漁書日誌 3.0

はてなダイアリー廃止(201901)を受けてはてなブログに移設しました。

愛書会古書展など

本日は愛書会古書展の初日である。
しかし、今日は古書展の前にちょっとどうしても寄っておきたいところがあった。銀座のギャラリー椿である。お目当ては現在ここで開催中の「幻想美術コレクターズコレクション」展。澁澤龍彦などの影響を受けたコレクターが秘蔵の品を……という展示で、合田佐和子片山健四谷シモン藤野一友秋吉巒などが出ている由。これが土曜日までだったので今日赴いたのであった。いやしかし、本当の今日のお目当ては、A・P・ド・マンディアルグ夫人であるボナ・ド・マンディアルグによる三島由紀夫肖像画。これが見たかった。
ルテアトル銀座近くにあるギャラリーには、ざざーっと各種作品が陳列されていたが、やはり個人的に一等興味が持てたのは藤野一友秋吉巒作品。これを直で見られたということだ。秋吉巒のは、おそらく1950年代中頃に雑誌「風俗草紙」とかの表紙画として使われていそうな、例の鼠人間みたいののやつ。藤野は二点出ていたが、どちらもよいものであった。他に印象的だったのは、合田佐和子の「中国の不思議な役人」で、これは寺山修司台本演出にてかつてパルコ劇場で上演された芝居のポスターの原画。このポスターがB全なのだが、ほぼ原画実物大くらいであった。このポスターを以前自分の部屋にかけていたために印象的だったのである(このポスター自体は、1993年の演劇実験室万有引力公演「大疫病流行記」会場でデッドストックを売っていたのを、制作の顔見知りの方に割引価格で売ってもらったのである)。
で、お目当ての三島肖像画は、というと……布地を使ったコラージュ作品で、七生報国鉢巻をした顔のアップ、であった。色々な生地を縫い合わせて作成されたものだが、はじっこに「ボナ」といかにもガイジンが書いたカタカナでサインが入っていた・・・。ちょっと期待しすぎた、かも。でもまあ、確かボナは三島のファンだったそうで、以前、昭和五十二年いや五十四年だったか、かつてマンディアルグが来日した時の特集雑誌(白水社の「新劇」と中公の「海」だったと思う)を読んでいてそんなことを知ったのだと思う。そもそもマンディアルグは好きで翻訳本を集めていたし。確かにマンディアルグには「刃の下」という三島への献辞が入って、どうも三島がモデルらしいといわれている主人公も出てくる小説がある。というか「サド侯爵夫人」の仏語版は、当のマンディアルグ仏語修辞だし。あれ、ルノー/バロー劇団の来日公演の時にマンディアルグも来日したのだったか、ちょっと忘れてしまったが。そういえば、三島はフランスに行った際にマンディアルグと会っているようなのである。それも上記の雑誌記事のマンディアルグインタビューで読んだ記憶があるが、確かなのだろうか。前にドミニク・オーリ宛三島献呈署名入りの本が海外の古書店に出ていたことがあったけれども、まあ「O嬢の物語」の作者は別としても、もしそうであるならば、そしてそこでどういう話をしたかによるけれども、三島は「血と薔薇」連載の「城の中のイギリス人」が実はマンディアルグ作と知っていたのか等々いろいろと面白い妄想のネタになりそうだ。
まあ、そういうことでギャラリーをあとにして、神保町へ。といっても、注文品はなし。17時20分くらいに会場入りし、ザーッと見たが、何も無し。それでもまあ、文庫一冊(既に所持しているがかなり安かったので悔しくて購入)と新書一冊のみ。外凾の壊れた伊東静雄全集(人文書院版)が1500円であったが見送り。

住本利男「占領秘録」(中公文庫)300円
福田清人「名作モデル物語」(朝日新聞社・朝日文化手帖)300円
その他、下に写っているのは、こないだ地元の古書店で拾った本。
唐十郎唐十郎血風録」(文藝春秋)500円
西嶋憲生編訳「フィルム・ワークショップ」(フィルムアート社)500円
後者は、ブラッケイジ、メカス、ゴダールマヤ・デレンなどの諸論文・対談などを収録。なかなか面白そうである。それと、先日ネットオークションにて落札した本。

田中光子詩集「わが手に消えし霰」(牧羊社)昭和45年7月10日発行1700円
これは奥付に「400部限定特装本」として記番があり、前見返しに毛筆署名が入っている。といっても普及版はない。序詩が伊東静雄で序文が三島由紀夫。この人、確か戦時中に「高原」という詩集を一冊出しており、昭和三十年代の半ばに「文学界」だったかに小説も発表している人。どうやら戦時中に三島がこの人の家に行ったことがあり、その縁でこの出版になった模様。