漁書日誌 3.0

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(丸山明宏)と天才

所用で、池袋の先の方まで行ってきた。
所用が終わった後、久々にそこの土地の古書店をまわる。何だかブックオフには澁澤関係コーナーとかがあり、結構安めに古書が並んでいた。これは相場からすると安いなあという澁澤ではない人の画集とかもあったのだが、さすがに金がないのでそのまま。サンリオSF文庫とかのいいところなんかがポツンと棚にあったりするのだが、しっかりと2000〜3000円の値段がついていた。

で、むかしはしょっちゅう覗いていた古書店へ。店の半分は未整理で迷宮状態のところである。
ここであれこれと見ていると、おお、欲しかった演劇パンフレットを発見、即、購入する。それがこれ。半券付きで、何と言っても状態がよい!

新宿文化劇場でのアートシアター公演のパンフ&地下のアートシアター蠍座のパンフである。あの、特有の細長いパンフで、普通、折れ目がついちゃったりスレが酷かったりするものだが、これは状態がよい。両方とも三島のユッキーの作品で、片方が「三原色」とコクトオ「声」を演った時の。「三原色」はこれが再演で、演出は初演と同じく堂本正樹氏である。確かこれを地下でやっている時、上の新宿文化では寺山の「毛皮のマリー」をやっていたのではなかったか。昭和42年9月8日から10月7日まで……一ヶ月もやっていたのである。コクトオの「声」は、例の、ラストが「わたしあなたを愛してよ、わたしあなたを愛してよ……」と男はとっくに切ってしまっている受話器を片手に、電話コードを首に巻き付けて、という女優の一人芝居のやつ。そういえば昨年夏、昴の米倉嬢が演っていたのを見に行った。「三原色」は何年前だったか、今は活動停止中のク・ナウカの若手公演で演ったのを見に行ったことがある。
で、もうひとつの赤っぽい方が「熊野」と「葵上」。共に近代能楽集の作品。「熊野」はこれが初演。で、熊野が着用している衣裳に直接絵を描いているのが、村上芳正。演出は堂本氏。
価格は、2000円の1500円。

お店のお兄ちゃんに、こういう関係のもっと無いですかねえと話しかけたところ、親切に奥から値付け前のものを出してくれた。
それが、丸山明宏主演の「黒蜥蜴」と「椿姫」のパンフである。

これも状態がよい。値段を付けてくれとお願いすると、1500円と1000円でよいという。……今現在、この値段はかなり厳しい、厳しいというか、次のお給料日までほぼゼロ円で過ごさなくてはならないくらい厳しい。しかしこれを見逃しては、ということで、銀行に行き、なけなしの金額を支払う。ということで、購入。

しかも、である。あとで気が付いたのだが、「椿姫」の方は、パンフの見開きに、サインペンで丸山明宏の自筆サインが入っているではないか。おお。

昭和43年4月、松竹が名作路線の第一回として東横劇場で上演したのが三島「黒蜥蜴」と、石原慎太郎潤色「若きハイデルベルヒ」である。当時、渋谷駅のところにどでかく「黒蜥蜴」の絵看板が出て、丸山、三島の肖像も掲げられたのが、何度も盗まれた、と、当時の新聞記事で読んだことがある(ホントに)。その時のだ。しかも、である。このパンフには二種類あって、実はユッキー率いる劇団NLTが、公演中に分裂するという騒ぎがあり(浪曼劇場とNLTに別れた)、分裂後は、新たなパンフに差し替えられ、本文中にあった俳優紹介の記事が変わっているのである。写真とか。マニア以外にはどうでもいい話だが。

で、松竹名作路線第二回公演が「双頭の鷲」であった。これが昭和43年10月。これは確か京都公演もあった。南座。そして第三回名作路線が「椿姫」で12月。こうみると、結構立て続けにやっているなあ。
「黒蜥蜴」は大好評で、歌舞伎座で一夜限りのアンコール公演をやったあと、全国巡業、昭和44年には凱旋公演を再度東横でやっている。「双頭の鷲」の前の夏には、松竹の映画「黒蜥蜴」も封切られ、丸山明宏ブーム最絶頂の頃ではないか。
……しかしでも、6000円はキツイ。今、キツ過ぎる。

で、今日は金曜日。都内に出たからには、と、金もないのに神保町へ向かう。
本日はぐろりや会。
注文品はなし。閉場30分前くらいに到着。ゆっくり見ていたら半分くらいでアウトになってしまったが、1000円分購入。
それがこれ。

オットー・ヴァイニンガーの「性と性格」、当時はワイニンゲルの「男女と天才」である(まー、ギョエテとかフッセルみたいなもんだ)。明治39年3月5日の4版(初版は同年1月15日)、大日本図書発行。
これ、かれこれ八年くらい前の青展で、1500円で購入して喜んでいたのだが、今回600円だった。ダブりではある。しかし所持本は筆による書き込みがアレなので今回書き込み無しのこれを購入した次第。というか、600円は安いだろうと。22歳だったかでピストル自殺した原著者は、明治の一時期、日本でもけっこうブームを引き起こしたらしい。確か鴎外の「青年」にも引用されていなかったか。谷崎とか。まあヴァイニンガーのM+W説なんか、戦後、昭和30年代初頭なんかにもう一回ブームが来たりするのだが。
いやしかし、なんか懐かしい感じがするなあと思ったら、今回のぐろりやは、棚の配列が昔と同じような感じであった。最近は縦に列んでいるが、今回は以前同様横に棚が配列されている。青展の時もこうであるけれど。
この他、ちょっと資料として、大正2年に衛生局が発行した「発疹チフス」なんていう冊子とかも欲しかったが、最終的に棚に戻してしまった。
というのも、400円だったのだが、400円分他のものを選んでしまったのである。それが、これ。

歌舞伎座新橋演舞場の筋書き。まあパンフレットだ。
全部三島のユッキー作品の。みしま歌舞伎最初の作品「地獄変」は吉右衛門劇団の初演。これも状態がよい。表紙が白なので汚れているのが多いのだが。それと、「熊野」の再演。こちらは同題でも歌舞伎舞踊の方。それと歌右衛門にせがまれて書き下ろした「朝の躑躅」新派との合同公演の時の。それから、ユッキーが舟橋聖一と合同演出した山田美妙「胡蝶」の時の。おそらく名前だけだとは思うけど。しかも全部既に所持しているが、状態が良くて各100円だったのと、歌舞伎筋書きは、往々にして中身が変わるので買っているのである。つまり、初日とか最初の方のと、公演の中日以降のものとでは、筋書きのなかに舞台写真が入っていたりいなかったり、という違いがあったりするのである。

まー、あれこれと買えてよかったけれども、本当にこれですっからかんである。どうしようという位グサリと懐が痛い。嗚呼。