漁書日誌 3.0

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梶井基次郎展+最近の古書

本日土曜日、梶井基次郎展〜「愛撫」と「闇の絵巻」の世界〜@秀明大飛翔祭(9〜10日)に赴いて来た。学園祭のひとつの出し物ではあるけれど、展示内容はそこらの文学館を凌ぐようなものとなっている。まず、梶井生前唯一の単行本である武蔵野書院版『檸檬』が6冊くらいあった。これ以上ないというほどの極美本である。それから同人誌「青空」がズラリと出ている。これもかなりの稀覯雑誌。加えて、梶井本人自筆の献呈署名本。「檸檬」は出版の際の献呈で友人の淀野隆三が代筆したといわれ本人自筆の署名本はないといわれているが、これは志賀直哉『荒絹』への署名。同級生外村繁へ献呈署名して読めと送ったもの。とまあ、原稿のほかにもいわずもがなの一級品揃いであった。(もちろんこんな書痴的観点からばかりでなく、その資料性から文学研究的な意味でも、それから壁に掲示してあった「愛撫」「闇の絵巻」を用いた具体的な授業プラン提案など国語教育的な意味からも一見の価値はありなのであります)。
グッズとしては、図録と原稿のクリアファイル2種。終わった直後あたりの時間に来たので客は誰もおらず独り占めのようにじっくりと見ることが出来た。写真撮影可。




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で、ここ最近の収穫品である。ここのところずっと酷い金欠でぐうの音も出ずコレクションを切り売りしてりして糊口を凌いでいたのだが、にもかかわらず古書を買ってしまうのは病気である。でも、なかなかお安く入手出来て嬉しい。

小栗風葉「風葉集」(新潮社)明治41年6月15日初版1000円
国木田独歩「独歩集」(近時画報社)明治38年10月26日3版印500円
島田清次郎「地上第4部 燃ゆる大地」(新潮社)大正11年1月15日21版300円
これはネットオークションで落札したもの。「風葉集」は発禁になった「恋ざめ」に続く短篇集で、抱月の序文入り。装幀や扉なども色違いというだけで「恋ざめ」とほぼ一緒(背の箔押装飾がちょっと異なる)。それから「独歩集」。これは確か独歩作品が自然主義の代表作として急に再評価された時にこれと挙げられた一本で、前々から安く欲しかったのだが、あんまり見かけなかったものである。適価だ。そして、島清「地上」の第4部。「地上」はバラで集めていて、実はまだ第2部を持ってない。第2部の重版でちょっと痛んだ本がこのくらいの価格で入手出来ればなあと思う。

三田照子「上山草人の妻—山川浦路」(私家版?)カバ1000円
マルセル・シュオッブ作品集(矢野目源一訳)「吸血鬼」(盛林堂ミステリアス文庫)限定250部2000円
前者はオークション落札、後者は注文したもの。三田照子氏はほかに「ハリウッドの怪優 上山草人とその妻山川浦路」(日本図書刊行会)という本があるが、親族ならではの写真も多く、あまり知られていない側面がうかがえるという意味でも草人関係ではやはり両者とも読んでおきたい文献。発行所表記なく印刷所(徳島県教育印刷)のみ記してあり国会図書館にもないので自費出版と思われる。そして後者。新潮社の海外文学新選の一冊として刊行された矢野目訳本の内容を新仮名新字にして復刻したもの。シュオッブは大好きな作家で、翻訳を集めていた。「吸血鬼」は一度6000円で見かけたものの、高いなとケチって見送って以来見かけないが、それ以外の単体の単行本は網羅した。凾のタイトル文字フォント違いで2種あるコーベブックスの真っ赤な本も大好きで何冊も買った覚えがある。まあそれはよいとして、今回の本だが、何より面白いと思ったのはその解説である。「吸血鬼」には本文中に一部削除がある削除版と無削除版があるという。集中「ベアトリス」に削除ワードがあったわけだが、両者の違いとして奥付の発行日が異なるという。これは今回初めて知った。そして、解説によると近々、国書刊行会より「シュオッブ全集」が出る由。別巻でピエール・シャンピオンの「シュオッブ伝」も出してくれないかしら。