漁書日誌 3.0

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詩集「京をんな」

先日ある古書目録で注文した古書が届いた。
市田ヤエ詩集「京をんな」(六月社)昭和32年8月15日発行、限定1500部記番、カバー付、1600円である。

外装は、どうも段ボールの凾が付いているらしいがそれは欠で、タイトルなどを印刷してあるビニルカバーがついている。開高健の「日本三文オペラ」みたいなもんだ。とはいえ、ビニルカバーというよりはアクリル板みたいな厚くて硬質のものである。こういうのは後々劣化してきてひびが入ったりしてやっかいなものだ。それと著者名、本体背、ビニルカバー表紙面、本扉には、〈市田ヤヱ〉とあるのだが、奥付表記は〈市田ヤエ〉とある。まあそんなことはどうでもよいのだが、いま何故この詩集を、というと、この詩集は以前から安く欲しかったのである。

この豪華メンバー。
なにゆえこの市井の人の無名詩集にこれだけのメンバーが、というのがあると思う。この詩集は、谷崎潤一郎「鴨東綺譚」のモデルになった人の唯一の本。集中、「友よ鴨東綺譚のモデルと人らいひしに」という章がある。谷崎自身は、序歌というか、歌を一首寄せている。ご存知のように、「鴨東綺譚」は創刊したばかりの「週刊新潮」の目玉連載であったわけだが、数回であっけなく頓挫。理由はモデル問題であった。詳しくは「谷崎潤一郎伝—堂々たる人生」に譲るが、途中からモデルとなった人物がギャアギャアということになり、谷崎の許へもあれこれの行動を起こし、それに嫌気を覚えた谷崎が放り出したらしい。
ともあれ、まあそういう意味で安く探していたというわけだ。