漁書日誌 3.0

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女、資生堂、編集者

昨日は家を出るのが遅くなり行こうと思っていた五反田遊古会に行けなかったので、今日は五反田であった。どのみち注文品が当たっていたので取りに行きたかったのである。ただし今日は17時閉場。本当は神保町に立ち寄ってからとも思っていたが、無理そうであったので直接向かう。16時半頃着。ザーッと見て行くが、1冊も買うものはなく。いや、本当は黒っぽい棚などあったのだが、なるべく金は使わない、雑本を置く場所もないというのもあって、これというのがなければ買わない方向でいた。で、ギリギリまで見て、結局なにもなく、注文品を出してもらい、お会計。

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小野賢一郎「女、女、女」(興成舘書店)大正4年6月25日再版裸5000円

これも雑本といえば雑本かもしれない。またすごいタイトルだが、武智鉄二の映画にもこんなのがあった(「日本の夜 女・女・女物語」)。東京日日新聞の記者である小野は、現代文芸叢書で小説「溝」を出している人。後の俳人・小野撫子である。新興俳句弾圧事件の黒幕としての悪名でも知られていようが、明治の終わりから大正の初めころは上記の小説なども書き、谷崎潤一郎とも交流があった。「新聞記者の手帖1」というのに確か谷崎が序文を書いている。蘭郁二郎の母親の再婚相手であり、義理の父親でもある。

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口絵の2枚。単色のスケッチのようなものは、鏡台前の女優だろうか。「介」とサインがあるが誰だろう。おそらく外装は凾だと思われる。

小野の「明治大正昭和」といった本ならばそこらにあるのだが、初期の本はあんまり見ない。本書も、萬龍やらなにやら、おそらく新聞に連載した芸者、女優関連の探訪記事のようなものをまとめたもの。ちょっと高いけれども確かに見ないしということでいってしまった。

17時に閉場、その足で急いで五反田駅へ向かい、都営浅草線に乗って今度は一路日本橋へ。日本橋高島屋で開催中の「美と、美と、美。資生堂のスタイル展」に赴く。

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資生堂については「資生堂宣伝史」を買ったりして興味があり、とりわけセルジュ・ルタンスのコーナーや歴代の香水瓶を展示したコーナーなどは興味深かった。一部を除いて撮影可の表示があり皆パシャパシャ撮影していた。2千円くらいの図録もあったが、まあ今回はやめて、その代わりにグッズコーナーでハンカチを買った。

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ハンカチといっても大判で、黒と赤の2色あり。上記の写真にあるように、大正期に使われていた資生堂の包装紙のデザインである。このデザイン自体は、かつて19世紀末にジョン・レーンから出たビアズレー装幀のベン・ジョンソン「ヴォルポーネ」の装幀デザインの流用。矢部季による。「白秋小唄集」もこんな装幀だったと思う。

で、早々にそこを出て、今度は銀座線で田原町に向かう。

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田原町の Readin’ Writin’ BOOK STOREで19時開演のトークショーがあるためだ。「[とくに何も記念しないトークイベント]本、そのものへ! ――3人の編集者によるジャムセッション」と題して、オルタナ編集者の郡淳一郎さん、共和国主宰の下平尾直さん、岩波書店の渡部朝香さん3名のトーク。編集者、編集者、編集者、である。渡部さん司会で、郡さんと下平尾さんがお題に即して古書合戦するという流れで、「ルウベンスの戯画」から萩原恭次郎の詩集からはたまたブリキの自発団の舞台小道具として使われた巨大な本までが飛び出して盛り上がりを見せた。

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 女、女、女、美と、美と、美、編集者、編集者、編集者……3つ並べる三題噺。頓首。