漁書日誌 3.0

はてなダイアリー廃止(201901)を受けてはてなブログに移設しました。

扶桑書房古書目録平成22年夏季号

扶桑書房の夏季目録が届いた。
昨年もここで紹介した、目録自体が限定120部で、奥付に限定記番および所蔵者名があらかじめ記された、掲載商品が超豪華な逸品揃いという要保存目録である。
冒頭に配された店主による「ひとこと」には、〈日々、送られてくる通販目録と同じ運命を辿らないために〉〈目録にいかに資料的価値を加えるか〉という本目録の狙いが明確に述べられている。けだし、この目録はまず資料そのものとして一級品であろう。むろん、数十万単位から百万、二百万円以上と、超豪華一級品揃いで、今年の七夕など目じゃない内容なのだが、オールカラーの上、懇切な解説がこれまた長文で、あたかもこの目録自体が一冊の古書肉筆逸話集となっている趣すらある。


表紙と奥付。
それでまあ、どういったものが出ているかというと……まず先頭に出ているのが、宮沢賢治肉筆入り手製名刺1000000円。福田清人旧蔵。

それから例えば、これ。

泉鏡花「冠弥左衛門」初版・再版二冊袋欠揃1200000円。ウウム。初版は、大阪にあった田中宋栄堂発行、再版は同じ紙型で表紙が変わり東京の朗月堂より発行。少し余白が大きくなったようだ。この「冠与左衛門」は鏡花本最難関の一本でもあろう、特に初版の袋は未だに確認されていない。ほかには、一葉の書簡4000000円、太宰「晩年」の極美アンカットの山崎剛平宛署名本2800000円、菊池寛「籐十郎の恋」の元になった小説「坂田籐十郎の恋」直筆原稿揃2000000円、福永武彦「ある青春」特製岩松貞子宛識語署名本480000円等々。

谷崎潤一郎「摂陽随筆」永井荷風宛献呈署名本+永井荷風「勲章」谷崎潤一郎宛献呈署名本セット350000円。やっぱり宛先が超一流。これで本が代表作みたいなものだったら、もっとスゴイのだろうなあ、と。
まあ、こういったものがズラリと出ているわけだ。無論、注文出来るような身分ではないので、じっくりつらつらと眺め回してはいいなあと、読み物の如く目録を読む。今時、注文関係なく読める目録などないし、正に店主の言葉にあるように、今後貴重な資料として珍重されるのは間違いないだろう。