漁書日誌 3.0

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窓展から高円寺

本日は窓展初日。寝不足状態で神保町へ向かう。開場5分前に到着。一服してから向かうと既に開場している。まずはあきつ書店の棚へ。漱石の元版重版凾欠なんかがポロポロある。ああこれは前にも見たなという本も、値下げされていたりしてなかなか目が離せない。しかしまあ窓展は、みはる書房やけやき書店、かわほり堂、魚山堂などもあって他にも見るべき棚はある。ただ、カゴがないのが玉に瑕で、本を何冊も抱えて移動するのがことのほか面倒でもある。けやき書店は傷がある芥川の元版本なんかが安くゴロゴロしてい、かわほり堂も300円均一的な感じのところもあった。ふと見ると、講談社文芸文庫版の「日本文壇史」24冊揃(目次索引欠)が3000円で縛ってあった。背中が褪色し紐の縛り痕もついてしまっているが、これはいいと抱えるも、重くて、結局そのまま帳場に預けて離脱。
今日は西部古書展の初日でもあるので、ちょっと魔が差して行ってみるかと向かう。朝は昨日に続いて霧雨的な天気であったが、結局やんで、雲の向こうには青空がチラチラ見える。といっても、12月に入ったからか、空気は澄んで冷たい。高円寺も実はかなり久々である。目録を見た感じではちょっと期待していたのだけれども、なんと欲しいものは1冊もなかった。14時過ぎ、高円寺のぎょうざの満洲で遅めの昼食。クタクタでミスドで一服していたらうつらうつらしてしまった。17時前くらいに古書会館に戻って、再度ザーッと見てからお会計。購入したものは以下。結局かなりの散財になってしまった。

森田草平「初恋」(春陽堂:現代文芸叢書)大正元年9月17日再版300円
半田良平編「ベルグソンの哲学」(日月社:現代百科文庫)大正3年11月28日500円
土岐哀果「万物の世界」(植竹書院:現代和歌選集叢書)大正4年5月5日凾200円
広津柳浪「変目伝」(新潮社)大正7年8月25日600円
苦楽四月号特別附録「近代情話選集」大正13年3月7日300円
橘高広「キネマ随筆集 影絵の国」(聚芳閣)大正14年5月18日凾欠痛800円
まずは判型の小さいものから。現代和歌選集叢書と現代百科叢書は植竹書院ということで参考のために購入。特に植竹喜四郎が共同経営していた(後に独立)した日月社(じつげつしゃ)の現代百科叢書はなかなか見かけないので、ちょっとぼろくて500円は高いなと思ったが。「万物の世界」は前は700円だったので見送ったが、今回さすがに200円ならと。「影絵の国」は嬉しかった。

柳宗悦「科学と人生」(籾山書店)明治44年10月1日初版凾欠1500円
小山内薫「大川端」(春陽堂昭和3年10月18日初版凾500円
今東光「稚児」(鳳書房)昭和22年2月10日200円
「科学と人生」は1500円もしたがいってしまった。これは前から欲しかったもので、適価で入手できて嬉しい。ロンブローゾの心霊論なんかに言及している最初期の文献ではなかろうか。「大川端」は勿論所持しているが凾欠だったので。ただし今回の本は凾の底が欠。あとで補修しなければならない。「稚児」も10年以上前に買って持っているが、200円はないだろうと買ってしまう。

伊多波英夫「銀月・有美と周辺」(秋田近代文芸史研究会)昭和54年4月1日カバ帯300円
岡田茂「悔いなきわが映画人生」(財界研究所)カバ欠300円
「当用日記1979」(博文館)凾欠少汚100円
「銀月・有美と周辺」は、おそらく伊藤銀月と青柳有美についての基礎文献であろう。というか、他にこの辺を追いかけた文献は聞いたことがない。前から(とりわけ銀月という人については)気になっていた本だが、今回安かったので。それから、なんといっても日記。最初は少し汚れていて戦前の無名の人のものかと思ったが、棚から抜いてみると案外綺麗。見ると1979とある。パラパラ見ると毎日つけてある。幾らなんでもこんな最近の無名人の日記なんぞと思っていた。が、会計前にザッと再度チェックした時に、まだ棚にあったので、再度手に取りパラ読みしていくと、大学で講義し、編集者とゲラのやり取りをし……誰だと思ったら、東大名誉教授の某ドイツ文学者であった。プライベートな日記が何故とも思えるが、蔵書一括の中に入っていたのであろう。100円だしというのもあり面白半分に買ってみた。

「新小説」明治34年1月号口絵欠400円
ホトトギス大正2年6月20日臨時増刊200円
「玄想」昭和24年2月号200円
「シナリオ」昭和26年7月号200円
「新小説」は、口絵写真に作家のみならず挿絵画家たちの家族写真が掲載されていたので参考に購入。「ホトトギス」は203号。200号は記念号で3版まで出、201号も再版まで出て、売れているからか、203号も臨時増刊として巻頭に鏡花「蒟蒻本」を持って来ている。200号は初版2700部、再版500部、三版300部を印刷したと広告が出ている。初版は大分刷ったなあという印象だが、再版以降は慎重。「玄想」はほぼ丸ごと福田恆存矢内原伊作の対談掲載。「シナリオ」は三島原作の映画シナリオ掲載ゆえに購入。
買いも買ったりという感じだが、これに加えて今回一番高価な文庫本がある。

伊藤整日本文壇史」(講談社文芸文庫)カバ24冊揃3000円
いま相場だと1万円前後だし、これはと買ってしまった。重い。目次・索引の巻が欠だがそんなものは後から買い足せばよい。いつか買わなくてはと思っていたところであった。背が褪色し少し痛みがあるが全然かまわないやとウホウホ思っていたが、帰宅して見ると全巻にペンでラインがチラホラ。甘かった。といっても、紐外すと24冊もあるのが崩れるしまさか書き込みあるならそう注意書きするだろうと思っていたのだが(テメーコノヤローと憤懣やるかたないとは口に出さず抑圧して)、まだまだ修行が足りない。


「万物の世界 土岐哀果名歌選集」(現代和歌選集叢書3)。現代代表作叢書もそうだが、植竹書院の本の装幀はなかなか悪くない。こちらの叢書の方も、現代代表作叢書と同じく、著者の代表作を集めて縮刷版の体裁で刊行したもの。この本の場合だと、土岐の第一歌集「NAKIWARAI」から第五歌集までのなかから著者がセレクトして作品が収録されている。凾は機械箱で、背と平に貼題箋。凾の材質はボール紙だが、表面にエンボス的に柄が入っている。本体は、背が絹でタイトル著者名が金箔捺しの白抜きになっている。表紙の英字は、単にタイトルをローマ字表記し英字で著者のサインが印刷され、口絵にも著者の筆跡が入っている。