漁書日誌 3.0

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古書会館を出ればどしゃ降り

本日は城北古書展の初日。
注文品はない。国会図書館の帰りに、いつもの如く、閉場20分前くらいの時間に駆け込む。会場をザーッと見る。全体的にちょっと黒っぽい棚もあったので、じっくり見たらなにかあったのかもしれないのだが、このザーッと急いで、というのが、今回はドジを踏ませることになってしまった。以下が会場で拾ったもの。

中央公論大正9年1〜5月+7年9月合本1000円
中央公論大正9年6〜12月+8年7月合本1000円
「中公公論」大正7年7月号500円
大岡昇平「花影」(中央公論社昭和36年5月18日発行初版凾315円
まあ「花影」は好きな小説だったので、既に持っていたが凾がピンピンにキレイだし重複してもねえ。これ帯あるのだろうか。
それはそうと、「中央公論」である。いやはや、これを見て「ああこいつアレ拾ったのか、ざまをみやがれ」と思う人間がいるのではないか、と思う。というのもだ。大正一桁の「中央公論」のこれら、この値段であればかなりの買い得だと思う。しかしそんなに世の中甘くはない。写真の大正7年7月号、これが500円というのは安い(というか、値札を表紙に貼り付ける古書店の神経を疑うが)。だがそれには訳があった。創作欄は、岩野泡鳴「要太郎の夢」、田山花袋「山上の雷死」、谷崎潤一郎「嘆きの門」、宮原晃一郎「薤露に代へて」なのだが、あとで読んでみると、花袋の作品の途中から宮原の作品の途中へと、間がごっそりと抜けている。谷崎作品など全くないのだ。切り取ったような痕跡もないし、これは落丁なのだろう。うわー落丁かよ、オトキさんかよ(*1)。それならそうと古書店の注意書きが欲しかった。だから500円か。
同じ失敗は合本でもそう。これ2000円で大正9年度分全部(夏季特別号も含)というのはかなり掘り出し的な価格で喜んでいたのだが、閉場まで時間がなくちゃんと確認しなかったのが悪いのだけれども、これも似たような……。つまり、まあ各号の表紙奥付がないのはしょうがないとしても、創作欄が丸々ないのである。元所有者は、創作欄は創作欄だけで合本にしたのだろう。嗚呼。谷崎の「鮫人」連載分全部とかあったのになあ。
しかしまあ、といって捨てたものでもない。例えば特集では、「現在の民衆娯楽場としての淺草と千日前」(大正九年夏季特別号)とか、「新時代流行の象徴として観たる『自動車』と『活動写真』と『カフェー』との印象」(大正七年九月号)とか、既にコピーして持ってはいるが自分の興味あるところはしっかりあるし、寺田精一あたりの変な記事とか生方敏郎らのエッセイもあるし。まあそういって自ら慰めるほかないなあというのが正直なところ。変な合本でなんだかオマケのように他の年のが混ざっているのはご愛敬か。しかしそういえば、数年前「中央公論」の創作欄だけの合本を入手したが、あれは……合本の装幀が違うのでまさか違うだろうが、分けないで欲しいものである。で、まあ古書会館を出ると、ザーザーの土砂降り。うー、こうもりなんか持ってきていないよ。
お次は、そんな雨の中、モールで拾ったもの。

雑誌「文学」(2004夏)400円
小酒井不木「犯罪文学研究」(春陽堂)大正15年12月28日発行初版凾欠1000円
吉川元忠「マネー敗戦」(文春文庫)150円
浅草六区興行史」(台東区下町風俗資料館)新装改訂版800円
最後の「浅草六区興行史」はネットオークションで落札したものだが、まあ不木は裸本だがちょっと安いかなということで購入。こうして散財は続く。
そういえば、最近出た本。どうだろう。今日立ち読みしてくればよかった。

明治版画史

明治版画史

今度の敗戦記念日に、BS2にて荷風と谷崎の特番の再放送がある。十年くらいまえの番組だが、これは録画しなければ。

註1 楽町お時[らくちょうおとき=終戦直後の有楽町で島はってた著名な街娼]の楽町を落丁とかけているのです。