漁書日誌 3.0

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リラダン横目に「世路日記」

本日は紙魚の会古書展最終日。
会場には、閉場10分前に到着。注文品は無し。そして、拾うものもなし。折角来て、ひとつも買うものがないというのは、確かに懐が助かるところではあるが、やはり淋しい。
とはいえ、今日は他の用事で神保町に来たのであるし、よしとする。

で、ちょこっとだけ田村書店を覗いてみる。
ちょっと映画関係の本で欲しいのがあったが今回は見送り、入って左側の近代文学の棚などを見る。
それから店主に挨拶。
今度こういうのが出たよと見せて頂いたのが、「ヴィリエ・ド・リラダン移入翻訳文献書誌」(森開社、限定500部記番)5000円というもの。
瀟洒な冊子で、凾入り。
かなりスゴイものである。……しかし、今この状況では、ちょっと。ということで今回は見送り。

で、列んでいた「L'EVOCATION」の5号を購入。
この雑誌は出るたびに毎回購入している。今回は梶井基次郎の書簡がメインのようだ。
それから店を出て、かわほり堂へ。


この棚のもの一割引、という棚から、佐藤蔵太郎著「訂正増補惨風悲雨世路日記」(偉業館)の明治35年10月5日発行30版を1350円にて購入。

外装はないが、おそらく袋だろう。奥付には30版とあるのに、写真のように表紙には31版と印刷されているのが謎。

そういえば、前にもこういうことあったなあ。前に、岡鬼太郎「あづま唄」の初版を買って、帰宅後に繙いていたら、扉には再版と印刷されていたり、谷崎の「潤一郎犯罪小説集」再版を買ったら、奥付は再版なのに、表紙には10版とあったり……。

で、何でこんなものを購ったのかというと、実はこれの元版を持っていたからで。
それが、菊亭香水「惨風悲雨 世路日記」(文事堂)明治19年3月17日出版の再版(初版は明治18年5月20日)である。

この本のことを知ったのは、恥ずかしながら、前田愛の「近代読者の成立」でだったと思う。ちょっと明治期立身出世関係のものを漁っていた時だ。再版だけど、これは2000円もした。確か旧臘の扶桑書房一人展だ。
実は初めてのボール紙本。で、中身はむろん、文語体。エピグラフとして漢詩が掲げられていたりして。
まあ、読もうとすれば読めないわけでもないが、かなり読みづらいのも正直なところ。ルビもパラルビ。漢字だから何となく意味はわかるけれども。で、こちらの後版になると総ルビ。ということで、まーこちらが読み用だ。

元版だと、挿画が数葉挿入されていたけれど、こちらの後版だと、折り込み口絵が一葉。ちょっとこんなの見たこと無いな、というのは、この物語、前編と後編に別れているのだが、前編最後の頁の裏が広告になっていること。

そういや、勢い込んで古書展にて湖処子の「帰省」重版本を拾って、あれも読もうとしながらもそのまんま積ん読だし、あれも読まないと。まー年代順に、香水→湖処子という感じでいくか。