漁書日誌 3.0

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七夕の古書そして人魚の話

昨夜、ある人から連絡があった。本を処分するのでもし君が欲しい本があれば持っていっていいよ、と。文学系の本、ということだったので、研究書や評伝などあんまり古いのはいらないが、使えるのがあるかもしれない、と、今から思えば不遜だが、向かうことにする。
そして、文学書というのはてっきり評論研究系だと勘違いしていたのだったが、小説等々であった。しかも黒っぽいものばかり。重版だったりコンディションがよくなかったりということなどまあどうでもよくなるような、嬉しいものであった。ということで写真のようにドッサリと頂戴した。まだまだあれこれとあったが、家の置き場所も考え、欲張らないように、と。それでも多いか。改めて感謝申し上げます。

谷崎潤一郎「人魚の嘆き」(春陽堂大正9年11月25日10版凾及び背欠、谷崎潤一郎「二人の稚児」(春陽堂大正8年8月10日3版凾欠、谷崎潤一郎「恐怖時代」(金星堂)大正10年2月1日3版凾欠、谷崎潤一郎「肉塊」(春陽堂大正14年2月4日7版凾欠、谷崎潤一郎「過酸化マンガン水の夢」(中央公論社)昭和31年12月30日再版凾付、坪内逍遙「桐一葉」(春陽堂大正4年7月28日11版カバ欠木版口絵入、菊池幽芳「己が罪 後篇」(春陽堂明治41年2月5日3版カバ欠木版口絵入、国木田独歩「独歩詩集」(東雲堂書店)大正11年5月16日11版裸、国木田独歩「独歩詩集」(紅玉堂書店)大正13年1月1日13版裸、樋口一葉「十三夜」(春陽堂:名歌傑作集)大正14年2月15日改訂15版裸、尾崎紅葉「紅葉集 第四巻」(春陽堂大正4年12月1日38版凾、小山内薫「大川端」(春陽堂大正7年12月15日6版凾欠、薄田泣菫「泣菫小品」(隆文館:小品叢書)明治42年5月25日初版凾欠、泉鏡花「鏡花集 第二巻」(春陽堂大正9年8月1日11版凾付、水上瀧太郎「大空の下」(春陽堂大正9年5月23日初版凾欠、水上瀧太郎「旅情」(春陽堂大正8年11月28日初版凾欠、永井荷風「散柳窓夕栄」(春陽堂大正3年3月5日初版凾欠、里見とん「満潮」(新潮社)大正14年10月5日初版凾付、里見とん「四葉の苜蓿」(プラトン社)大正13年1月5日再版凾付、高倉輝「阪」(アルス:高倉輝著作集)大正15年4月5日初版凾欠、永井荷風荷風全集四巻」(春陽堂)大正15年6月15日改版初版凾付、辰野隆「忘れ得ぬ人々」(弘文堂)昭和14年11月20日3版帯付、長田幹彦「青春物語」(新潮社)昭和30年10月10日初版カバ付、竹岡範男「実説秘話唐人お吉物語」(宝福寺お吉記念館)昭和38年5月30日新増訂版、「歌舞伎座」(歌舞伎座出版部)昭和26年1月3日初版カバ付、カーディナル他「シュルレアリスム」(パルコ出版)初版カバ、雑誌「新小説」(大正14・5)。
まずはこれらをコインロッカーに預けてから国会図書館へ行き資料漁りをして、19時近くに神保町へ。
まずは東京堂に立ち寄って、坪内逍遙小説神髄』(岩波文庫
三島由紀夫『不道徳教育講座』(角川文庫)
以上二点を定価で購入。前者はこの度改版されたもの。今まで昔の復刊されたやつしかなく、あれは読みづらくて今回のは助かる。後者は、女の子の写真カバーを用いたもので夏限定カバーらしいので。レジを済ませると、東京堂は創業120周年だということで、記念品のエコバッグを貰う。

そして今回のイベントである、明治古典会七夕古書入札会の一般下見に行く。20時までやっているのが助かるというものだ。閉場間際だったせいなのか会場もガラガラ。
といっても、これと期待したようなものはなにもなく。三島の署名本を手にとって、献呈先は誰なのかチェックしたり。去年は面白い写真と手紙が出ていたのになあ、と。まあ思いもかけぬ七夕の贈り物によってこちらが吹き飛んでしまった感じか。

しかしまあ、それよりも「人魚の嘆き」である。背欠の上補修もしていないので、今にも表紙が取れそうである。10版今回初めて見た。これでうちの人魚は四匹になった。

大正6年4月20日発行の初版は手にとってみたことはあるが未所持。所持しているのは、初版五日後の大正6年4月25日の再版(下左)。初版と装幀は同じである。そして大正8年9月5日6版(下右)。再版との違いは、凾が付いている。そして数ミリタテヨコ共に小さいサイズになり、表紙タイトルの文字間隔が少し広がり表紙の人魚の位置が少しずれる。色が変わって濃緑青から水色になる。そして今回の大正9年11月25日発行10版(上左)。表紙はごく薄いグレーで、タイトルの文字間隔がかなり詰まる。それから大正11年9月30日12版(上右)。凾付き、でサイズは変わらないが10版より少し束が薄くなり、表紙は白、タイトル文字間隔が詰まる。まあ初版再版以降はおそらく全体のサイズおよび人魚の位置がずれるというのは共通しているのだと思う。3版未見なのでなんともいえないが。というか、ほかの版は見たことすらない。奇数の版は存在しているのだろうか。