宮沢賢治展〜新発見自筆資料と『春と修羅』ブロンズ本〜
@秀明大学飛翔祭11月8〜9日
各種報道で既に知られた新発見書簡など展示。それからそういう話のみはよく聞くけれども、実はいままで一度も目にしたことになかったいわゆるブロンズ本も複数展示されるというので、行ってきた。
新出資料としての意味も大きいのだろうが、ワタクシなどやっぱり目が行ってしまうのは葉書や原稿よりも本である。正に復刻本と見まがうようなピンピンの「春と修羅」「注文の多い料理店」。特に「春と修羅」凾の背題箋が真っ白で当時のまんまではないかと思った。「春と修羅」は計6冊(うち2冊は宮沢清六の献呈署名入)。「注文の多い料理店」の左にあるのは清六宛書簡を貼った前所有者手製の誂え凾。
そもそもいまある賢治全集というのは、断簡零墨は勿論のこと、署名本から現存確認された写真まで全て収録されているという。写真まで全部というのは、逆に数が極少ないからというわけであろうけれどもこれまたすごい話である。全集では確認されている署名本は3冊というが、今回展示されていたものは幻の4冊目、しかも昭和に入ってからのものでは初ということになるか。これはファンは垂涎ものであろうなあ。送った本ではなく、求められて署名したものではないかとの由。
そして次が問題のブロンズ本。出版された「春と修羅」の本体背の「詩集」というのが著者の気に入らなくて、自らブロンズ粉を塗布してそれを消したという話である。ということは、著者自らその本を手にとって作業したということであり、アウラは増す。しかし「詩集」という文字のみならず背文字全部にわたっている。
今回、「春と修羅」は6冊展示されていた。これだけ美本がズラリとあるのは圧巻である。いやしかしまだ圧巻というなら、賢治以外もすごかった。
今回、ゆかりの詩人たちということで、石川啄木『あこがれ』『一握の砂』署名、萩原朔太郎『月に吠える』与謝野晶子宛、室生犀星『愛の詩集』特製・並製共に萩原朔太郎宛、高村光太郎『道程』特製版、中原中也『山羊の歌』三好達治・辰野隆宛、『ランボオ詩集』河上徹太郎宛等々がズラリと勢揃い。これは図録にも掲載されておらずこれこそ正に圧巻。
「月に吠える」無削除版4冊が並び、「道程」特製があり、中也の署名本がズラリ。いやしかし、ワタクシ的には無削除版「月に吠える」の1冊が極美で正に復刻本のようでこれがまあ眼福であった。
これは会場来場者のみ買えるという記念グッズ(通販しないそう)。図録(1部1000円)とクリアファイル(1部300円)2種。図録はオールカラーで今回の新出資料が大きく掲載。資料として今後貴重になっていくのだろうなあと思う。
会場では写真は撮影し放題。明日9日まで。
そして今日は昭和文学会で挿絵の特集であったのを忘れていた……