漁書日誌 3.0

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正月明けの古書

月曜日の夕方、扶桑書房の目録速報7号が届いた。が、仕事のため見たのは帰宅後の夜。あれとかこれとか、既に売り切れてしまった後であった。それでも、と、注文した雑誌が一冊。

「文芸文化」昭和19年8月終刊号2000円
稲垣足穂「天体嗜好症」(春陽堂昭和3年5月30日カバ欠10000円
扶桑目録で注文したのが「文芸文化」。これには三島由紀夫「夜の車」(後に「中世に於ける一殺人常習者の遺せる哲学的日記の抜萃」と改訂改題)が掲載。佐藤春夫なんかも寄稿。さすが扶桑、状態がよい。まだ空襲は始まっていないとはいえ、ミッドウェー以後の敗戦色濃くなるなかでひとり中世の耽美的殺人者の小説ってのが、浮世離れしている分却って切迫した死との近さを感じさせるようなところがある。
ところでもうひとつ、タルホの本は扶桑ではなく、年末にえいやっとネットオークションにて落札したもの。薄汚れはあるにしても、神保町相場から見たって安い買い物ではあるまいか。無論1万円はワタクシにとり大金である、しかるに…相場からの相対評価とはかなり毒されている証拠か。神保町とネットオークションでは相場観がものによって異なっていて、ここら辺をちゃんと押さえているかどうかってのが勝負の分かれ目、なんだろうか。個人的にはやっぱり(手は出ないが)「一千一秒物語」からこの「天体嗜好症」までが最良のタルホ本かなと思う。


さて、会期もだいぶあるしそのうち…なんて思っているとまた行きそびれてしまうと思って、三が日明けの1月4日に実験工房展@世田谷美術館に行ってきた。図録も充実していてなかなかよい。で、帰りにそのまま扶桑事務所に行ってきた。


展示物でなかでも注目したのが、武智鉄二による「円形劇場形式による創作劇の夕」関連。昭和30年12月5日にシェーンベルグの「月に憑かれたピエロ」と三島由紀夫の「綾の鼓」を上演した時の資料その他だが、「月に…」ばかりで「綾の鼓」の資料は写真が数枚のみ。と思ったら、当時の舞台写真のスライドショーを別室でやっていた。最前列中央に三島由紀夫がいる写真などもあり。これだって湯浅譲二が音楽やっているんだからもうちったあ紹介して欲しかったところである。そして、扶桑書房で買ったのが写真にチラと写っている「二十世紀鉄仮面」である。
小栗虫太郎「二十世紀鉄仮面」(春秋社)昭和11年9月20日初版凾付少痛少虫喰9800円
この値段なら買うしかないと思わずいってしまったもの。