漁書日誌 3.0

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五反田遊古会にて進駐軍

金曜日。本当は神保町での下町展に立ち寄ってから、と、思っていたけれども時間的に無理そうなのでやめて、五反田へ直行。五反田遊古会初日である。注文品は二点、そのうち一点のみ当たり。
まずは一階の外台をザッと見ていく。何故か知らないが、西部邁の単行本がドッサリと出ていた。集めていた人の蔵書かねえ。どうも外というのは、安いものという感覚があるのだが、800円とか1050円とかいう高額文庫を何度も何度も外に並べるというのはどうかねえ。ここは売れ残りや値引き後のものが流れ着いてくる場所ではないのかなどと、ケチケチとひとりごち。
と、比較的ゆっくり見ていたら、もう閉場15分前ではないかと気が付き、文庫一冊に新書一冊のみ拾って階上の会場へ。一階で拾ったのは、小森陽一漱石を読みなおす」(ちくま新書)200円と村松梢風「女経」(中公文庫)100円。
で、会場。急いでザーッとまわる。目録に出ていて注文しようかどうか躊躇して結局注文しなかった「近代芸術家の表象」定価8190円が3500円、やはり売れてしまっていた。それでまあ、会場で拾ったやつ。

ジョージ・A・ヒュアコ「映画芸術社会学」(有斐閣選書R)初カバ200円
「紅葉書翰抄」(博文館)明治39年10月20日7版(初版は同年1月23日)少痛500円
「紅葉書翰抄」は、クロス装上製本のイメージがあったのだが、7版ともなるとこういう略装になったものか。外装は知らない。他に菊池寛藤十郎の恋」の重版パラカバ欠700円というのもありギリギリまで迷ったが、ちょっと背に切れ目があったので手放してしまった。

それと会場で拾ったのはこの他に、
「最新 米英略語解 1947年版」(日米通信社)昭和22年7月25日発行200円
がある。これは全編、例えばRFC=復興金融会社、とか、PWA=公共事業管理局、とか、BCOF=英占領軍、とか、そういうアルファベット頭文字の組み合わせ略語の一覧。本日注文した三島由紀夫『黒蜥蜴』(牧羊社)初函帯2000円はハズレたが、となりに並べたのが、注文して当たったものであるところの「スラング進駐軍略語集」である。
三輪武久「スラング進駐軍略語集」(実用英語会話学院出版部、ネオ・プラクティカル英語叢書)昭和21年4月5日発行、1200円
おそらく二千円台だったら注文しなかったと思うのだが、このくらいならちょっとこの辺は興味があるしということで注文したものだ。しかしまあ、読んでみるとこれがなかなか興味深い。英文序文を賀川豊彦が執筆している。でまあ、A-bombとか、off-limitsとかお馴染みのものやらAmgotとかというどこかで見たことがあるような単語が出ているほか、denazify(ナチス教育を破壊してドイツ人の再教育を行うこと)とか、snafu(特に星条旗新聞に頻出する進駐軍が好んで使うスラングで、situation normal all fouled upの頭文字で、どうしようもないとかいう意味)だとか、Japよりももっとひどい日本人侮蔑語としてのNipとか、そんなものが出ていた。まあ昭和21年春の出版だし、これがまた昭和25年頃になると隠語もあれこれ変わって種類も増えていると思う。

しかしこれは…と思ったのは、これ。bakaである。bakaは連合国軍が使った言葉で、そのままバカという意味。しかも特攻隊・特攻隊員を指したという。ええ、そんな呼称をしていたのか。無論別にkamikazeとかbanzai attackという項目もあるのだが、しかしバカとはちょっと酷い。しかも、である。その特攻機が投下する爆弾は、バカボンという。baka bombである。「天才バカボン」はここから来ていたとしたら面白いとは某知人の言。

さて、甲斐庄楠音の画集が出るという。前に京都でやった甲斐庄楠音展の図録を画集代わりに見ていたのだが、どうも今回は写真など貼付してあった甲斐庄のスクラップブックも写真版で収録してあるという。ちょっと欲しいが、これも古書で探すか…。