10月26日、神田古本まつり・特選古書即売展の初日である。
一年に一度の祭であり、かつては特選であれこれといい思いをしたこともある。ズラリと並んでいるなかなか高価な古書には相も変わらず縁が無いけれども、あきつ書店やけやき書店、かわほり堂に魚山堂ほかいろいろと掘り出し物がけっこうあったのである。といって、それももう10年近く前の話。往時に比べてしまうと、近年はまあ…という感じであって、何が何でも朝イチに列ばなければという強迫観念があるというわけでもなく、それでも一応10時の開場には列ばないと、祭だしね、というような塩梅で、今年もまた10分前くらいに開場の古書会館へ到着したのであった。開場。ザッと見ていく。しかしそもそもあまり抱えるものがない。ここのところ本を買いすぎて金欠であるというのもあって、かなりシビアにケチケチとしていたからというのもある。90分ほどであったろうか、全部みてまわって、これだけという感じの本を帳場で取り置きしてもらって、外へ。
この日は同時に青展の初日でもあるわけで、ずらりと古書の露店が列んでいる。つらつら流し見つつ、田村書店を見ると、店内は例年通り1割引をやっていた。外ワゴンでも、心なしかいつもより安い気がする。文庫本を3冊購入。加藤郁乎「ニルヴァギナ」(薔薇十字社)特装版が6500円で外ワゴンに出ていたが、勿論買わず。ただし手に取ってじっくり見た。それから、お目当てだった盛林堂書店の出店へ。顔見知りも来ている。聞くところによると、みな古書会館の前にこちらに立ち寄ったそうで、純文関係の掘り出し本もチラホラあったということであった。時既に遅し。それでもじっくりみて、単行本1冊に文庫1冊。明日も追加するとの由だったが、残念、金曜夕方には新幹線で岩手に行かなくてはならないのであった。毎年、古書会館の特選よりも愉しみにしているのが土曜日からの神保町ブックフェスティバルで、翻訳や学術系の本などが各出版社のワゴンでゾッキ価格のような感じで投げ売りされるのだが、これにも今年は行けない。仕方ない。しかもここのところの買いすぎもあるし、むしろ買わずに済んで良かったと思うほかない状況でもあるなと思ったのであった。
で、友人らとお茶してから会場に戻ってお会計。
田中仙樵「人心観破 骨相術自在」(大学館)明治36年5月11日400円
生田長江「最近の文芸及び思潮」(日月社)大正4年5月25日裸400円
南部修太郎「修道院の秋」(新潮社:新進作家叢書)大正9年7月10日7版背痛400円
清水信「作家と女性たち」(現文社)昭和42年11月30日初カバ300円
「鑑照」昭和24年8月300円
「アールヴィヴァン」20号、23号、各300円
「骨相術」は大学館の刊行物で、まあ当時のロンブローゾあたりとリンクするものだろうなあと購入。生田長江は背題箋が擦れてしまっているが、500円以下ならと。南部修太郎も表紙の汚れが気になるが、まあ。「観照」は武智鉄二がやっていた劇評と能評の雑誌だが、谷崎が「お国と五平」所感を寄稿している号。
「芥川龍之介随筆集」(岩波文庫)カバ200円
渡辺二郎「英米哲学入門」(ちくま学芸文庫)カバ300円
「ロラン・バルト映画論集」(ちくま学芸文庫)カバ200円
香山滋「海鰻荘奇談」(仏蘭西荘)1980年2月20日限定300部記番天金夫婦凾月報付1000円
江戸川乱歩推理文庫59「奇譚/獏の言葉」(講談社)カバ300円
こちらは古書会館の外で、上3冊は田村のワゴン、下2冊は盛林堂の露店で買ったもの。「海鰻荘奇談」はたまに見かける本。瀟洒な感じであるし、千円ならばと購入。
買った本をまとめてクロネコヤマトの営業所に持ち込み、自宅に送付手続き。食事をとってから、夕方上野に向かい、東北新幹線で一路盛岡へ。今回の大会は、ワタクシはいわば企画スタッフであり、文アルのプロデューサーをお呼びしての講演もある。こちらはこちらで、かなりの盛会となった。異例の特集ポスターを作った甲斐があったというものである。持参した「文豪とアルケミスト1周年記念読本」にサインを入れて頂いた。