漁書日誌 3.0

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雨あがり窓展

長袖シャツ一枚では肌寒くもあり暑くもあるような、どうにも中途半端な気候。いつものように新御茶ノ水に9時半過ぎくらいに到着して開場に列ぼうと思っていた窓展。しかし今日はあと少しというところで地下鉄千代田線が人身事故でストップ。朝っぱらから何してくれるのよという感じで、JRを乗り継いで古書会館に到着したのは10時半前。時既に遅し。しかしまあ遅れたら遅れたで今更という気分で会場へ。金もないことだし、なるべく千円以上のものは買わないようにケチケチしながらお昼過ぎまで漁り、途中会場を脱けだして、田村の外ワゴンで1冊買い、茶店で友人と駄弁ってから共に会場に戻って再度見て、お会計。

福地桜痴「伏魔殿」(春陽堂明治28年11月11日再版口絵欠300円
正岡子規「子規随筆」(弘文館)明治35年11月3日4版200円
桜痴のは、前編「怪物屋敷」後編初出タイトル不詳という別々の作品を春陽堂主人に言われて1冊の前篇後篇にまとめ改めて伏魔殿と題名した由。ちょっと表紙に痛みがあったがまあと購入。「子規随筆」も岩波文庫で持っているが、200円なら持っていてもいいかなと。巻頭には揮毫や原稿の筆跡などが口絵として収録されていて、没した芸術家を示す痕跡としてこうした筆跡が持っていた役割などを考えると興味深い。

西村酔香「歌物語」(交蘭社)大正13年10月20日再版凾献呈署名入700円
「大正15年 毎日年鑑」(大阪毎日新聞社大正14年9月20日凾附録500円
「歌物語」はなんというか、そのまんま近代版の歌物語というか、短歌が掲げられて短篇小説がという形式の連作?的小説集。記載はないが装幀は蕗谷虹児に違いなかろう。交蘭社、蕗谷虹児でときて内容はお察しの女学生ものである。今日一番高い本だが(笑)署名もあるしよいかと。装幀もかわいい。

「毎日年鑑」は、安くて凾付の綺麗なのが数冊あったので、まあ新聞年鑑も1冊くらい資料で持っておこうと買ったもの。「朝日年鑑」と大毎の「毎日年鑑」とあったが、大阪毎日新聞出版事業開始五周年記念附録「日本交通全図」が付いていたのでこれにした。日本交通全図は、B全くらいの満洲、台湾、樺太含んだもの。

溝口白羊「女夫波の歌」(岡村書店)明治40年9月18日5版400円
板垣邦器「アンナカレニナ」(アカギ叢書)大正3年11月15日初版200円
蒲田青烟「椿姫」(鍾美堂書店)大正3年10月25日初版200円
大衆文学研究会編「大衆文学研究への招待」(大衆文学研究会)昭和48年8月1日100円
溝口白羊のベストセラーもの新体詩アダプテーションは、これで「金色夜叉の歌」も「不如帰の歌」も入手してあるし揃ってきた。デュマの「椿姫」梗概本は、鍾美堂書店という版元で「チョイス・シリーズ」と銘打たれているが、ご覧の通り、表紙の装幀も青年学芸社のエッセンス・シリーズにそっくり。便乗モドキ本かしら。大衆文学のは尾崎秀樹らのだが、それぞれジャンル別の総論と「大衆文学研究」総目次が付いている。

水野葉舟「明治文学の潮流」(紀元社)昭和19年9月20日カバ300円
吉田一穂「海の聖母」(渡辺書店)昭和48年10月10日複製版限定600部記番凾500円
「100万人のよる」(昭32・11)200円
葉舟のは持っているのだが、カバ欠でしかもこういう時期の出版だから紙質も悪く綺麗なのが欲しかった。二葉亭、一葉、藤村、眉山あたりと明治20〜30年代の回顧録。「海の聖母」は復刻版だが、記番入りのものだし高いけどいいかと。「100万人のよる」は三島由紀夫関連記事掲載なので。

つげ義春つげ義春とぼく」(晶文社)重版カバ帯ビニカバ300円
伊狩章「硯友社自然主義研究」(桜楓社)凾欠図書館廃棄本400円
つげはまあついでにで、図書館廃棄本は田村の外ワゴンから。日大文理学部図書館蔵印の上から廃棄印。背にラベルもあるが、まあ読み用ならと購入。
なんやかんやとケチケチ本を買ったが、けっこうな量になってしまった。その後、会場で一緒になった古書仲間でもある多田蔵人さんと一緒に古書通信社に行き、古通の9月号を見せてもらい、編集長とあれこれ話す。昨日ワタクシ宅へ送ったとのことで帰宅後届いていたが、9月号には札幌版の谷崎本について書いたので原稿を改めて読む。痛恨の誤植。それからまた、同じく古書仲間でもある武者小路書房さんが、初めての目録販売ということでラインナップをチェックする。白樺派から現代ものまで、鏡花や漱石まで織り込んだ豪華ラインナップ。これは注文しないと…とあれこれ話したことであった。
そういえば、どうでもいいことだが、前にも窓展であったけれども、今回も包みに使う紙袋が科学万博つくば85の集英社館の宣伝の入った33年前のデッドストックであった。