漁書日誌 3.0

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神田古本まつりと「文豪ゲームと初版本」

台風だイベントだ仕事だとやっていてブログをつけるのを怠っているうちに、2週間近くが須臾の間に経過してしまった。
既に更新したが、前回のブログ、10月27日、神田古本まつりでの特選古書展。その後、オペラ「サド侯爵夫人」を見てから、翌日は山中湖村に向かい、日曜日には三島由紀夫文学館でのレイクサロンで司会。そして金曜日は、すずらん通りでの神保町ブックフェスティバル、その翌日の土曜日は古書会館でのイベント「文豪ゲームと初版本」にて講演と立て続けであった。
まずはブックフェスティバルか。これは毎年楽しみにしているもので、すずらん通りにズラリと出版社ワゴンが列び、在庫僅少品や品切れ本などを安価に販売するというもの。10時開場で朝イチにと思っていたが、あれこれの準備などで徹夜してヘロヘロ、結局、正午前くらいに現場に到着。国書刊行会から白水社森話社勁草書房等々のワゴンを人だかりをかき分けながらまわっていく。昨年が良かったからか、今年はそこまでのスマッシュヒットはなかったものの、東京大学出版会がカバー欠の本を安く出していたりして、ちょびちょびと買っていたらかなりの買い物になってしまった。

ヴァーノン・リー「教皇ヒュアキントス」(国書刊行会)カバ帯2000円
千葉俊二他編「谷崎潤一郎 中国体験と物語の力」(勉誠出版)カバ700円
田嶋一「少年と青年の近代日本」(東京大学出版会)カバ欠2000円
村上淳一「仮想の近代」(東京大学出版会)カバ欠1000円
真銅正宏「触感の文学史」(勉誠出版)カバ700円
また、こちらはすずらん通りではなく靖国通り沿いの方だが、西荻の盛林堂ワゴンに立ち寄ったら、これまたなんというか凝縮したワゴンで、安い。相当売れたようだったが、ガシガシ追加されているようである。ご店主も気さくにあれこれ話しかけてこられ、さきほど1800円だった本が後で見たら800円に値下げしているなど、買わせずにはおかないような魔力に覿面やられてあれこれと買ってしまった。

岩佐東一郎「書痴半代記」(東京文献センター)昭和43年10月20日初版凾帯500円
小寺謙吉「宝石本・わすれなぐさ」(西澤書店)昭和55年1月15日凾識語署名800円
橘外男「ベイラの獅子像」(教養文庫)カバ300円
林達夫林達夫芸術論集」(講談社文芸文庫)カバ帯300円
書物関係のこれらは実は所持していなかったが、お安く入手できた。文庫は講談社文芸文庫が300円でズラリとあってこれはお買い得といってしまった。
そして翌日。


日本古書通信社主催で東京古書会館7階で催されたイベント「文豪ゲームと初版本」12時より開場。会場にはガラスケースが用意され、川島幸希さん所蔵の「金色夜叉」の原稿や「月に吠える」無削除版ほか稀覯本の数々が列べられ、限定49名の参加者はまずそれらを見てから、13時よりトーク開始。トップバッターはワタクシで、「私の文アル体験記・文豪キャラ造形から見る作家イメージ」と題して30分の講演。スクリーンで「文豪とアルケミスト」(ネットゲーム)の文豪キャラと実際の作家の肖像写真を比較検討しながら、文豪キャラはほとんどが実際の作家に似ていないけれども、伝記的事実や作品のイメージによって、従来の似顔絵的作家キャラとは距離を取った造形になっているというような内容。今年春に「リポート笠間」に書かせてもらった文アルについてのわたしの文章を作家表象に絞って更に発展させたような感じ。
その後、川島幸希さんによる初心者向けの「初版本の上手な買い方」講座。ユーモアたっぷりに実例を交えたお話で、これまたあっと言う間に時間が過ぎた。そして最後に参加者全員でビンゴゲーム大会、漏れなく文豪とアルケミストの文豪の初版本が当たるということで会場も大盛り上がり。盛況の内に幕を閉じた。参加者分のみでなく少し余分に川島さんが持ってこられた本が余ったので、まずは会場スタッフの皆さんが希望のものをいただき、最後にワタクシや古通のスタッフさんなどもそれぞれ本をいただいたのはありがたい限りであった。
会場に駆けつけた八木社長他の皆さんと近所で軽くお茶をしてから散開。ワタクシはといえば、その足で再度古書会館へと戻り、地下の会場でやっている愛書会古書展に。というのも、目録注文品があったためだが、正直、かなり散財した後でもあり、微妙な心境ではあった。そして注文品2点、どちらも……当選。

夏目漱石「鶉籠」(春陽堂明治40年3月10日3版カバ10000円
「改造」創刊号4000円
両方とも注文品。「鶉籠」は思っていたよりもカバーが綺麗で嬉しい、嬉しいが痛い。懐が限りなく痛い。そして「改造」創刊号。創刊号だけ、表紙デザインが異なるのは知っていた。しかし受け取ってからよく見てみると2版で、初版は大正8年3月28日発行だが、これは4月3日発行の2版なのであった。「改造」は創刊号で2版を出すほどであったのか。これはこれで面白い資料である。
そしてまたフラフラと盛林堂ワゴンに立ち寄ってしまい、また、昨日逡巡して買わなかった本を思い出してすずらん通りに買いに行ったりして、もうゲルピン状態。これでどうやって月末まで過ごすのか、という貧窮問答歌状態に陥った。

堀辰雄「不器用な天使」(改造社昭和5年7月3日初版
土岐善麿「明治大正芸術史」(新潮文庫昭和14年8月10日14版150円
邦枝完二「お伝地獄」上下(講談社大衆文学館)カバ帯揃500円
河上徹太郎「私の詩と真実」(講談社文芸文庫)カバ帯300円
三木順子「形象という経験」(勁草書房)カバ帯2200円
堀辰雄はビンゴ大会の余りを頂いたもの。これが余っているだなんて、である。土岐善麿の文庫は愛書会会場で。講談社の文庫は盛林堂、そして「形象という経験」はお勉強用として勁草書房のワゴンで定価の半額購入。