漁書日誌 3.0

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和洋会/パンフの呼称

和洋会古書展最終日。
午後、会場を覗く。注文した「六世中村歌右衛門展」図録2000円は当たり。1998年にやったものだが、学生だった当時、受講していた古典演劇関係授業の先生から招待券貰いながら結局いかなかったのを後に後悔。このキンキラキンの図録も、あんまり古書店などで見かけず、見かけても3000円くらいしていたのでもうちょっと安くないかと思っていたのである。一度2000円だったかで阿佐ヶ谷の古書店にて見かけたが、躊躇していた数日後には既に売れていた。生で歌右衛門の舞台を観たことがないし、あれこれという資格もないが、これと三島由紀夫編集の写真集「六世中村歌右衛門」(講談社)を書架に置きまあ何とかなるかなどと思っている。
その他会場をぐるりとまわったけれども、結局、何故か今日は芝居関係ばかりのよう。拾ったのは筋書きばかりなのであった。

新派昭和32年5月公演筋書き100円
小牧バレエ団「火の鳥」ほか昭和29年8月100円
文学座創立20年記念公演「肥前風土記」昭和31年10月100円

新派のは、ちょうど明治座が火事で焼けてしまったので演舞場でという、水谷八重子東宝の舞台に客演しててその代わり越路吹雪が新派に初出演時の。その時の夜の部で、三島の「金閣寺」を村山知義が脚色演出した公演があった。これはちょっと探していたので嬉しい。小牧バレエのは、ノラ・ケイとアントニー・チューダーの招聘公演。確か翌年にもやっていて、全く同じだが日付と色味(これはグリーン系だがクリーム色の、そして後者には日付違い二種)が異なるバージョンがある。以前ここでポール・シラードの直筆サイン入りパンフを紹介したけれど、あれも小牧のだ。戦後、バレエは流行っていたみたいで、川端康成の「舞姫」なんて新聞小説、確か成瀬巳喜男が映画化していたけれど、やっぱり終戦後の文化流行は興味があって、バレエそのものはあんまり観ていないのだが、やはり押さえておきたい。映画に出ていた岡田茉莉子、若くて目玉がギョロリとして綺麗であった。で、それから文学座のは、昭和31年に創立二十年記念公演として四本連続創作劇をやったのだが、その三番目の田中千禾夫のやつ。一本目は福田恆存の「明暗」脚色、二作目が飯沢匡の「ヤシと女」、三本目がこれで、ラストが三島の「鹿鳴館」。これはそれぞれ東京公演と大阪・京都公演のパンフと二種類ある。
それでまあパンフのことなのだが、パンフレット、プログラム、筋書き、まあそういった呼称をする。厳密にはどうもそれぞれ別のものらしいのだが、一般的にこの三種の呼称は同じものを指す場合が多いようだ。歌舞伎だとやはり筋書きという呼称か。新劇等は、パンフレットかプログラムだが、どうもパンフレットはこういった冊子でプログラムというのは当日のプログラムが記してあるペラのことかなあ、などと思っているんだけれども実際どうなのだろうか。文学座の場合、大阪・京都公演即ち毎日会館・弥栄会館でやる時は、プログラムというか「毎日マンスリー」という雑誌体裁のものである。文学座発行ではなく毎日会館発行なんですよね。プログラムが雑誌体裁だといえば、例えば「アート・シアター」なんてのもそうですが。でまあそんなことはどうでもいいのですが、この創立二十年記念のパンフ四冊には、文学座二十年の思い出座談会みたいのが連載されていて、資料としても欲しかったもの。「毎日マンスリー」はB5の冊子だが、東京のは枡形に近い形のちょっと大きめのもので、表紙絵はアート紙に別刷りして貼付という力の入ったもの。この四冊およびプログラムと同じ大きさの「文学座20年公演史」という冊子が別にあって、この五冊で揃うという感じのようだ。


これは古書展とは別にネットオークションで落札したもの。1200円。近代劇協会第二回公演の「ファウスト」のパンフである。大正2年3月27〜31日@帝国劇場、鴎外訳で上山草人ファウストやった時のだ。メフィストは伊庭孝、マルテに山川浦路。

この辺のことは、上山草人の小説「蛇酒」「煉獄」で読んだ。「蛇酒」は、谷崎の序文が入っていて、阿蘭陀書房だったか。欲しいなあと思うけれどなかなか出ず、目録なんかに出ても結構なお値段の品なので容易に手も出ず、偶々「蛇酒」の続編「煉獄」と合本になった単行本「煉獄」(新潮社)を運良く入手して読んだのも、もう数年前だ。草人のことは、いつだかTVドラマになったと聞いたことがある。その頃だったか、「ハリウッドの怪優」という評伝が出ていて、それは今でも探求書……なんて書くと、けっこうなお値段でどこかの目録に掲載されたりして。笑