漁書日誌 3.0

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窓そして五反田

窓展、朝9時40分古書会館到着。既に古書会館前には列が出来ているが、焦らずゆうゆうと一服してから列へ。開場10分くらい前に古書会館の自動ドアを開けるのだが、階段のところで足止め。何だと思ったら、荷物預けのことであろう、10人ずつ降りて下さいと区切り区切り下へ誘導される。人気演目の芝居の入場のようであった。今回からこうすることにしたのか。
で、10時開場。パッと見、趣味展ほどの混雑ではないようでもある。そして目指すはあきつ棚であるが、扶桑棚ほどの殺気?はない。それでも混雑は混雑なのだが、あれこれ抱えても窓展はカゴがなく、皆たくさん抱えている人は端っこのほうや棚の裏に隠して置いているようだ。ワタクシそれほど抱えなかったが。まあ一通り見て、ほかの店の棚でけっこうみっけものがあり、11時過ぎには取り置きしてもらって一服し、正午頃には会計となった。


藤井真澄「妖怪時代」(文武堂)大正12年5月10日初版凾欠300円
日本年鑑協会編「文芸年鑑1925」(二松堂書店)大正14年3月15日印900円
吉屋信子「良人の貞操」(新潮社)昭和12年5月16日36版凾800円
「富士」新年号附録「芝居と映画名流花形大写真帖」昭和6年1月1日500円
岡本綺堂「探偵夜話」(春陽堂日本小説文庫)昭和7年6月7日300円
岡本綺堂「異妖新編」(春陽堂日本小説文庫)昭和8年2月28日300円
白井喬二「喬二捕物集1」(春陽堂日本小説文庫)昭和8年3月15日300円
文部省編纂「国体の本義」(内閣印刷局昭和14年9月2日4刷200円
雑誌「ユニヴァーサル」大正15年2月号200円
「妖怪時代」は、大森眠歩「幻想時代」と同じ版元で同じく戯曲集なのだが、ネーミングは編集者なのか、なんだか同じようなにおいを感じる。天金で石渡山達の扉絵挿絵が入っている本だが、この裸本は前々からあってちょっと高くて手は出さなかったもの。値下げしたようである。それから「良人の貞操」は説明するまでもない本だが、本体羽二重に木版の装幀は堂本印象、本文中の挿絵は小林秀恒。「ユニヴァーサル」はもちろんユニヴァーサル映画の宣伝雑誌。当時だと浅草の日本館が特約店だった。大正期の映画雑誌でこんなに安いのはないのではなかろうか。「大正活映ニュース」というのを探しているのだが、なかなか出ない。
会場で落ち合った友人と共に、五反田展へ向かうために三田線神保町駅から五反田へと向かう。五反田駅を出てみると、既にポツポツと降って来ていた。
五反田展、注文品は無い。今日はまず2階を見てからということで、最初に会場を見る。ザッと一回りして、特にない。せっかくだしなあと新書「非行少年」を1冊のみ購入。昭和30年代初頭の非行少年の実体を調査官が書いたもので、ATGの映画「不良少年」を思い出したからというのもある。しかしその後で1階のガレージのようなところを漁ってみると、これまたあれこれと面白い本を見つけることができた。

大塚雅彦「非行少年」(星書房)昭和39年3月1日3版カバ200円
本田顕彰「大学教授」(光文社カッパブックス)昭和31年10月5日カバ200円
横山紘一「唯識思想入門」(第三文明社レグルス文庫)カバ200円
小島政二郎「場末風流」(旺文社文庫)カバ200円
ここでとりわけ興味深いのは「大学教授」で、副題が「知識人の地獄極楽」である。戦前の名物教授の紹介みたいなものから、現代における生活実態、副業、陰湿なあれこれの裏での動きまで書いているのだが、著者の経験談がリアル。九州大学の講師時代に板書で英語のスペルミスをしたら、受講していた女学生が校内中に触れて回り著者を快く思っていなかった同僚に悪知恵を入れられ大事になり結果、講師を辞職するまでになっていくさまとか、その後法政大で非常勤に着任したら有名な「法政騒動」野上豊一郎と森田草平の確執と教授連の陰湿戦争に巻き込まれ…など、今も昔も変わらぬ世界を描いている。「場末風流」は単行本で読んでいたが、これで単行本の方は処分できる。
そして次の2冊も1階ガレージで買ったものだが、本日一番の収穫でもあった。

松旭齋天花「世界的奇術 手品と魔術種あかし」(岡本増進堂大正9年3月15日5版500円
田中喜美子「女の防波堤」(第二書房)昭和32年8月12日2刷カバ帯200円
天勝一座の種明かし本。大正9年で既にこんなものが出ていたのだなあと。まあ当時はゼーゲル夫妻などいろいろライバルも増え、天勝、小天勝、天花らだけでは…というのもあったのかなあと思う。それから「女の防波堤」はRAAに関するドキュメント。リクリエーションアミューズメントアソシエーションについては、以前「敗者の贈物」というドウス昌代のドキュメンタリーを読んでから興味を持っていたのである。この本、実は新東宝で映画にもなっていて、安く探しており、しかも帯付きで入手出来たのは嬉しい。
そして雨は止まず。
そういえば、今週ヤフオク及びマケプレで買った本。

吉行淳之介「美女哄笑」(現代文芸社:新鋭作家叢書3)昭和32年10月5日初版カバ880円
熊倉千之「日本語の深層」(筑摩選書)723円
後者はお勉強用。「美女哄笑」はちょっと揃えている初期吉行の本でも欲しかったもので、安く入手出来て嬉しい。そして帰宅してみると、扶桑速報が届いており…。
以下興味ある新刊。

国学の「日本」―その自国意識と自国語意識

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写真は魔術 アート・フォトグラフィーの未来形

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祝宴の時代:ベル・エポックと「アヴァンギャルド」の誕生

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写真幻想

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