漁書日誌 3.0

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安部公房と団鬼六

地元繁華街に出たので、いつも覗く古書店に立ち寄る。新潮文庫安部公房が十冊くらい入荷していたので、持っていないものを三冊購入。

安部公房新潮文庫ですべて揃えようと、チビチビと古書店で見つけては買っているのです。「他人の顔」から「カンガルーノート」まで全24冊だと思うのですが、そのうちこれで21冊揃ったことになります。あと三冊か。
それと、団鬼六の自伝「蛇のみちは」(幻冬舎アウトロー文庫)というのを見つけ、フッと買ってしまいました。
団鬼六、「花と蛇」の人。黒岩松次郎というペンネームでむかし「大穴」という株屋小説を書いて映画化されたこと。「花と蛇」が最初「奇譚クラブ」に連載された時に、三島由紀夫が注目し、当時の編集長に、これは今なら俺が推せばなんとかなるからと中央公論新人賞(当時三島は審査員だった)への打診があったのにもかかわらず、取るなら芥川だということで一蹴したのだが、あとになって後悔した、とかいうエピソードを知っているくらい。実は「花と蛇」もちゃんと読んだこともなく、前記「大穴」も原作は未読で杉浦直樹主演の映画のみ見た、というくらいなのですが、いや、むかし鬼六随筆「SM談義」という本を買って持っているはず……ですが未読。
まあそういう有り様で、この作家についてはほとんど何も知らなかったのですけれど、この自伝はなかなか面白いエピソード満載でした。帰り際にお茶して一服しながら一気に読了しちゃいましたが、そもそも純文の短篇集を出したが全く売れず、いきなり文春クラブに乗り込んで、そこで将棋で一人勝ちしてしまい、文士と仲良くなって、いきなり無名の青年が出版記念会を開いて貰った話とか、苦労した短篇集が全く売れず、そのくせ適当に書いた株小説がバカ売れしたとか、その金全部つぎ込んでバーを買ったら騙されて大損したとか、まあそのほかいろいろと、エロダクション設立の頃のエピソードなど、人生ギャンブル師のようでなかなか面白かったです。
ただもうちょっとこれ、日付とか何年のこととか書いてあるともっとリアリティー出たかも、などと。
話は戻りますが、新潮社の安部公房全集はいつになったら完結するのでしょうね。なかなか難しいことがあるようですが、うまくいってもらいたいものです。それと、安部公房論の単行本って、かなり少ないですよね。最近出た何冊かあったと思いますが、けれど安部公房ってもっと人気あったと思うんですけど、それでも安部公房論が少ない(安部論の単行本という意味で、雑誌発表された安部論が少ないという意味ではない)ですよね。何故だろう。いや、そりゃ武田泰淳論の単行本だって吉行淳之介論の単行本だって少ないですがね。
「時の崖」「仔象の死」でしたっけ、確か自主映画があったと思いますが、あれも見たいなあ。安部公房脚本ものは勅使河原関係で、「砂の女」とか幾つかDVD出ていますが、安部が監督した自主映画のここらへん、何とか見られないものか。