漁書日誌 3.0

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森開社シュオッブ

かつて「アイデア」日本オルタナ精神譜においてインタビューのうえ記事を執筆させていただいた小野夕馥氏の森開社から、極めて瀟洒な装いの新刊が刊行された。マルセル・シュオッブ「マウア あるいは肉の幻」である。


限定300部記番、訳者署名箋入、正字正仮名。これは何というのか、たとうのような、筒型に包む外装に、本冊は並製小口未裁。表裏表紙の小口側が雁垂のようになっている。戦前の書物だとたまに見かける(戦後のだと、現代思潮社版の大杉栄の本なんかでも一部こういうのあったような)が、小口側だけというのは大正期の本で見たことがあるような気もするが思い出せない。いずれにせよ、簡素でありながら瀟洒なフランス1920年代の小柄な限定版詩集を思わせるような装幀造本。インタビュー時に小野氏から、今度のシュオッブへの並々ならぬ意気込みを伺って楽しみにしていたものであるが、期待を裏切らない愛蔵版として結実したわけである。ご恵送いただいた小野氏に感謝。
シュオッブは大好きな作家であり、かつて南柯書局やコーベブックス、森開社から出た邦訳書はどれも集めたものである(一度即売展目録で見かけ、高いなあとケチって入手を逃した新潮社版「吸血鬼」は未所持)。とりわけ「モネルの書」を愛読しピエール・シャンピオンのシュオッブ伝の邦訳は出ないものか、とか、南柯書局版「モネルの書」に特装が出ていればなあなどと思ったものである。そしてとうとう先日「マルセル・シュオッブ全集」が国書刊行会から刊行された。

「マウア」と併せて限定版雑誌「アントロジカ」2号マルセル・シュオッブ特輯も刊行。別刷付でこちらも限定300部。創刊号は150部限定だったが、倍の発行部数である。カラー口絵4頁のほか、本邦初紹介、翻訳のシュオッブ論考など盛りだくさんで、シュオッブに興味ある人ならば必携であろう。おそらく早々に品切れすると思われる。

マルセル・シュオッブ全集

マルセル・シュオッブ全集