漁書日誌 3.0

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夏のデパート展二連続

例年違っていたような気もするが、今年は池袋西武リブロの大古本まつりと東急渋谷大古本市の初日が昨日今日と連続。まあいつもは文庫新書などを買う機会がおおいけれども、まあ今回もそうであった。いつだったかのように、「お伝地獄」初版凾付二千円が閉店間際まで残っているなどということはない。
それでまあ、まずは昨日の池袋から。

山本俊一「浮浪者収容所記」(中公新書)250円
末木文美士「日本仏教史」(新潮文庫)262円
デカルト「哲学原理」(岩波文庫)262円
レオナルド・ダ・ヴィンチの手記」(岩波文庫)上下525円
まあ、文庫ばかりである。この他お勉強用の単行本も抱えていたが。注文品も無かった。「浮浪者収容所記」は、終戦後の引き揚げ者や浮浪児等々の収容所の記録で面白そうである。今回、ワタクシとしては珍しく午前中に起床し、お昼過ぎに会場入りした。というのも、午後は見たい映画がフィルムセンターであって逃したくなかったからである。
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池袋から京橋にでてフィルムセンターで観たのは、「生命誕生」(1963)という科学映画、というか顕微鏡映画とでもいうのか、そういうやつで、ひたすら有精卵が孵化していく様子を写したもの。やけに音楽が、なんというか武智の前衛映画みたいな音だなあと思ったら、音楽は一柳彗だった。それから、リュミエール商会が1900年前後の明治日本を撮った短篇と、今日メインの「イントレランス」(1916)である。何もグリフィスの「イントレランス」なぞ珍しくもなくビデオもDVDも出ているのだが、今回上映されたのは、日本初公開版である。つまり、四つのストーリーがクロスカッティングされて同時進行していくスタイルのあの映画じゃ日本人にはわかるめえと勝手に興行側が編集し四つの話を一つずつ四つ繋げただけのものにしてあるという特殊日本版とでもいうべきバージョンなのだ。おそらく弁士が勝手にあれこれと説明したのであろう、二時間半近い元々の尺も一時間ちょいになっており、編集でカットしちゃったところも無数。というか、現代編なんかストーリー自体ちょっと変わってしまっており、ギャングのボスが殺されるシーンもなければ死刑執行にギリギリ間に合って、夫婦が抱擁するシーンも丸々カット。接吻どころか抱擁もカットなのか、と。リリアン・ギッシュ扮する揺りかごシーンも全部合計で三秒くらいしかなかったし。しかしまあ冒頭には左右逆の読みで「不朽の名作 イントレランス」なんて日本版タイトルが入っていたのがご愛敬。いきなり前知識なくあれ観てもストーリー自体よくわからないと思う。確か大正の中期に日本公開されたと思うが、弁士の存在の大きさを身を以て理解した、よい機会だったと思う。
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さて、そして今日である。渋谷東急。注文品は一つあった。荷風訳「女優ナナ」(新声社)明治36年初版カバ欠シミヤブレ8000円である。
で、まあ今日は昼過ぎにダラダラ起きて、ダラダラと会場に向かい、会場到着は17時10分。それから閉店まで三時間見てまわった。いつもそうだが、広すぎるのか見切れない上に疲労感もすごい。

フーコー「言葉と物」(新潮社)函帯2100円
現代詩手帖」(00.9)特集・ロマン主義315円
「風俗科学」(53.8)(54.9)各500円
「言葉と物」は、凾も本体も綺麗でよいのだが、本文中一行だけマーカー線引きがある。でもそれだけだしこの価格は安い。でもいつまでもこんな単行本にしておかないでとっとと新潮文庫にしてもらいたいものである。新潮社の三部作は。けっこう売れると思うのだが。

小栗虫太郎失楽園殺人事件」(扶桑社文庫)300円
ポンテンペルリ「わが夢の女」(ちくま文庫)250円
大濱哲也「明治の墓標 庶民の見た日清・日露戦争」(河出文庫)300円
西谷修「不死のワンダーランド」(講談社学術文庫)400円
末井昭「ステキなダイナマイトスキャンダル」(角川文庫)300円
横島誠司他「名作文学に見る『家』愛と家族編」(朝日文庫)300円
木間瀬精三「死の舞踏」(中公新書)200円
やっぱり文庫がメインになってしまう。これでも半分くらい精選したもので、今日はなんだか中公新書がスゴイ量揃ってる棚とかあったが、探求書は無し。とはいえ昔の中公新書は中身が濃い。虫太郎は、これエッセイが入っているから。末井昭は角川文庫版はこれでコンプ。そして「不死のワンダーランド」もずっと探求書だったので嬉しい。単行本はゴロゴロしているが、これは編集版で中身がちょっと違う。といってもまあ小さい文庫で欲しかっただけだが。
しかしまあ昨日今日と使いすぎのような気もするし自重したい。
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今月の目に付いた新刊書。

明治鉄道物語 (講談社学術文庫)

明治鉄道物語 (講談社学術文庫)

〈私〉の存在の比類なさ (講談社学術文庫)

〈私〉の存在の比類なさ (講談社学術文庫)

春画 片手で読む江戸の絵 (講談社学術文庫)

春画 片手で読む江戸の絵 (講談社学術文庫)

ピエール・リヴィエール---殺人・狂気・エクリチュール (河出文庫)

ピエール・リヴィエール---殺人・狂気・エクリチュール (河出文庫)

文士の魂・文士の生魑魅 (新潮文庫)

文士の魂・文士の生魑魅 (新潮文庫)