漁書日誌 3.0

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「刺青」の5版

土曜日。扶桑書房へ行く。古書を三冊購入。表題にもあるように、谷崎の「刺青」の5版を入手。


谷崎潤一郎「刺青」(籾山書店)大正元年5版凾欠背改装800円
小川未明「悩ましき外景」(天佑社)大正8年8月1日初版凾欠印2800円
佐藤春夫纂述「維納の殺人容疑者」(小山書店)昭和8年9月5日初版凾1800円
「刺青」はこれで初版、3版、4版、5版を入手ということであとは2版を残すのみ。4版まではたまに見かけるものの(存在は知っていたが)5版というのは珍しいと思う。根拠はないけれども、仮に初版千部にそれぞれ重版五百部ずつとすると、累計で三千部は出ていることになるか。コンスタントに印税収入があったと思うのだがどうだろう。これに比べて「悪魔」は2版まで確認。こうして版を重ねて、「刺青」の初出は同人誌だが、世間ではやっぱり「刺青」の谷崎ってことで知られ渡っていたのだろうなあ、と。
未明の短篇集は昨日に続き素直に嬉しい。どうもワタクシ自身がマイナー嗜好なのか、児童文学ではない未明に注目している。劇作家ではない小山内とか。外装はいらないので、これくらいの価格でほかも入手したいところである。
「維納の殺人容疑者」は、いまでは文庫になっているが、これも十年くらい前に古書展の場で買おうか買わないか逡巡しやめてしまったことがあった。その時はもっと状態が悪くて二千円くらいだったけれども、もっとコンディションが良くてこの価格ならば御の字である。事件を報じる当時の維納正午新聞をそのまま使った装幀も面白いけれども(秦豊吉のドイツものみたいだ)、クリップン事件とか当時猟奇的な海外の事件が日本でも話題になっていたし、探偵小説ブームもあって、こういうものが受け入れられる下地は十分だっただろう。


三遊亭圓朝の明治 (朝日文庫)

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