漁書日誌 3.0

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金色の死

昨日、かわほり堂古書目録8号(長田幹彦特集)で注文した本が届いた。


谷崎潤一郎「金色の死」(日東堂)大正5年6月10日初版18000円(の3割引)
そうである、あの「金色の死」をとうとう入手。感無量である。欲しいなあと思い始めたのが1998年頃。かれこれ16年の探求書であった。今回のは前見返し欠で、目録には美本がほかに85000円で掲載されている。全くでないという本でもないが、出ても5年に一度くらい、それで出てもだいたい8万円前後くらいの価格帯、やっぱりその価格帯ではおいそれと手は出ないし、しかも注文があるのだろう、それも売れてしまう。乱歩の「パノラマ島」やらポウの「アルンハイムの地所」「ランダーの屋敷」と通底するような作品でもありそのせいか探偵関係のコレクターが買っているというような話は聞いたことがある。そもそも乱歩さんがこれ読んで小説を執筆し始めたという作品でもあり(「探偵小説四十年」)、乱歩コレクターの人なんかは買うのだろうなあと。
それほど目録チェックはしてない方ではあるし、よく見ればほかにも出ているのかもしれないが、過去3回ほど目録などに出ているのを見たことがあるくらいであった。今回は、前にここで書いたように、かわほり堂創業10周年有志による祝賀会に参加した折、抽選で当たった次号目録3割引券を持っていたので、目録掲載価格よりも安く、なんとか手の出る価格にて注文できたのである。
谷崎著書総目録に書影が出ているが、じっくり実物を硝子越しに見たのは、確か神戸の倚松庵を訪ねた際に、展示室らしきところに何故かこの本がポンと展示されていたのを見た時。あれからだって10年以上経過してしまっている。それほど欲しかったのは、やはり「金色の死」という短篇がワタクシにとって一等思い入れのある作品だからで、谷崎を研究しようというのもこの作品がトリガーだった。人によっては、こんな駄作…という人もいるが、そんなもの勝手にいってなさいというところである。既にヴェストポケット傑作叢書版の「金色の死 他三篇」は入手済みだし、「刺青」も「悪魔」も「近代情痴集」もあるし、これだけは欲しいなあというところはだいたい揃ってきた。

ところでこの「金色の死」は、日東堂【名家近作叢書】の第二篇だが、第一篇は花袋の「小品集 泉」。第三篇は前田晃「感想録 鞭」と近刊予告が出ている。花袋の方は出版されており日本の古本屋にも数件登録されているが、前田晃の方は出なかった模様。外装は、「著書総目録」にも記載されておらず、確かにカバーがなくても不自然ではないかなとも思う。今はこの日東堂、月刊袋物社として存続しているとここの読者の方に教えて頂いた。感謝。
あんまりネットなどでは話題になっていないようだが、この度のかわほり堂目録は、長田幹彦特集というのもちょっと珍しく、いろんな意味ですごい。実際長田幹彦ファンがどれだけ今現在いるのかはわからないが、まあ雪岱や夢二の美麗な装幀によって人気があるのは確かである。あれやこれやの美麗本がカラー図版でズラリと出ており、資料としても、いや単に眺めているだけでも面白い目録となっている。
いやしかし、これは本当に嬉しい。