漁書日誌 3.0

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刺青邂逅

先日、いつものように突然来た扶桑書房目録速報、じっくり見て注文したのは帰宅した午前0時過ぎであった。まあ、もうこの時間になってしまっていれば、よいところは売れてしまったであろうという諦観に浸りつつも目録の頁をめくっていった。
すると「新思潮」がある。明治43年のと44年のと。執筆者に谷崎とある。おお、しかも4000円と8000円。4000円の方は3号とある。おいおい、待てよこれは…まさかの「刺青」掲載号ではないか。うわー、もうこの時間では絶対売れてしまっているよな、しかし4000円って何なんだこの値段はとガックリときた。こんな値段では、よもやもう二度と出ることはないだろうし、といって、貧乏書生、今後6万とかそういう値段で出たとしてもとても手が出せない。今回が千載一遇であったのに、既に手遅れということか、とショックを噛みしめつつ、しかしまあこれも運であって仕方あるまいと、それでも百に一の可能性にかけて、ファクスで夜中に注文を入れたのであった。
で、届いた。
薄かったので、ほかに注文した紅葉の本のみか、まあ仕方ないよなあと開封してみると、なんと「新思潮」が。確かに水ムレ、痛み補修ありなのであるが、紛れもない「刺青」掲載号である。久々に古書で震えるような嬉しさである。やっぱり谷崎もののなかでも「刺青」初出はちょっと特別である。ましてや「中央公論」や「スバル」と違って、いわば同人誌であり、発行部数は不明ながら、商業誌に比べれば格段と部数も少ないであろうことは確実。これだよな、荷風が食事しているカフェエに乗り込んでいって、メシ喰っている脇から先生読んで下さいと震えながら手渡したのは。この表紙のこの号である。それがいま、100年以上の時を経て、ようようワタクシの手中に収まったというわけである。

「新思潮」3号(明治43年11月)痛補修4000円
尾崎紅葉「二人比丘尼色懺悔」(吉岡書店:新著百種1)明治22年4月1日少痛2500円