趣味展である。
このところ毎日30度越え、炎暑の日々が続く。古書会館に到着したのは9時40分頃だが、既に人影がない。暑さのため早めに古書会館をあけて会場入口まで開放したのであろう。そして開場。まずは扶桑棚へ向かう。いつものように人がごった返している。どうも今日は雑誌が多いような印象。単行本でそこまでという感じではなかった。普通の棚に比べればそんなことはないのだろうが。会場全体を回ってきてから見ると、既に売れてしまって空いているところに改造社の円本の上製凾付がズラリと補充され200円で列んでいたので、谷崎の巻のみ確保。月の輪さんのところで細かく細かく見て行くと、戦後のあれこれの演劇パンフなんかがバカ安であって、ここでもあれこれと漁る。会場はギンギンに冷房が効いている。13時過ぎ、外に出て一服してから、古書仲間と昼食へ。その後お茶。
17時過ぎに再度会場に戻ってまたあれこれと見て回り、お会計。
江見水蔭「二人女王」(青木嵩山堂)明治39年1月1日初版口絵欠美1200円
尾崎紅葉「十千万堂日録」(左久良書房)明治41年10月25日初版300円
現代日本文学全集「谷崎潤一郎集」(改造社)昭和2年2月13日上製凾200円
岡野他家夫「明治の文人」(雪華社)昭和38年11月10日初版凾400円
現代日本文学全集は、カバー装の並製本ならば所持していたのだが、こちらの上製本でコンディションがいいものというとなかなか見かけず、今回ようやくといったところ。現代日本文学全集の上製本はたまに見かけるのだが、これが明治大正文学全集の背革装本になるとあんまり見かけなくなる。水蔭のは口絵欠といえども、コンディション上々で良い。
佐藤春夫「芸術家の喜び」(金星堂)大正11年3月15日初版500円
百目鬼恭三郎「新潮社八十年小史」(新潮社)昭和51年10月20日非売品200円
創刊準備号「木香往来」(書誌ひやね)昭和63年10月20日200円
大江健三郎「みずから我が涙をぬぐいたまう日」(講談社文庫)重版カバ毛筆署名800円
百目鬼はたしか「新潮社八十年」の編著者。新潮社の社史は「五十年」「百年」と確か編者が違ったと思う。後者は所持しているが、これは簡単な新潮社社史として目を通したい。「木香往来」は知らなかったが、ひやねが出していたマニヤ向け書物雑誌。少なくとも3号までは出ているようだ。秋朱之介「書物遊記」案内が挟み込まれている。大江はちょっとミーハー趣味で。扶桑棚なら信用できる品物だろう。いまヤフオクで粗製乱造された偽戦後署名本が古書店に流入して問題になっているのは聞いている。
「葛西善蔵小説集」1〜6(改造文庫)初版各200円、2巻だけ300円
「葛西善蔵感想集」(改造文庫)初版200円
背はちょっと焼けているがまあまあのコンディション。「葛西善蔵小説集」は昭和9年9月から11月までの間の刊行で、全6巻。「感想集」含めてまあ揃いで1500円ならと買ってしまう。
集めている雑誌「映画評論」6冊と、三島原作シナリオ掲載の「シナリオ」、各200円。「映画評論」は1965年から75年の10年間分をポチポチ集めているが、大分埋まってきた。
劇団浪曼劇場台本「わが町」和久田誠男旧蔵書き込み200円
これは見つけもの。三島のいた浪曼劇場については、三島作品の上演履歴はハッキリしているけれども、俳優養成所の研究公演まで含めた年表は、数年前に私が「三島由紀夫研究」に出したもの以外はないようで(それすら不完全)、ワイルダーの「わが町」を研究生公演として三島生前にやっていたことは知っていたが、今回のは公演リーフレットが挟まれていて三島没後にも上演されていたことが判明した。和久田さんは演出を担当。かつて直接いろいろ詳しいことを教えていただいたこともあったが、今となって謎も出てくる。
和久田さんは劇団退団後に天誠書林を経営、五反田遊古会に参加されていて、まだわたしが院生であった頃にたまたま目録で堂本正樹先生の「僕の新作能」に続く2番目の自費出版本「能・歌舞伎・僕達の芸術」を注文して受け取りの際にあれこれと話したことをきっかけに毎回いろいろお話をする機会を得、三島全集には「わが友ヒットラー」の台本読みテープを提供していただいたほか、「三島由紀夫研究」の座談会に出ていただいたり、とてもよくしていただいた。亡くなられてもう5〜6年経過したろうか。馬込の店舗には実は一度しかうかがったことがないが、店内中央にドーンと浪曼劇場三島追悼公演「サロメ」のポスターが飾ってあったのが印象深い。
ミュージカル「聖スブやん」和久田誠男/いずみ・たく使用台本2冊、各200円
両方とも夥しい書き込みと、台本の削除、加筆、挟み込みのあるもの。「聖スブやん」は、野坂昭如「エロ事師たち」のミュージカル化。藤田敏雄脚本、松浦竹夫演出、いずみ・たく音楽で、西村晃、塩沢とき、中山仁ほか出演。松浦演出の中でも出色の出来映えだったと当時の関係者から聞いたことがある。場にいらした月の輪さんにうかがうと和久田さん旧蔵資料との由。小説のアダプテーション資料として今度じっくり読んでみたい。
徳田秋声「出産」(左久良書房)明治42年4月13日初版2500円
これは先週扶桑事務所で購入したもの。値札には口絵欠とあり、別刷の短冊形挿絵は欠落していたのだが、購入後にパラパラ見ていたらなんと本文に挟まっていた。お得な買い物だった。
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本日からはじまったカラサキ・アユミさんの「古本乙女の日々是これくしょん展」。古書会館の2階の会場に、自らのコレクションがズラリ。SNS上ではやり取りしたことがあったが、今回初めて直接うかがってご挨拶。カストリ、エロ雑誌がメインだが、スーパーのチラシから産婦人科医が毎回商売女性とどんなラーゲを繰り広げたかをドイツ語で綴った日記など珍品揃いであった。8月4日まで。