漁書日誌 3.0

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魯鈍な春

一昨日だったか、扶桑書房の目録速報が届いた。既に売り切れていたものもあったが、しかし、個人的にはこれというものを確保できた。小川未明の本、2冊である。これはこのブログでしばしば書いて来たことであるけれども、繰り返せば、例えば小山内薫の戯曲ではなく小説とか、小川未明の童話ではなく小説というものが好きで、一般的に他ジャンルの作家が小説に手を出しているものに、たまに嗜好に合うものがあって(偏屈なマイナーポエット趣味である)よいのである。で、小山内のはだいたい揃ったし(情話系はもういいやと)、小川未明の初期から大正半ばあたりまでの、不思議にデカダンな短篇群をちょびちょびと集めている。といっても、必ずしも小説として出来がいいからというのではない。短篇であるにもかかわらずつくりとして全体がボヤッとしていたり、似たテイストのエスキースのようなものが連続でつづいたりと、眠くなるようなものも少なくはないのだが、そうしたなかに通底するなにかしらアンニュイなテイストが好みなのである。好み、という徹底的にワタクシの趣味の本。リラダンふうにいえば「文学的意味? そんなものは召使いどもに任せておけ」というわけだ。

で、今回は持っていなかったところが手を出せる感じであったので、いったというわけ。

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小川未明「魯鈍な猫」(春陽堂大正元年9月15日初版凾欠印4000円

小川未明「白痴」(文影堂書店)大正2年3月13日初版凾欠印4000円

右のが「魯鈍な猫」。ともに角背上製で、「白痴」の方は天金。「白痴」にはアート紙刷の原色肖像が口絵となっており、片上伸の序文が入っている。どちらも短篇集で、それぞれ異なる画家が装幀している。もとより完本でこの辺のものはなかなかの高価なものになるので、外装欠で十分。とはいえ、「愁人」なんかは夢二装だったりしてそれでもまあ手が出ない。といって揃えようというほどでもないので、まあチャンスがあればという感じであるが、そうであってもあんまり見ないところが入手できると嬉しいものである。

そんなこんなで、今日は和洋会の初日。注文品もなく、会場をチラと覗くも特にこれといったものもない。ザーッと見て、他の支払いもあるしということで何も買わず早めに会場を後にして、今度は路上である。

今日は、神保町さくらみちフェスティバル・古本まつりの初日でもある。といって18時閉店のそのときは17時55分。盛林堂が出ているというので向かって、ご店主と話しながら棚を見る。午前中はあれこれあったというが、後の祭り。ということで、文庫と新書を。

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江戸川乱歩推理文庫「子不語随筆」(講談社)カバ300円

江戸川乱歩推理文庫「奇譚/獏の言葉」(講談社)カバ500円

水沼辰夫「文選・植字の技術」(印刷学会出版部)昭和47年3月15日6刷カバ200円

江戸川乱歩推理文庫は、末尾の方の巻のみポツポツ買っているが、高かった「奇譚」はもしかしたら持っていたかも…。

で、その後喫茶店に落ち着き、出がけにポストに届いていたのでそのまま持って来た本を取り出す。

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エフライム・ミカエル(白鳥友彦訳)「占星術師ハリアルテス」(森開社)定価

森開社の新刊である。限定300部のうち200部頒布。フランス装たとう収め。記番。珍しくアート紙刷の口絵貼付。これは頼んで訳者署名本をわけてもらった。スタイリズムも相変わらず、森開社らしい瀟洒な装幀というか造本。表紙の箔押しも効いている。直接注文のみ。こちらを参照のこと。