漁書日誌 3.0

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趣味展二日目とガリガリ

本日は趣味展の二日目である。
二日目ともなると、ぺんぺん草も生えないような……という形容がふさわしい状態になっている場合もある。往々にして。閉場20分前に開場に到着。まあ期待していた棚は、ほぼ抜かれた後なのか何も買うものすらなし。その後残り時間をザーッと流す。坂ノ上言夫「拷問史」(坂本書店)の凾付美本が2000円であった。凾背の赤い題簽も全く褪色なくピンピン。昨日これと同じものを同じ価格で買った人から見せて貰ったばかりだがもう一冊あるとは・・・逡巡したが、結局手放す。
亀山郁夫ロシア・アヴァンギャルド」(岩波新書)300円
明治文学全集43「島村抱月・長谷川天渓・片上天弦・相馬御風集」(筑摩書房)凾月報500円

この二点のみ購入。この新書は、実はちょっと探していたもので嬉しい。ありそうで見かけない。明治文学全集も、この辺の評論系はねえ、やっぱりこれで持っていないとちょっとねえという感じだが、安くなったものだ。昨日記したように注文品はハズレ。そのまま会場を出て、新刊書店で小山内薫の「お岩」を購入しようかと躊躇、田村書店に入る。ここに、稲垣足穂「美しい学校」が2000円で出ていた。例の回収されたとかいう版だ。既に持っているが買おうかなあと思ったけれど、その隣にあった栗原裕一郎「〈盗作〉の文学史」(新曜社)2300円を買ってしまう。これは新刊当初から気になっていたのである。他にもこれは買いたいなあというのがあったが、金がない。
夕六時前に都営新宿線にて神保町を出て、京王線に乗り継ぎ、下高井戸駅で下車。今日は芝居をみにきたのである。オルガンヴィトー公演「ガリガリ博士の犯罪」(寺山修司作)である。まず、この演目、実は初演以来上演されてないのではないかというような作品。天井桟敷で、昭和精吾だの下馬二五七らが出演した初期のものである。

戯曲自体は、前に上掲写真の「ガリガリ博士の犯罪画帖」(新書館)という写真やイラストレーション満載のビジュアルブックで読んでいた。だから初演の写真のイメージが固定していたのだが、今回の舞台はなかなか凝った舞台構成で、久々に興味深かった。ちゃんと戯曲通りにパンと牛乳も出た(しかし指定のユキジルシ牛乳はもうない)。そもそもこのオルガンヴィトーという劇団だが、唐組にいた藤原京という俳優が立ち上げた劇団と聞く。もう十年以上前になるか、ここの劇団の公演は第二回公演から数回、公演毎に足を運んでいたことがある。今はなきアートシアター新宿(新宿文化ではない)やら、東演パラータとかキッドアイラックホールとか、基本路線はエログロサイバーパンク調といったら悪いだろうか。それぞれのストーリーなども全く忘れているが、特に印象深いのはその美術であった。豪華とかセンスが抜群とか、そういう金をかけた感じではないのだが、とにかく作り込みなどが凝っておりコダワリが伝わってくる感じ。また演技だのよりそんなところばかりに目がいっていたイヤな客(笑)であったので、尚更印象に残っていた。チラシも毎回、西洋の幻想絵画のコラージュのような絵柄で目を惹いていた。その後、劇団で映画を作ったと聞いた。当時レンタルビデオ屋にてアルバイトしており、ビデオソフトのサンプルがまわってきたので見た覚えがある。世紀の変わり目辺りから腰が重くなって芝居も映画もグンといかなくなってしまったが、今回が18回公演という。まさか寺山作品をやっているとは。芝居といえば、来月は演劇実験室◎万有引力の「アフリカの印象」がある。レーモン・ルーセル原作の芝居である。ルーセルには小説を元にした演劇版があるが(利光哲夫「反=演劇の回路」参照)、それを演じるのではなくあくまで原作イメージということらしい。いずれにせよ楽しみにしている。初期の万有は、寺山色というよりは、どちらかといえばダダ・シュル演劇チックな印象があり、旗揚げも確かジョルジュ・リブモン・デセーニュの筈。これの台本、確か「現代劇」とかいう細長い判型の雑誌に掲載されていたが、あれはどこにいったろう。