漁書日誌 3.0

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足立と楯の会のイロニー

先日ネット古書店に注文して届いた古書や、地元古書店で買った文庫本など。

キルケゴール著作集20」「同21」(白水社)凾月報揃1600円
レチフ・ド・ラ・ブルトンヌ「性に目ざめる頃」(三笠文庫)初版帯350円
戸板康二「浪子のハンカチ」(河出文庫)250円
太宰治津軽通信」(新潮文庫)120円
谷崎松子短歌揮毫色紙シミ1450円
キルケゴールのは「イロニーの概念」の上下巻。凾背が焼けているが安く探していたので嬉しい。「性に目ざめる頃」は実はこないだも買ったのだが、同じ店でまた。谷崎松子のは本物だと思う(というかこれでニセモノ作る人はいないだろう)がオークションで落札。
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昨日は、かかりきりだった原稿が一段落したので、久々に映画を。前々から見たいと思っていて、今回丁度上映すると知ってこれは見逃さないぞと思っていた「性輪廻 死にたい女」(1970)である。ついでに一緒にやっていた「性遊戯」(1968)も見てきた。前者が若松孝二、後者が足立正生の監督作品。
何故「死にたい女」を見たかったかというと、この作品、製作が昭和四十五年の年末だったようで、これのポスターというのが、三島が楯の会の制服を着て演説しているのをバックに裸の女が……というものだったのである。なんじゃこりゃ、と、前々から興味津々だったのだが、今回、シネマヴェーラ渋谷足立正生の特集をやり、そこにラインナップされていた。解説を読むと、どうも楯の会の決行に行きそびれた男が・・・というストーリーらしく、もうこれは絶対、となったという次第。
で、内容もそんな感じ。決起に向かう筈の男が女と会っていて結局駆けつけられず、死にたい心中してくれと女に迫ったり・・・という話。まあ忠臣蔵のお軽勘平の話を、三島と楯の会の決起に入れ替えたようなもの。「三島」とか「楯の会」という固有名詞は一切出てこないが、七生報国の鉢巻に褌一枚の顔を見せない五人の男たちが女を犯すイメージシーンとか、台詞で、やたら「益荒男がたばさむ太刀の鞘鳴りに幾年耐へて今日の初霜」とか、まあ辞世の句が出てきたりすることはあった。あとは当時の新聞雑誌の三島の写真がチラチラとイメージとして挿入されるくらいか。製作は70年となっているし、ホント一週間くらいで台本から撮影から全部やったのかねえ。
それと、一緒にやった「性遊戯」は、実は十年くらい前にも一度見たことがあった。日大芸術学部の大講堂をロケ場所にしている。母校なので、おおあそこであんなことを、とか、バリケードがスゴイ、とか。強姦遊びを趣味にしている主人公らの大学生達が、最後には、楯の会の制服を紹介した「平凡パンチ」のグラビアをビリビリと破いて、自分達はナチの制服に身を固めて新宿の紀伊国屋前あたりを練り歩くというラスト。
奇しくも、どちらにも楯の会が出てくるという映画であった。そういえば、「性遊戯」で出てくるアングラ女優役の女、眼に眼帯のようにコスモスの花?をつけていたが、この人、松本俊夫の「つぶれかかった右眼のために」にも出ていなかったっけか。