漁書日誌 3.0

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ベストセラーと今日の古書

今日は所用で神保町に出たので帰りにチラとモールに立ち寄る。
前にここでも紹介した、「南極1号伝説」(バジリコ)を1000円にて購入。安く買えてよかった。前に書いたことと少し重複するが、でもね、これ別にダッチワイフの歴史の本ではない。一応副題としては「ダッチワイフからラブドールまで——特殊用途愛玩人形の戦後史」とあるのだが、しかし、90年代末以降の“ラブドール”の開発秘話、という感じであった。もちろん第一章は、何故ダッチなのか、とかそういう沿革を述べて、戦後映画でダッチワイフが出てくるものを紹介していたりする。ただしやはりこういう受容史とでもいおうか、それは本書ではやっぱりメインではない。
この最初の章の映画に触れた箇所で、いど・あきお脚本のにっかつ映画「マル秘色情メス市場」に出てくる(ああ、「いど・あきおシナリオ選集」持っている癖に読んでいない!)とか、そういうの紹介しているのだが、いやいや、それなら何故今平の「『エロ事師たち』より 人類学入門」の主人公スブやんが、野坂の原作とは違って、ラストでダッチワイフ作りに専念しながら海に流される名シーンを入れないのか、とか……そんなこといっても仕方ないが。でもそういう小説(非ポルノで)ってあったのだろうか、なんて疑問が今更のように湧く。野坂あたりありそうだが……そういえば、池田得太郎中央公論社から出た「家畜小屋」に入っている短篇で、人形の代わりに石膏像かなにかで代替するというのがあったような。戦前のエログロナンセンス時代の「犯罪科学」やら「桃色草紙」とか、ああいう雑誌での紹介史とか、そこらへんをもうちょい突っ込んでそれだけで一本になったものがあったらなあ、などと夢想。とはいえないものねだりか。この本は90年代以降の開発史がメインで、それはそれで十分に読み応えがあった。

それと一緒に購入したのが、畠山清行「陸軍中野学校終戦秘史」(新潮文庫)450円。ちょうど「陸軍中野学校の真実」(角川文庫)面白く読んだので。CSで雷蔵主演の「陸軍中野学校」録画していた、というのがきっかけの一つでもあるが。

まあそれはそれとして、ここのところネット古書店等に注文して届いた本。

辻村明「戦後日本の大衆心理—新聞・世論・ベストセラー」東京大学出版会、1000円
井上ひさし「ベストセラーの戦後史」文藝春秋、二分冊、700円
ちょっとベストセラーというものについて考えるところがあり類書を漁っていたのだが特に後者は戦後のベストセラーをザッと見渡すには簡便でよい。早く文庫化しないかなと思っていたのだが、まあねえ、買ってしまった。いやーしかし、終戦直後のベストセラー「日米会話手帳」なんか欲しいけれど見かけたことすらないなあ。見たことすらないといえば、ちょっと前にでて今絶版の「ベストセラーのゆくえ」という戦前のベストセラーを論じた本、これなんか図書館で読んで面白いので古書で探しているけれど全く見つけられない。ここ十年くらいの学術書って、切れるともう全く見つけられないような……