漁書日誌 3.0

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芝居と窓と黒死館

9月10日木曜日、上野ストアハウスに劇団新人会公演「弱法師/動員挿話」を観に行く。ストアハウスが江古田から上野に移って初めての観劇か。「弱法師」は近代能楽集の一作、「動員挿話」は岸田国士作で日露戦争召集の話。新人会は初めて観る劇団だが、つまり俳優座の衛星劇団のひとつのあの新人会で、三島関連では「班女」を初演したところである…と思ったが、あれは同じく衛星劇団の同人会だ。

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チラシのほかに4pカラーのプログラムもあった。冒頭の多少コミカルな両家争いの場は、なかなか貫禄のある中年俳優が演じるので若者の劇団が中年メイクでやるのとはやはり違う。それが終わると、桜間と2人きりのシーン、ここぞ一番のクライマックスという俊徳の空襲回想になると、B29の飛来音がスピーカーから流れる。俊徳は途中で黒眼鏡をはずして瞼をつむり盲目の演技となるのだが、炎を見た、というところで目を大きく開ける…本当は、効果音などいれず、台詞と演技のみであたかも舞台上が火の海になっている幻を現出して欲しかったところがあるけれども、なかなか難しいか。効果音が導入部のみで、台詞がのってきてからは消して欲しかったし、あの俳優ならばそれに耐えうる演技も可能だったのでは、と思ったことであった。

9月11日金曜日、今日は窓展ということで、グダグダの寝不足で準備をして出かける。が、こちらのチェック不足であったのだが、開場して入って見ると、あきつ書店が参加していない。みはる書房もかわほり堂もである。ガッカリ。ザッとまわって、結局以下を購入したのみ。

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サン・ニュース・フォトス編「天皇」(トッパン)昭和22年2月11日カバ500円

岩橋邦枝「逆光線」(三笠書房)昭和31年7月25日初版カバ300円

筋書「五月大歌舞伎」(昭和32年5月)100円

筋書「文藝春秋祭り」(昭和41年11月)100円

「国文学解釈と鑑賞」臨増三島由紀夫のすべて300円

天皇」は亀倉雄策デザイン。家族写真や行幸の写真など、人間宣言後のイメージを集めた本というべきか。布装上製本賀川豊彦が寄稿。「逆光線」は女太陽族の代表作でもあり前々からケチケチ安く探していたもの。歌舞伎座のは谷崎監修の源氏上演、文春のは文士劇の筋書。

お昼前に早々に見切りをつけ、昼食をとってから神保町より半蔵門線で表参道へ。青山にあるビリケンギャラリーで開催中の近藤ようこ展に赴き、澁澤龍彦原作の「高丘親王航海記」1、2巻のイラストとサイン入りを購入。

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帰宅してみると、ネットオークションで落札したLPレコードが届いていた。

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三島由紀夫作品連続上演「サド侯爵夫人」(ビクター)帯欠1900円

残念ながら帯欠。この松竹でやった三島連続公演のLPは完揃えまでラス1。やっとという感じである。適価で購入できてよかった。

9月12日土曜日、所用にて神保町に出る。せっかく神保町に出たのだからと東京堂に行き、今日発売の文庫を購入。雨が降ったり止んだりのなか、用事を済ませ、扶桑書房事務所にて古書を購入。

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室生犀星性に目覚める頃」(新潮社)大正9年1月5日初版凾欠2800円

小栗虫太郎黒死館殺人事件」(新潮社)昭和10年5月12日初版背少欠凾欠12000円

大きな買物である。しかし三大奇書は裸本でいいから所持しておきたかった。逡巡したがこういう値段ではなかなかお目にかかれまいと購入してしまった。また犀星の恩地装幀のこれも持っておきたかった。これは10年くらい前か、凾欠が6千円くらいで出たことがあって勇んで注文したら当たって喜ぶのもつかの間、届いてみたらその後の並製普及版だったということがあり、欲しかった本なのである。再来週にはまた三島の芝居でチケット代ごっそりかかるのでちょっときつかったが致し方あるまい。

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東雅夫編「ゴシック文学入門」(ちくま文庫)書名入定価

川崎弘二「日本の電子音楽論考編1」(engine books difference)

前者が東京堂で購入したもの。後者は現在著者に申し込めば無料で送っていただけるとツイッターで告知されていたので申し込んだもの。ありがたいものである。

けっこう買ってしまって、なかなかキツイものがある。

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わたくしの初めての単著、近刊です。ご予約お願い申し上げます。 

谷崎潤一郎と書物

谷崎潤一郎と書物

  • 作者:山中剛史
  • 発売日: 2020/10/01
  • メディア: 単行本