漁書日誌 3.0

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下町展と長谷川敬

土曜日、古書会館に行く前に古書いろどりに立ち寄る。
いろどりにて、花笠海月さんよりご自身の参加されている短歌研究の同人誌「Tri」3号と、この度出された「『詩世紀』における長谷川敬(赤江瀑)」を頂戴する。感謝です。「Tri」については前にもここで紹介したことがあるけれど、今回はなにより後者。

赤江瀑=(本名・長谷川敬)については、正直よい読者ではない。しかし、三島関連で興味を持ってあれこれ見て来て、1950年代にホモセクシャルをモチーフとする詩を長谷川が書いて発表していたことは知っていた。角川文庫「オイディプスの刃」の中井英夫による解説で、赤江瀑が「詩世紀」同人であったことについて触れているけれども、数年前だったか、古書目録でその存在を知ったのが端緒であった。といっても、ネット検索で少しあれこれと知ったくらいであって、詳細については何も知らなかったのである。
今回、花笠さんがまとめた本書は、早稲田の服部嘉香(よしか)が編集発行をつとめた「詩世紀」全号を実見し各号を紹介しつつ、長谷川敬の詩作を追いかけたもの。いわゆる同人誌ではあるが労作。なかには三島由紀夫をモチーフとした詩作もあったりして、昭和20年代後半において「禁色」がもたらした種々の意味でのショックというのは、こうした各方面にも影響をもたらしたのだろうなあと思ったことであった。アドニス・カルチャーの圏内にある仕事としてこちらも興味がある。花笠さんは、以前ワタクシと共に「アドニス」の総目録と解説を発表したことがあるが、その地道ながら着実な探索を続ける氏による今後の更なる追求が楽しみなところである。入手については、古書いろどりへ。
で、その後、下町古書展に閉場30分前に行き、ザーッと回って3冊ほど購入。

金田一春彦他「ことばの昭和史」(朝日選書)カバ帯300円
佐木隆三「越山田中角栄」(現代教養文庫)カバ帯200円
上野英信天皇陛下万歳」(ちくま文庫)カバ帯200円

それから、拙稿「谷崎本書誌の余白に①——「谷崎潤一郎先生著書総目録」追補のために」が「日本古書通信」5月号に掲載されております。お目にとまりましたらご笑覧のほど。