漁書日誌 3.0

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五反田遊古会

今週は神保町の本部古書会館での古書展がない。五反田と西部のみである。で、注文品はなかったが、久々に五反田へ赴いて来た。
1階2階とじっくり見て、値段が全体的に安いのと古めのものもあるのとで、やっぱり五反田はいつ来ても面白いなあと思ったことであった。といっても、何か大量に買う物があったというわけではない。

池田得太郎「家畜小屋」(中央公論社)昭和34年2月20日カバ3000円
吉田精一「随筆入門」(新潮文庫)200円
広津和郎「同時代の作家たち」(新潮文庫)200円
ヨレス「メールヒェンの起源」(講談社学術文庫)315円
「短歌」昭和38年7月号200円
新日本文学全集33「三島由紀夫集」(集英社)凾月報200円
谷崎潤一郎編「撫山翁しのぶ草」(私家版)昭和38年5月20日凾美200円
「家畜小屋」は元版。残念ながら帯がないのだが、コンディションが良く、既に所持している本と取り替え用に購入。帯付きでこのくらいの価格で買いたいものである。「撫山翁」は谷崎潤一郎パトロン的存在である笹沼源之助のまんじゅう本。中央公論美術出版が製作。ずっしりとして装幀にも凝った本である。10年以上前に目録注文して買ったが、その後、千円で見つけ悔しくて買ってしまったということがあった。今回はたったの200円である。ここで売れなければ廃棄だろうし文化財保護の精神(!)で購入。新日本文学全集は、以前(書誌をつくるために)、三島の本は文学全集もの、その重版異装まで収集しており、ほぼ把握しているつもりなのだが(無論全部持っているということではない)、今回見るこれは初めてみたもの。いや存在は知っているし既に持ってはいるのだが、同じ初版でワタクシが持っているのが銀色の凾だのにこれは白い。銀色の箱で凾自体に巻きカバーがしてあるのがデフォだと思っていたのだが、これは売れ残りを装幀変えて再出荷したものであろうと思われる。こういうのって、営業部がちょこっと変えて売っていたらしく、どこをどう変えたという記録はないし当時の編集者は何も知らないというケースなのでやっかいなのである。それから雑誌「短歌」は、寺山修司「犬神」15首と長歌と寺山参加座談会掲載のため。これがまた悔しく、目次を見て買ったのだが、あとで読んでみようとすると、なんと寺山参加座談会など掲載されていない。塚本邦雄も参加している「現代短歌の焦点・底流の方向」という座談会なのだが、確かに目次には寺山修司と名前が掲載されているものの、実際の本文ページを繰ると、寺山の代わりに島田修二……これって単にシュージの勘違い、だよねえ。こんな思い切り取り違えのミスがあっていいものだろうか。
それから帰りに渋谷で途中下車し、大盛堂にて、
春日太一「あかんやつら」(文藝春秋)著者識語署名入り定価
を購入。ほとんど喋ったことはないが、大学院の後輩の人である。

以下は、ここ数日にネット関連で購入したもの。

ロッジ「小説の技巧」(白水社)カバ870円
山田奨治「日本文化の模倣と創造」(角川選書)カバ250円
別役実「台詞の風景」(白水社)カバ40円
「NLT’65」創刊号(NLT第一回公演パンフ)2100円
徳富蘆花「不如帰」(民友社)上製版裸明治40年6月10日72版1000円
NLTパンフのみネット古書店、あとはオークションにマケプレである。NLTの第一回公演は矢代静一作「誘拐」、このパンフが欲しかった。これで、ようやく三島が在籍した当時のNLT本公演パンフはコンプ(「誘拐」から「デリケイト・バランス」まで)である。表紙は藤野一友。あとはどうでもいいが、珍しいのは(というか単に無知なだけかもしれないが)「不如帰」の上製版である。定価は明治40年当時一般のが30銭なのに比べて、この上製本は65銭で倍以上の価格。桃色(というか赤地に白のかすれといったような)のクロスで丸背上製本、紙質もつるつるした感じでこちらの方がいい紙を使っており、口絵の浪子の絵もハッキリクッキリ印刷。100版記念の新たに序文が入った上製本ならば見たことがあるのだが、こんな普通の途中の版で上製本があったのを知らなかった。