久しぶりの趣味展である。いつもの通り、9時40分ごろに古書会館に着いてみると行列がかなりある。しかも外の道に行列が出ないようとぐろでも巻くようにウネウネと。何のことはない、いつもであれば入り口を開けて会場直前まで入場しているところを、検温などでまだ入場していなかったからであった。実質、行列はいつもと同じくらいか。しかしまあ検温があるから入場も滞り場に足を踏み入れたのは開場してから5分くらいは経過していただろうか。真っ直ぐ扶桑書房の棚へ向かう。前ほどの押し合いへし合いはない。
袖珍本がずらりとある。片端から見ていく。やけに晶子の本も多い。先日の目録に出た新聞切り抜きの余りらしきものも幾つか出ている。あれやこれやと抜いていく。会場の他の棚も見る。そして11時過ぎ、仲間と共に昼食に出て、戻ってきてからリバース分など含めてじっくり見ていく。最終的に吟味して、購入したのは以下。
伊原青々園「勧工場」(駸々堂)明治36年3月10日貸本印破300円
「青すだれ」(春陽堂)明治34年1月29日口絵欠背補修300円
福地桜痴「葵御紋」(一二三館)明治28年10月15日5版800円
幸田露伴「尾花集」(青木嵩山堂)明治25年10月3日初版汚1500円
丸岡九華「山吹塚」(吉岡書店)明治24年2月28日背補修300円
まずは明治の単行本から。巌谷小波のは文学世界第4編。新作十二番と同じく本文は製版印刷で表紙周りは全て木版の凝った造本。2回前の趣味展の時から見かけていて迷っていた本。行ってしまった。それから青々園のは勧工場がテーマの小説は珍しいなと購入。紅葉、露伴、鴎外らによる「青すだれ」もそうだが、口絵欠でボロいので安い。桜痴のは木版口絵が残っているので少し高い。「尾花集」は永洗の木版口絵の折り込んであるやつで、重版は持っていたような気もするが…。新著百種のこれは持っていなかったやつ。
川路柳虹「徳冨蘆花氏の「思ひ出の記」」(敬文館)大正4年4月5日500円
江馬修「人及び芸術家としての国木田独歩」(新潮社)大正6年12月12日初カバ切500円
渡辺霞亭「洗ひ髪」(駸々堂書店)大正7年7月20日再版400円
芥川龍之介「戯作三昧他六篇」(春陽堂)大正10年9月11日4版300円
谷崎潤一郎「金色の死他三篇」(春陽堂)大正11年5月15日2版印1000円
蘆花のは名著梗概シリーズ。あんまり見ないので安ければ買うようにしているが500円は高かったか。そして何よりヴェストポケット傑作叢書の「金色の死」は嬉しい。10年以上前に買って持ってはいるが、あんまり見ないところである。また最近日本文豪評伝叢書はカバーが挟まっていた。背のところで切れてしまっているが欠けもない。それから駸々堂の大正文庫というのは現代小説だったので買った。こういう判型のものは、立川文庫の時代劇という印象であったが、現代物もあったのかと。
福田琴月「福の神」(光村合資会社出版部)明治41年6月15日300円
工藤信之助「表現派の映画」(中央美術社)大正12年5月1日背補修表紙少欠500円
式場隆三郎「サド侯爵夫人」(昭和書房)昭和22年1月25日300円
「読書のすすめ」(創元社)昭和25年11月15日4版200円
最初のやつはよくわからないが、装幀で購入。横綴本。笑文庫シリーズの1冊。版元は雑誌「笑」を出しているところ。
そしてお次は雑誌。
「新声」(明治33年4月)800円
「文章世界」青鷺号(明治44年7月)500円
「新小説」(大正元年12月)口絵欠800円
「風俗科学」(昭和29年2月)300円
「新声」は生田葵山出てるからと買ったら小説ではなく美文であった。そういえば今日は、口絵欠だが鏡花の初出雑誌が800円でいくつもあったけれども、買わなかった。新小説も結構並んでいた。
これでもしかし、かなり削った方で、本当は鏡花共訳「沈鐘」初版疲本1500円とか現代文芸叢書も地味なところがズラッと出ていて幾つか抱えたが結局戻してしまったりした。でもこれでもちょいと予算オーバー。買いすぎである。