漁書日誌 3.0

はてなダイアリー廃止(201901)を受けてはてなブログに移設しました。

観潮楼からぐろりや

明日までの会期となったためあわてて千駄木森鴎外記念館に赴く。

現在開催中の「暁の劇場——鴎外が試みた或る演劇」展である。鴎外記念館は、実は今回初めて来たのだが、2012年に記念館として新たにできたらしく、コンクリ打ちっ放しの感じなどがモダンで真新しい感じ。展示も、上演の引き札やらプログラムやら関連葉書、それから勿論、原稿や雑誌、単行本など、ほぼ実物を展示しているのが好印象であった。復刻版ズラッと並べてもなあという展示に比べると、やっぱりよいなあと思う。今回の図録も、なにやらデザインがかったシャレオツなやつだが、中身はほぼオールカラーだし図版たっぷりで860円と満足できるよいものであった。
で、16時半ごろ踵を返して神保町に向かうも、ギリギリぐろりや会古書展には間に合わず。まあ注文品も無いし節約できて良かったと考える。
それからまあ、あれこれと幾つかの古書店を見ていたら、田村書店にて小山内薫の本を適価で見つけ、購入。

小山内薫「英一蝶」(玄文社)大正7年6月20日凾欠1800円
背にスレがあるけれども、平の木版表紙はそれほど傷んでないしこのくらいの価格だと嬉しい。これは誰の装幀なのだろうか。
****************************
その後扶桑書房に向かい、飲み会会場へ。
今日は、かわほり堂創業十周年記念有志お祝い会なのである。
いやあしかし、10年などあっと言う間という気がする。1998年に古書日誌関連のHPを立ち上げ細々とやっていたのが、その当時明治大正関連初版本系の古書サイトがほぼなかったせいか(ミステリとか洋古書とかならかなりマニアックなサイトがあったのだが)、掲示板での交流が増え、そこから何人かの古書好きと神保町で会い、酒を飲み、つき合いが出来……そうやって知り合った旧知の福原君が独立して店を構えてからもうそんなに経過したかという感じがする。あの頃は、取り敢えずかわほり堂覗いてから、たいていはそこにいる古書仲間と駄弁り、そのまま暗くなってきたら今度はBar人魚の嘆きへ行って続きを…なんて時代であった。「銀花」の取材でそういう人魚の嘆きのカウンタで飲んでいるところの写真が掲載されたなんてこともあった。ワタクシも(最近ちょっと足が遠いが)買ったり売ったり大変にお世話になっている。福原君も、いくつかのクライシスモメントを乗り越え、荷風や鏡花など、いわば明治大正昭和期の耽美系、芸術至上主義的傾向を持つ作家たちの美麗古書の専門店としていよいよ風格を増しつつも、常に低姿勢で明るくひょうきんな人間性によって皆に愛される希有なキャラであることは変わらず。10年を迎え、今後の益々の商売繁盛を祈るところである。
で、お祝いの酒宴の席上、サプライズのくじに運良く当たり、かわほり堂次号目録3割引権利と、なんと主催者より以下の本を贈呈されたのはワタクシとしてもサプライズでこれまた嬉しい限りであった。

川島幸希「署名本の世界」(日本古書通信社)平成10年6月10日限定200部凾天金
今回いただいたのは赤版(200部のうち、赤表紙と青表紙とがあることを初めて知ったのは、2000年頃だったか、拙稿を投稿しようとして某古書店主に八木福次郎社長を紹介され古通本社に赴いた時に見せてもらった時に知ったのであった)。これで、ようやっと川島氏の古書関係著作は揃った。「署名本の世界」「初版本講義」「署名本は語る」「初版本伝説」「私がこだわった初版本」の5冊である。それから、次号かわほり堂目録は是非とも何か注文しなければ。