漁書日誌 3.0

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高円寺古書展

日曜日、高円寺古書展の二日目である。
今日は久々に注文したものが当たり、また所用で都内に出るということもあったので会場まで。とはいえ、後に予定が詰まっていたために、会場には結局三十分しかいられず。


村井弦齋「日の出島 住之江の巻」(春陽堂明治31年1月1日発行初版裸貸本印1500円
現代日本文学全集24「谷崎潤一郎集」(改造社昭和2年2月13日発行カバ150円
まずは注文品である「日の出島」。まあ表紙も汚れているし貸本印もあるが、口絵木版も無事だしこのくらいならよいか、と。これでようよう「日の出島」も二冊目か。別に集めようというので集めているわけではないが、当時の人気新聞連載小説ということで。この発行日、奥付には誤植があり、印刷が明治31年12月20日、発行が31年1月1日になっているが、これは発行明治32年なのか印刷が明治30年の誤植なのか・・・調べればわかりそうだが。それから後者は特に珍しいわけでもなんでもない改造社の円本だが、アレっと思って会場で抱えたもの。というのは、カバーをとると本体が紙装なのである(布装とデザインは同じ)。この改造社の「現代日本文学全集」さ、布装のやつとオレンジ色のクロス装があって、クロス装が特製で布装が並製でその二種のみと思い込んでいたのだが、こういう紙装のもあったのか。カバーがついているけれども、凾は元々ついてなかったのだろうか。で、お次も会場で買ったもの。
三島由紀夫「黒蜥蜴」(牧羊社)昭和44年7月20日2版函帯2000円
サーバー(福田恆存訳)「SEXは必要か」(新潮社:一時間文庫)昭和30年2月10日2刷カバ200円
「文芸」(昭31・7)特集・小説とモデル200円
美術手帖」(昭60・10)特集・パフォーマンス200円
「映画評論」(昭44・2/昭46・2/昭48・1)各150円
「黒蜥蜴」は二刷だが、これは安いでしょう。初刷が1500部と初刷の奥付にはいかにも限定版的に記されているのだが、こうして二刷が出ており、かつ二刷については部数の明記無しということは、当時の丸山明宏ブームにもあやかって結構売れたのであろうか。この本は大好きで、もう安ければ何冊でも買ってしまう。で、お次の「SEXは必要か」は、福田訳だから買ってみたのだが、よく見ると福田個人訳ではなく、南春治との共訳である。カバー、表紙、奥付では福田個人訳のような表記なのだが、扉だけに共訳と記されているのもよくわからぬ、そもそも訳者後記的なものも何もない。南は下訳なのか。ただし本文を読んでいくと、所々に訳註がアステリクで記されていて、それが単なる訳註というより結構主観性の強い訳者の意見のような感じ。福田全集ではどういう扱いなんだろうか。
それから雑誌。「文芸」は、まあ当時「鴨東綺譚」のモデル問題などあって、モデル問題に関する作家の座談会なども掲載。もしかしたら特集のところ全部コピーして持っていたかもしれないが。「映画評論」はいつものように安ければ買っているだけだが、美手帖はこの特集のゆえに。山口勝弘如月小春の対談など掲載。ゴールドバーグの「パフォーマンス」(リブロポート)も読んだが、もうちょっと包括的にそして論理的に整理してくれる新しい著作とかないもんだろうかと思っていてこういうのは気づいたら買っているけれど、どんなもんだろう。
いやしかし、「黒蜥蜴」があったおかげでけっこうな金額にいってしまった。キツイ。本当はもっと時間をかけて、たとえば名雲書店の和本の棚を漁り明治本を掘り出したかったのだが、今回時間もなく。