漁書日誌 3.0

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夏の終末の古書

扶桑書房目録が来た。いまやっている原稿用に資料や先行研究系の本などを買わなくてはならず、なかなか予算的にもキツイところであったが、2点注文。それが届いた。

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菊池幽芳「乳姉妹 前篇」(春陽堂明治38年3月10日8版裸

    「乳姉妹 後篇」(春陽堂明治38年2月26日6版裸2冊揃3500円

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「文芸丹頂」昭和23年4月1日創刊号3000円

「文芸丹頂」は三島の短篇の初出誌。「乳姉妹」は前篇口絵は石版と写真を組み合わせたもの。後篇口絵は鏑木清方の木版。後篇口絵欠のものであれば、前に安く買って既に持っている。木版口絵欠の家庭小説本は探せばかなり安めで入手できるのだが、木版口絵がついていると一気に価格が上がる傾向がある(もちろん絵柄、作家による)。「乳姉妹」は版を重ねよく見かける本ではあるが、それでも前はカバ欠揃で今回の3倍くらいしていたものである。

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ただこれは明治期の家庭小説本あるあるなのだが、2冊〜3冊組のもので、前篇、後篇と刊行されるからか、同じ版でも表紙の色が変わるということがある。例えば、わかりやすく極端な話をすれば、前篇初版が表紙青、数ヶ月後に前篇再版が表紙黄色になりそのころに後篇初版が出ると、後篇初版は表紙が黄色になったりということである。つまり、その時に出ている版で色を揃えることがままあるようで、だから、初版で前篇後篇揃えると、色が違ってしまうことがあるのである。もちろん、カバーがあれば外見上揃っているわけで問題はないのだろうけれども、外装がなくなってみると何ともアンバランスな感じになる。

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青表紙は前篇(明治37年12月30日6版)、茶表紙は今回入手の後篇6版。版を揃えても、表紙クロスの色、箔押しの色も異なっている。

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「螺旋の器」7号—ロベール・ド・モンテスキウ=フザンサック伯爵没後100周年記念特輯1500円

直接注文のみ販売。毎回楽しみにしている雑誌。レニエやシモンズのモンテスキュー論やら与謝野寛訳の詩篇など。とりわけ小野さんのフランス洋書購入記を面白く読んだ。

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小栗孝則訳「新編シラー詩抄」(改造文庫昭和12年7月20日初版500円

これはオークションだが、しばらく安く探していた本。太宰治走れメロス」の種本である。