漁書日誌 3.0

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記念で作った総革本

いつも覗いている古書店に立ち寄って、こんな本を購入した。

森村誠一人間の証明」(角川書店)昭和52年7月20日発行の第18版。700円。外装無し。
ただし、総革、天金、署名入りである。
なんだこれは、と思って、おそらく何百万部?いったその記念本だろう(前に、「サラダ記念日」で同様の総革本が作成されそれが古書目録に掲載されていたのを見たように記憶している)、角川映画の同名作品は好きだし折角なのでこれで読んでみようということで購入。
すると、本になにか紙片が挟まっていた。それがこれだ。

ということで、どうもこれは版元がやった森村フェアの際に、何かそういうプレゼント企画があり、それに応募してA賞を貰った人が売却し、三十余年の時を経て流れ流れてワタクシのもとへ、ということだろう。
で、革といっても、ごく薄いもので、なんかたまに見かける疑似革のクロスのようにも見える。一応革のようだ。で、普及本を見ていないので何ともいえないが総革天金にして、扉の前にある遊び紙にサインが入っているだけ。こだわりなどはない。これ用に初版本を使ったというわけでもなく、むろん限定番号が入っているとか、これ専用の奥付でもない。

奥付のすみっこに、小さく〈非売品〉とゴム印が捺されているだけ、である。新潮社では、10万部を超えた単行本は、全て4部のみ総革天金見返しマーブルの豪華本が作られるのだが(始まったのが昭和31年の「金閣寺」からで、部数の基準がそれから変わってない、故に、村上春樹などは初版即豪華本だという)、角川もこういうのがあるんだろうなあ。あるんだとしたら、今でもやっているんだろうか。基準は、今までの該当作は……などと気になる。本社なんかに列んでいるのだろう。社長室か。しかしこれ、凾はあったのか…でもまあ、こんな感じならば、こだわってもないようだし、もしかしたら外装なしかもしれない。作成部数はどのくらいだろう。100部とか50部とかか。

かつて古書目録で、岩波文庫の著者用総革本というのならば見たことがある。茂吉だったか何か。あと、何文庫だったか思い出せないが、他にも見かけたような気がする。
文庫といえば、岩波文庫バルザックの翻訳、「絶対の探求」だったかで、訳者葬儀の際に会葬者に配布した文庫を均一台で見つけて買ったことがある。訳者の子息の挨拶状なんかが挟まれていた。一種の饅頭本か。それとか某大正から昭和にかけて活躍した詩人・小説家の新潮文庫のエッセイ本で、新潮社からの重版出来ました届け状と共に、著作権継承者のその娘(この娘も作家)宛の都民税督促状が数枚挟まったままの文庫、なんて妙なものも、もう十年以上前に買ったな、と。

まあ文庫の話はともかくとして、こういう記念の非売本、森村や、他にも角川のドル箱だった横溝正史なんかにも当然あるだろうなあと思う。おそらく。ということで、珍本として大事に架蔵しよう。