降の評伝を読んでみたいところである。
さて、そうれはそうと、本日は写真美術館で開催中の恵比寿映像祭に行ってきた。お目当ては、キャニオン・シネマの実験映画上映である。だが失敗した。もうちょっと早めにここへ来ていれば、と。映画とは別に、展示会場ではウォーホルの映像作品やら、アメリカの過去の実験映像やらCM作品など展示していたのである。もっとじっくりみたかったのだが、急ぎ足でサーッとまわるのみ。そして19時よりホールでの上映。
アメリカ西海岸の前衛・実験映画の配給組合?キャニオン・シネマの特集で、旧作から新作まで。なかでも、ブルース・ベイリーとかロバート・ネルソンとか聞いたことある名前の作家らの映画をやるというので来たわけだが、どれもこれも王道の実験映画という感触であった。一番古い1947年の映画などはカラー作品で、この時代、マヤ・デレンやらアンガーやらだって皆モノクロだのにと意外。今回、ロバート・ネルソンの1966年の「ホット・レザレット」というのが特に印象に残った。コマドリというか早送りで山中の道路を走り抜ける自動車の運転席からの映像で、最後は崖から転落……というものだが、この道路を暴走する映像で思い出したのが、確か、ジャック・カーディフだったか、70年代初頭のパリで撮った短篇実験映画で、ノンストップ編集無しで猛スピードでパリ市内を疾走するやつ(それのタイトル失念)。あれのようであった。転落する瞬間の絵は昔の映画からのパクリというか引用挿入で、そのコマだけ車体がフォードT型になる(これ女性の運転手が一瞬だけ見えるのだが、もしかして「ポーリンの危難」なんかからの引用か?)。それと、落下していく車を何度も何度もサンプリングのように繰り返すというシーンがあったのだが、ああこれは「バレエ・メカニック」の繰り返しオバサンを意識してるのか、とか、そんなことを考えながら見た。で、最後には2006年製作の実験映画を見たのだが、てっきりデジタル処理とか凝りに凝ったビデオ映像だと思っていたのに、流れた作品はまるっきり60年代風、というかこれ1968年の作品ですといわれても疑わないような、松本俊夫の「つぶれかかった右眼のために」のワンスクリーンアメリカ版みたいな映画であった。
なんか、ひとつの「実験映画」「アバンガルド映画」というのがもう確固たるスタイルになってしまっているような倒錯的状況なのか……いずれにしても、古式ゆかしい実験映画的作品群で、堪能。上映後の質問コーナーでは、レナン「アンダーグラウンド映画」の邦訳者の先生が質問していた。明日はキャニオン・シネマの近作特集で、ブラッケージの近作が一本含まれているが、残念、明日は芝居に行くので無理。