漁書日誌 3.0

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扶桑書房100号目録/森開社40年記念展

先日届いた扶桑書房100号目録で注文したものが届いた。


もちろん、いつもの目録ではなく、100号記念ということで判型も大きく前半の方は一人展と同じくカラー写真の頁になっている。中村正直訳「自由之理」上下袋付から宮部みゆきまで、出ているものもバラエティに富む。でもまあ王道の明治系がガシッと主流をなしている感じで、なおかつ詩集系やらモダニズム系も充実といったていである。カラー頁では、例えば「天うつ浪」「其面影」「あられ酒」「社会百面相」あたりのカバーだとか、漱石鴎外荷風あたりの極美のものだとか、荷風「地獄の花」の高山博士宛献呈署名本(高山博士って、樗牛だよねえ? 因みに署名は永井壮吉名義)あたりが目に付いた。詩集も王道系、藤村の各種、「邪宗門」「月に吠える」、賢治もの等。今回は珍しく戦後文学初版本も多い。また雑誌では「ゲエ・ギムギガム・プルルル・ギムゲム」「衣裳の太陽」だとか。これも一人展目録同様、永久保存版であろう。
でまあ、ここは先着順なので時間勝負なのだが、運の良いことに、慌てて注文電話した時には、これは欲しい…というものは残っていた。といっても、数万などという本にはハナから縁がないのだが。


小栗風葉「青春」(春陽堂
春之巻明治38年10月7日初版カバ欠
夏之巻明治39年1月17日初版カバ欠
秋之巻明治39年11月18日初版カバ欠印痛、三冊揃9500円
確か以前にもここの目録で、三冊揃いカバ欠で30000円で出ていたことがある。でもさすがに風葉に入れ込んでいるわけでもなし、まあ三万円は手が出ない。口絵欠重版とかないかしらんと思っていたが、今回、これなら何とか手が出せる、と。秋之巻が貸本印ありで目録の記載通り実際痛みがある。しかし口絵は梶田半古の木版画が全冊ついているのは嬉しい。実はこの本、実際に手にとって見るのは初めてで、例えば背表紙が洋書のようにアルファベット表記のみだったりとか知らなかった。「魔風恋風」や「乳姉妹」みたいに、菊版の薄い本かと思っていたが、けっこうずっしりとした四六判の本である。まあいわゆる家庭小説だけれども、例えば芸術家気取りの関欽哉のような堕落学生なんかは、明治立身出世主義の後遺症のようなものだし、色々と世相が見えて興味深いが、文学的にどうこうという話はここでは控えておく。

国木田独歩「渚」(彩雲閣)明治41年11月10日初版2500円
宇野浩二「軍港行進曲」(昭森社昭和11年5月20日初版凾6500円
久野豊彦「ボール紙の皇帝万歳」(改造社昭和5年7月8日初版浅原六朗宛毛筆献呈署名入4000円
どれも安い、というか、扶桑ならではの価格と思う。「軍港行進曲」など、以前ならこの値段は凾欠の値段だったろう(というのも今持っている凾欠本が確か6000円くらいだった)。しかしこれでようよう所蔵本の差し替えだ。「渚」は、当初「涛声」と勘違いして注文していたが、しかし初版で綺麗だしこれはこれで大事にしたい。そして久野豊彦。もともと工作舎の作品集で読んでいたけれども、新鋭文学叢書の元版でしかも、先日ここで報告した「ビルディングと小便」の浅原六朗宛署名ということで購入。
買いも買ったり、である。いまこの時期のこの出費はかなり痛い。まあ、確定申告還付金をあてにして、それまで、欲しがりません勝つまではの精神で金欠戒厳令である。
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さて、先日ここでも告知した森開社の40周年記念展。本日から、3月5日まで荻窪ミニヨンギャラリー、である。

で、今日は18時半からオープニング・パーティーということで赴いた。本当は、東部古書会館泪橋展や高円寺の雑書展に立ち寄ってから、と、思っていたのだが、上記のようにドサリと本が届いたのでその暇はなくなった。それでまあ、会場には、今まで森開社で出した出版物が、限定版も全部(全く知らなかったようなものも出ていた)、それから斎藤磯雄だとかの原稿、山中富美子の原稿、リラダンの原書初版コレクションやらロベール・ド・モンテスキュー識語署名本などまで展示されていた。
で、即売コーナーもあり、在庫分から「千田光詩集」「リラダンの復活」「静寂」ほかに、雑誌「ラフォーレ」「森」等々が売られていた。かつて背皮装の限定版で出た「左川ちか全詩集」も、19000円で二冊出ていた。ここでは以下のものを記念に購入。

レオン・ブロワリラダンの復活」限定1000部カバ1500円
「L'EVOCATION IX森開社刊行書総目録」限定300部300円
リラダンの復活」は本来貼凾だがこれはカバー。再販用だろうか。まだ会期中にあれこれ物販は追加する由。因みにDMは二種ある。
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そして明日は恵比寿の写真美術館でやっている恵比寿映像祭にて、寺山修司のTVドキュメンタリ「あなたは・・・」(東京放送1966)が上映されるので是非行きたいのだが、雨。諦めるか。