漁書日誌 3.0

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雨の中の舞妓揚げ

ちょっと前まで半玉だった妓を揚げた。みきひこ屋という置屋の妓である。

長田幹彦「舞妓姿」新潮社・情話新集2、大正4年6月1日4版発行。竹久夢二木版装幀。美。6300円。

本日は、まあちょっと某文学系の学会にチラリと顔を出して発表を聞いてきた。が、15時も過ぎてしまい、本来の今日の裏目的である高円寺に行けなくなってしまうので、早々に会場を後にした。
高円寺も久しぶりだ。春先に、ラピュタ阿佐ヶ谷へいったついでに来て以来ではあるまいか。
ということで西部古書展。
高円寺の駅の構内にあるコンビニで500円の傘を買い。

会場には17時到着。
外で、何冊か平凡社の大衆文学全集と春陽堂の長篇小説全集が転がっていたので、小栗風葉を探してみたが、なし。何故か長篇…の方で幹彦の巻が複数あった。実はこのところ「青春」をちゃんと読んでおきたいという気持ちがあるのである。2000円も出せば岩波文庫の復刊本を買えるが、あんなに定価の高い文庫はホイホイ買っておきながら、いざ古書となると途端にケチり出すこの貧乏根性はどうにかならぬものか。
それはそれとして、会場ではちょびちょびと新書版の本やら文庫やら、あるいはまた週刊誌やら歌舞伎の筋書きやらを拾う。

で、18時で閉場、近所の古書店など少し周り、駅前の松屋にて豚丼を喰らい、都丸書店を覗き、幾つか買い、そのままガード下を阿佐ヶ谷まで歩く。
阿佐ヶ谷でも幾つか古書店を覗く。
ガード下を通っていくと、阿佐ヶ谷駅のすぐ近くにショッピングセンターのような通せんぼが来るので(今日発見したが、以前高円寺にあった「クロンボ」というカレー屋、実はここに移転していた。しかも今日見たらカレー屋ではなくなっていた。)、そこで脇道から駅前方面に歩く。その通りには、確か以前天井桟敷の劇団員だった人がやっていたというバーなどがあったり(今はもうない)、得体の知れない古本屋があったり、古レコード屋(ここで楯の会の歌のシングルレコードとか昔買った)があったりする。そろそろパチンコ屋とマックが見えてくるなあというところに、MISTY OPARSというカフェバーがある。ここ、夜はバーだが昼間はカフェで、なかなか瀟洒な細長い建物、昼間はすいていて雰囲気のよい店である。高円寺、阿佐ヶ谷とまわってきて、その日の収穫をテーブルにドサリと積み、ゆっくりと閑散とした店内(特に二階)でボーっと書物を紐解きながら過ごす午後、というのはワタクシが大学生の頃の話だが、しかし、たった一つの難点がある。隣のパチンコ屋。ここの軍艦マーチがもろに響く。幾ら店内にジャズ流そうと、だ。あれさえなければ、ホント雰囲気のよい場所だのになあ、そういえばここにも、もう十年は来てないのではないか。
でまあ、古書展含めた今日の収穫。

一番高かったのは、本田和子「女学生の系譜」青土社、1000円。その他、300円のちくま新書もてない男」と200円の「カント入門」、カッパブックスのベストセラー「にあんちゃん」、ミリオンブックスの「五十人の作家」各200円。文楽床本集(三島「文楽椿説弓張月」)157円。
そして注文品である上記の「舞妓姿」。
で、会場で拾った薄物。六世中村歌右衛門襲名の時の筋書き300円。それと週刊誌各315円。中央公論社の「週刊公論」である。

実はこの「週刊公論」、ウチに5〜6冊あったりして。週刊誌を集める趣味はないが、時々の記事で拾っておきたいなあというのはたまにある。
今回、これ面白いなあと思った記事は、谷崎のベストセラー「鍵」に対抗して丹羽文雄が書いた「べつの鍵」という小説について。これ本当に「べつの鍵」というタイトル。こんなのあるとは知らなかった。

しかしまあ何と言っても今回は「舞妓姿」である。何しろ状態が至極よい。この値段なので、もしかしたら背などボロボロのものではないかと危惧していたのだが、前の所持者のものか、大分古色のついたパラが巻いてあって、それをとるとこんな状態。初版ではないけれど、これだけのコンディションなら、神保町ではこの三倍くらいしそうである。本当は「お才と巳之助」でこのくらいの状態のものが欲しいところである。
しかしスゴイ金遣い。日々の鬱憤やらルサンチマンがこういうところで爆発するのか。月末がきつそうだ……