漁書日誌 3.0

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聖なる世界

さて、本日は高円寺古書展の初日であった。注文した品は、写真集とボール表紙本。まことに妙な組み合わせではある。それはそうと、数日前からグッと冷えるようになった。今日も寒い。
会場に着いたのは17時半過ぎ。既に閉場間近で外は真っ暗である。まずは入口はいったすぐの所に、和本がドサリと出ている。和本は興味の埒外ではあるのだが、よく見ると、明治期のボール表紙本がゴロゴロと紛れている。この辺はちょっとばかし興味があって少し見る。ただし和本が主に列んでいるので、普通の洋装本と違って、棚に差してあるのではなく横になっていたり立てかけてあったりする。だから、いちいち後ろの本を見たりするのに手間がかかり時間がかかってしまった。聞いたこともない明治期の家庭小説とか、和田式記憶術の本とか、安かったら欲しいなあというものもあったが、そういうのは覿面にそれなりの価格がついているものである。ドサッとあるボール表紙本を漁っていると、あれ、これは十返舎一九の「西洋道中膝栗毛」じゃないの、再版か、でも2000円じゃあなあ、と、棚に戻す。隣のボール表紙本を手に取ると、今度は「東海道中膝栗毛」再版。こちらは安い。まあ背中・表紙と紙の束が剥離しそうというのと、見返しに落書きが酷いというのもあるのだが、しかし300円という値段、これは簡単に修復出来るし、まあ元版ではないだろうけれど、参考資料としていいかということで抱える。その他、こないだ古書展で300円で拾った元版の「福翁自伝」の重版が、ここでは似たような状態のものが20000円であった。無論重版。ここの棚、よくわからない。他にこの棚では「日露戦争実記」を買ってみる。参考資料として。
でまあ、そうこうしているうちに、あと15分となってしまう。もうかなりザーッと見ていく。今日は、けっこう時間をかけてみていったらよい拾いものがあったのではあるまいか、と、ふと思ったが、しかし、まあ無理だ。
で、まだ閉場まで五分あるのに、帳場の一人が、「帳場が締められないので早く出てください」ともの凄い勢いで追い出し攻勢をかける。内心、まだ五分もあるのに一人一人に迫るように声をかけるなんて…と思っていたが、他の帳場の人が「まだ五分あるじゃないのよ」と笑い出した。内心、皆笑っているけど、さっきはかなりえげつない追い出し方してたぞ、と。お陰でほとんど駆け足になってしまい、他には結局、改造社の円本の谷崎集のみ。こういう代表的な円本も参考資料として一冊持っていたかったのだ。明治大正、とかはあるのだが、やはり改造社がトップだったし。

現代日本文学全集「谷崎潤一郎集」(改造社)上製凾300円
雑誌「日露戦争実記」(1905.8)300円
で、注文したもの二冊は、両方とも当たり。まずはボール表紙本。

十返舎一九「増補改訂 東海道中膝栗毛」(文事堂)明治19年3月再版出版(明治18年1月26日翻刻御届)背痛300円
サミュエル・スマイルズ中村正直訳「西国立志編」(銀花堂)明治21年1月出版(明治20年10月15日翻刻御届)2000円
後者が注文品。明治の立身出世主義にちょっと興味があり、「西国立志編」は前々から当時のを欲しかったのだ。もちろん、特にこだわりはなく明治後期の後版重版で全くよく、出来れば千円以内で拾いたかったのだが、ありそうで、なかなか見かけない。それで今回の注文となったわけ。まあ、読むのは既に持っている講談社学術文庫版ではあるが。
それで、今日のメイン。注文した高額商品は見事に当たった。

川田喜久治写真集「聖なる世界」(写真評論社)限定1000部凾少傷28000円
この価格は、いまもの凄くキツイ。キツイのではあるが、相場からしたらかなり安め。まずこんな価格では入手は不可能だし、エイヤっと注文したもの。目録に「凾少傷」とあったのが心配だったが、背表紙の上部が、少し剥がれている。この本の凾は、段ボールの凾に印刷した紙を貼り付けて作られている。その凾表紙の紙が角の所で切れている部分があるのである。まあ欠けはなく、幸い、褪色しやすい背も全く褪色してないし、これならうまく修復出来るだろう。
まあ、今ではまずめったに見かけない、昔風のどっしりとした凾入上製の重い写真集だ。解説は澁澤龍彦。ボマルツォの庭、タイガー・バーム・ガーデン、ルードヴィッヒII世の城などが被写体。特別川田喜久治の大ファンというわけではないが、この写真集だけは学生の頃よりいつか欲しいと思っていたもので、嬉しい。しかしこれで、もう冬のバーゲンとか行く余裕は全くなくなった。新しく洋服でも買おうと思っていたのだが。