漁書日誌 3.0

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西部古書展の土曜日

さて、西部古書展である。
本当は、ちょろっと神保町のまど展に立ち寄ってから高円寺へ行こうじゃないか、と、考えていたのだが、種々の理由から無理となり、地元駅から高円寺へ直行した。久々の高円寺である。
注文品は二つ、既に昨日電話で確認してある。

到着したのは、17時3分くらい。しかし既に暗い。冬だねえ。

でまあ、約一時間、会場をザーッとみてまわり。
まずは注文した高額書籍。
ゴンブリッチ「芸術と幻影」(岩崎美術社)重版カバ5000円
パノフスキー「視覚芸術の意味」(岩崎美術社)重版カバ2800円
どちらも岩崎美術社の美術名著選書である。前者は定価10300円、後者は定価5900円。まあ定価から見ればよかったか。つい勢いで注文してしまったのだが、古書価は定価以上するし。ゴンブリッチ、品切れだからなのか「棒馬考」とかいまかなりのプレミアになってしまっているようだ。とはいえ「芸術と幻影」、実はモールにあるし、今日中身をチラホラ見てみたがけっこう議論が古いのかも…でも取り敢えずこの辺はねえ。

そして会場では、勢いづいて、これは今年の春に復刊フェアで復刊されたが、
クルターマン「芸術論の歴史」(勁草書房)2500円
なんてのも購入してしまう。芸術論の流れをおさらいするのにはよさそうだ。ほかに、会場で拾ったもの。

ベネディクト・アンダーソン「増補 想像の共同体」(NTT出版)420円
平田弘史血だるま剣法・おのれらに告ぐ」(青林工芸舎)630円
デカルト方法序説」(岩波文庫)210円
雑誌「あまとりあ」(1955.7)300円
「想像の共同体」は、まあしかしさすがにこれくらいは読んでおかないとアレだろうというのでいつ買おうか迷っていたものだが、安く入手。次の「血だるま剣法」は劇画。部落差別問題で幻の作品だったのを伏せ字入りで復刻したもので、発売時にちょっと欲しかった。三島の由紀夫も「劇画における若者論」にて、平田の残酷描写を評価していたし。デカルトは単に新訳のこの文庫がというだけだ。「あまとりあ」は廃刊一つ前の号。ちょっと欲しい記事あり。そして…。

ATGの映画パンフ「アートシアター」の「ビリディアナ」「ポリー・マグーお前は誰だ」「初恋・地獄篇」各420円。今日は三十冊くらい、全部この値段で出ていた。値段設定が微妙で、これが300円ならばもっと買っていたかもしれない。500円ではかなり選ぶし。ゴダールなんかは数冊ずつあったが、皆以前買って持ってるのばかり。初期のが欲しいのだけれども、「5時から7時までのクレオ」とか。

しかしまあ、まど展の方で目録に出ていた、谷崎潤一郎旧蔵の上田敏「うづまき」(大倉書店)初版凾欠18000円とか、もう注文しようかどうか本当に逡巡したけれども、この年末にキツ過ぎるとやめてしまっていたのであった。注文前に出品店に見せて貰いに行ったが、谷崎の蔵書印は確かにあった。特に明治、大正の初期など、度重なる引っ越しなどで谷崎の旧蔵書、原稿やらメモやらそういう類のものはほとんど残っていないので、興味津々、しかも「うづまき」というところがよいじゃない、と、思っていたのだが…。しかし謎なのは、この蔵書印を使っていたのは何年頃なのだろうか、ということだ。この「谷崎潤一郎蔵書」という角印、以前にも他の古書でみたことがある。とはいえ、今日の高円寺で、金もないのにこんなに買ってしまったしなあ。いったいどうするのであろう、年末大丈夫か。

そう、年末である。扶桑書房一人展の目録も届いた。豪華どころか、資料としてもとってもよい目録だろう。鏡花祭は圧巻で、「鏡花選集」特装版とか、珍しい外装のカラー写真には目を見張る。そして三島とはいえば、サイン入りの「からっ風野郎」「英霊の声」のレコードやら、「薔薇刑」自筆題簽数種とか、「魔群の通過」帯署名、「岬にての物語」初版署名、とか、一級品ばかりであった。
その話はまた今度するとして、そうそう、18時過ぎに会場を後にした頃は既に外は真っ暗。その足で高架下の古書店へ行き、都丸書店にて、
遠藤淳「テレビ!テレビ!!テレビ!!!」(三一新書)昭和47年3月31日初版カバ欠、500円
なるものを購入。ちょっと高かったか。昭和28年から45年まで、主要な人気番組の紹介をしているのだが、これはけっこう面白い資料であり、なかなか他にないものではあるまいか。しかし、本文中にしばしば入る三一書房の出版広告はいったい何なのだろう。何故巻末ではなく本文中なのだ。でまあ、それから高架下を阿佐ヶ谷まで歩き、阿佐ヶ谷では幾つか古書店を覗いて、いつもの喫茶店にしけ込んで一服。