漁書日誌 3.0

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雨の散歩展+男の死

久々の南部古書会館である。昨日は仕事で動けず、今日は雨。ぐろりや会もやっているが、まずは五反田からと向かった。そして、土曜日は17時で終わりだったと今更ながら気付くのである。

16時頃会場着。外からそのまま1階のガレージに入れないようロープが張ってあり、脇から入って検温を済ませてから入場という流れになっていた。これはちょっと、初日はけっこう面白かったのではないかと思わせるような棚。

珍しく20分ほどみてまわり、その後2階の会場をザッとまわって終了。2階はむしろ買いたいものがあまりなく。

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黒岩涙香訳「捨小舟」中篇(扶桑堂)明治39年7月5日13版痛300円

「書物往来」大正14年1月号300円

「『新著月刊』解説・総目次・索引」(不二出版)200円

「芸術至上主義文芸」5号、10号各200円

「野生の近代 再考—戦後日本美術史」(国立国際美術館)200円

最後に掲げたのが2階会場で買ったもので、連続シンポジウムの記録集。他は1階ガレージで買ったものである。「芸術至上主義文芸」10号は、泉名月講演収録のために購入。

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さて、これはつい先日なのだが、アマゾンで予約していた本がようやく届いた。待望の本である。

三島由紀夫篠山紀信撮影)『男の死』(米・リツォーリ社)である。

三島由紀夫が最晩年に撮影し、薔薇十字社から撮影篠山紀信、被写体三島由紀夫、装幀横尾忠則、跋文澁澤龍彦で刊行しようとしていながら、三島事件によってそのまま封印されてしまった写真集である。いままで、三島没後になっても出版契約を結んでいた薔薇十字社では刊行案内リーフレットに昭和48年まで刊行予定として掲載されていたし、わたしが知る限りでも、その後幾つか実際に出版へ向けて動き出したという噂は聞いたことがあった。もちろん出ず仕舞いで、ジョン・ネイスンの三島評伝にどういう写真が撮影されたかが記されているだけで1枚も流出することなく伝説のようになっていたのが実際であろう。澁澤が「血と薔薇』創刊のときに澁澤が三島に声をかけ、三島が「男の死」という企画をやりたいと例のセバスチャンと溺死の写真となったわけだが、それ以後、いつ写真集としてまとめることを考えたのか、死ぬギリギリまで撮影していたという。それがいよいよ出るという噂を聞き、また皮算用かと半信半疑でいたのだが、5月に出た「季刊文科」にはっきり出ると横尾忠則が書いており、実際、その後米国アマゾンに書影も出ていよいよと確信したのであった。

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で、とうとう届いたのである。外装なし、背は白布装で黒箔、表紙はグレーに白箔、デスマスクを演じる写真が貼付してある。中身は、三島の「篠山起信論」再録、横尾忠則の書き下ろしエッセイ(ともに英語日本語併記)、「男の死」「楯の会」「武士の切腹」といった構成。リンチで殺された水夫、ライフルで撃ち抜かれた体操選手、刺殺されたフェンシング選手、泥の河川敷にバイクと共に横たわるサングラスのバイカー、車のガレージで腹にドライバー?が刺さり死んでいる男、半被の人夫がツルハシで頭を割られ死んでいるところ、一新太助風アンチャンが魚屋店先で出刃包丁で切腹、溺死、ふんどし一枚でヘルメットかぶった人夫が有刺鉄線にグルグル巻きにされているところ、デスマスク、首吊り屍体、といったような写真が続く。あれ、なんでセバスチャンが入ってないのか、溺死は数枚バージョン違いが入っているのに、何故だと思ったことである。それからネイスン本ではダンプに轢かれた写真もある筈。しかしもちろん初めて見る写真ばかり。どれもこれも物語性が濃厚で、篠山の技術力がともすると場面全体の稚拙さというか妙な生々しさをカバーして救っているように思われた。わたしは三島の写真活動をフォト・パフォーマンスとして論文も書いていたから、50年がコロナであれこれと潰れてしまったけれども、これ1冊出たことで帳消しといった気分。すごい。

 

Yukio Mishima: The Death of a Man

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