漁書日誌 3.0

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城南展+サド侯爵夫人


さて、本日は城南展初日。中井英夫「虚無への供物」初版カバ帯10000円なんてのが出ていて申し込もうかと思ったが持っているし諦めたり。それで会場をザッと回るも、これといったものもなく新潮新書暴力団」など最近の新書を2冊購入したのみ。上記左に写っているのは、マケプレネット古書店で注文し今日届いたもの。
河野典生「陽光の下、若者は死ぬ」(荒地出版社昭和35年5月20日初版カバ800円
阪上孝編著「統治技法の近代」(同文館)カバ帯1600円
「陽光の下、若者は死ぬ」は河野最初の単行本と思う。ちょっと初期の雰囲気を知りたいため。
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神保町から三軒茶屋まで半蔵門線で一本。本日は世田谷パブリックシアターへ芝居を観に来たのである。
三島由紀夫作・野村萬斎演出「サド侯爵夫人」
18時半開演で幕間休憩含んで22時過ぎに終わる。ルネは蒼井優、モントルイユに白石加世子、サン・フォンに麻実れいと豪華キャストである。それでまあどうだったかというと、今まで何本かサド候上演には足を運んだが、それらとはちょっと違う印象。この戯曲、もう膨大な台詞量があるためなのか、今までのものではだいたい機関銃のように話したり、歌い上げるように早めに話したりと、(悪くいえば)とにかくとちらないように自分の数行に渡る台詞というものを塊としてドサッと処理するような感じの印象があった(とりわけ去年のBunkamuraでの舞台)。しかし今回はそういうことをせず、台詞の一つ一つをキチンと会話として成り立たせて進行していくような感じであり、これは俳優はかなりしんどいだろうし普通に上演するよりもけっこう時間がかかるのではないかと思われた。
それからなんといっても脇のガードがもう盤石で、特に麻実れい。前々から「サド候」の裏主人公(「わが友ヒットラー」におけるレームみたいなもん)はサン・フォンだと思っていたが、持ち前の容貌と貫禄がこれほどピッタリ来るサン・フォンは初めてで、ストイックに悪を貫く艶のある獣のような印象。それに加えてまた白石加世子が異様なともいえる持ち前の発声・台詞術でちょっと人間離れした、安達ヶ原の鬼婆がドレスをまとったような印象。まあ良くも悪くもそういったアクの強い俳優に挟まれて、ではルネの蒼井優はというとどうしてもそれに拮抗する存在感は残念ながらなかった。それでも細かいところにかなり神経を使っていて熱演だとは思うのだが(それでも二幕のラストなどは好演していた)。あの膨大な長い台詞を二度くらいしか噛まなかったし(一幕の最初の方で白石加世子が台詞を一瞬忘れたようなところがあったのは見ているこちらも焦った)。アンヌ役は知らない俳優だったが、これも適役。ただし、蒼井優と比べてしまうと、どうしたってルネが妹のようにしか見えないのは体格的に仕方ないことか。
ただこれはなあというのは、三幕目のラスト、ラストへ向けて台詞を盛り上げるためにというのはわかるのだが、妙なノイズっぽい効果音?がちょっとうるさい。照明で処理というのはわかるのだが、せっかくルネの台詞が台詞の力だけでグイグイ盛り上がっているのを邪魔する要素としてしか働かないような気がした。ラストの「…お会いしますまいと。」という台詞の後グッとルネの表情が変わるいいところなのに、床ギリギリにつるしてあるシャンデリアがゴトリと落下する音をかぶせるとかは、分かりやすい演出なのかもしれないが却ってあんまりにもいかにもな感じがしてしまう。パンフレットは千円。9日夜所見。

俳優と超人形

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