漁書日誌 3.0

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リブロでなく三省堂池袋

三省堂書店池袋本店古本まつり。もうこの季節になったか、という気もする。7月2日初日。仕事帰りに立ち寄り、閉店の21時まで2時間弱ほど見て回る。目録注文品もなくこれというのもなかったが、以下のようなものを購入。

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覆面居士「波瀾曲折六十年」(大東書院)昭和3年11月1日8版凾欠600円

現代芸術研究所編「芸術の歩み」(河出新書)昭和31年8月15日初カバ300円

アーノルド「教養と無秩序」(岩波文庫)カバ帯300円

金子遊編「フィルム・メーカーズ」(アーツアンドクラフツ)カバ500円

夜想bis」特集ドールという身体200円

「波瀾曲折六十年」というのは村上浪六の還暦を記念して出た評伝。本来は浪六の自伝と一緒にひとつの凾に収まって完本。浪六とか、おそらくアカデミックの研究の世界からは完全に無視されているだろうけれども、明治合巻的読み物の世界と近代小説との橋渡し的な位置にある存在として、そして明治中期のベストセラー作家として当時どうあったのかなど、おそらく唯一の評伝である本書は以前から安く欲しかったものである。「芸術の歩み」は瀧口修造花田清輝らが執筆しているが、現代芸術研究所というのは岡本太郎がやっていた団体。

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仏訳「金閣寺」「真夏の死」「近代能楽集」「太陽と鉄」(ガリマール)各初版300円

仏語はできないので意味がないといえばないが、一応。それでも1961年の「金閣寺」初版は300円ならみっけものかも。短篇集「真夏の死」はドミニク・オーリが英訳から重訳したもの。ドミニク・オーリとは覆面作家ポーリーヌ・レアージュのこと。三島のドミニク・オーリ宛献呈署名入り本を以前海外古書サイトで見たことがあるので、三島生前に面識があったのであろう。フランスに行った時か。「O嬢の物語」作者とその当時三島は知っていたのであろうか。

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花火・来訪者 他十一篇 (岩波文庫 緑 42-12)

花火・来訪者 他十一篇 (岩波文庫 緑 42-12)

 

  解説を担当された多田蔵人さんからお送り頂いた。感謝です。まず解説から読み始めたが、これがまた通りいっぺんの解説でなく、細かいところまで行き届きつつも、きっちりと荷風論にもなっている読み応えのあるもので、これだけでもじゅうぶん〝買い〟である。まさに荷風研究のネクストステージを象徴するもので、今後も期待である。

 

明治・大正 東京の歌舞伎興行――その「継続」の軌跡

明治・大正 東京の歌舞伎興行――その「継続」の軌跡

 

 こちらもお送り頂いたもの。感謝です。寺田さんは以前に非常勤先が同じであったこともあって、特にご専門の歌舞伎関連ではいろいろと教えていただくこともあり、研究上お世話になった。博士論文について以前よりうかがっていたが、中身も外観もズッシリとした重厚感のある書物として世に問われたことを嘉みしたい。興行面から明治以降の歌舞伎について迫ったもので、近代の演劇興行がどういうものであったのか、改めて繙読し勉強させていただきたいと思います。