漁書日誌 3.0

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閉店時間

有吉佐和子閉店時間」(講談社)昭和37年3月30日発行の初版、凾付700円。


凾[画像上]/凾裏面と本体表紙[画像下]装幀=初山滋

いや、これ、探していたんですよ。でも何故かこんな新聞小説ネット古書店とかオークションとかだと4000円以上とか妙な値段がついていて、おかしいなあと思っていたのです。たまたま、先日検索したらこういう値段で出ていたので納得して注文。本当は帯があるんですけれど、まあよしとしましょう。
で、何故にこんな本を、というと、それは映画をみたからなのです。映画を観て原作小説を買う。正に角川商法ではないですが、しかし、その映画がものすごくよかったのか、というと、また、そういうことでもなく。例えばですねえ、まあ有吉ということでいえば、「仮縫」が、岸恵子や内藤洋子出演で、東宝で「華麗なる闘い」なんて映画になっていますよね。まああれ、映画全体としては別にどうこうないんですけど、ラストの岸恵子が仕組むファッションショーのシーンが、まあ1969年の映画だからですかね、モロにアングラ演劇みたいなショーになっていて、あそこは「2001年宇宙の旅」の例のアレみたいな感じにそれまでとは違和感たっぷりだけど何だか妙に面白いというそんな感じのものなんですが、この「閉店時間」(大映、島耕二監督、1962)の場合は、特にそういうったシーンもなく。あれ、閉店後にマネキンが動き出すような幻想シーン?あったかも。大分前に見たので記憶薄れていますが、まああれです、大映で、若尾ちゃんとか野添ちゃんが出ていて、無論、川口浩も出ていて……という大映原作もの明朗恋愛系青春映画とでもいうんでしょうか、そんな感じでした。

それで、ですね。まあデパートが舞台で、エレベーターガールからお総菜売り場から何から、デパガのあれこれ恋愛模様を描いている小説ですが、主人公は(映画だと若尾ちゃん)反物売り場の店員なんですよ。高校卒業してすぐ入社して四年目の。そこで、あれこれと、デパート特有の隠語を使うんですね。

例えば、「五八(ごはち)」。五×八=四十=しじゅう=始終。始終来てくださるお客様、ということで、お客=五八。それから、ご飯は「八八(はちはち)」。八十八の八をひとつ逆さにして重ねると米になるから。また、トイレに行くのは「四四(よんよん)」。四四=シーシー、だから。笑
で、こういう隠語が原作にはズラズラ出てくるんだろうなあ、と、早速最初の方を読んでみたのです。するとですね、五八なんてのは全く出てこない。お客は「大主(たいしゅ)」。店の主人よりも上の位なので。しかし組合員とかはタイシューと呼んで、大衆のつもりでいる。しかし語尾伸ばすのは古株の社員は嫌ってるとか、ハスノハ=蓮の葉=水も貯まらない=一文にもならない、だとか。タワラシュ=(タワラ=一)=その日最初の客、とか。タワラシュが悪い客だと一日ついてない日だ、とか。いやー、映画と全然違うじゃないの、と。まあそういうわけなんですが、原作の設定だと、江戸時代から続く呉服問屋がこのデパートの元だとあるので、高島屋とか白木屋とかなのでしょうか(映画だと横浜高島屋の設定でした)。それはよくわかりませんが、ともかくこの会社特殊の隠語だそう。もうちょっと昭和30年代の一般的なデパート業界の隠語とかだったらもうちょい楽しみも拡がったのにナア(どんな楽しみか?!)などと思った次第。