漁書日誌 3.0

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猫と馬鹿

趣味展である。

先週が窓展で開場前に駆けつけたが、これが二週も続くとなかなかつらい。体力的にも出費的にも、である。9時48分ごろに開場着。30人くらい列んでいるが、その後も続々と人が来て50名くらいかというところで開場。入り口のところで検温して階下に降りると既に入り口は開いている。扶桑書房の棚に駆けつける。棚が随分と少なくなった。扶桑書房の棚は壁面2つのみ。しかも半分のほとんどが目録掲載品。扶桑さんに伺うと、今後もずっと減らすという。

とはいえ、気のせいか今回はいつもより値段が下がっているような印象があった。開場から90分くらいで、リバースが結構あって面白い。それから会場を一回り。お昼、帳場に本を預けて、丸香にうどんを食べに行き、その後お茶して一服の後に再び会場へ。以前ならばここで田村の外台などを覗いていったものである。

ここであれこれと逡巡して、何冊も棚にもどし、お会計。

納所弁次郎編「日本軍歌」(博文館)明治25年4月7日袋500円

菊池幽芳「新聞売子」前編(駸々堂明治34年1月20日3版1000円

軍歌の本は袋目当て。本体は和装。歌詞は活字ではなく整版印刷で、美妙や小波など。「新聞売子」は催眠術がキモとなっている小説。多色刷木版口絵があるのだが誰のだかわからない。固有名詞などは日本に置き換わっているが元々はイギリスの小説。

夏目漱石吾輩は猫である」上巻(大倉書店)明治40年8月25日11版背痛2000円

夏目漱石吾輩は猫である」中巻(大倉書店)明治41年2月15日8版2500円

上巻は見返し補修、しかも雑。

村上浪六「馬鹿野郎」(金葉堂)明治44年7月19日函400円

「趣味」明治43年4月号400円

浪六のは函があったため。取り出し口に本体を取り出しやすいように半円状の切り抜きがある。明治期の本の函には、これ、よく見かけるような印象。もっと大きくいわばデザインとして採用しているような本もある。「欺かざるの記」元版などもそうだ。「趣味」はなかなか面白そうな記事があったため。

真山青果「青果集」(新潮社)明治41年4月25日再版400円

生田長江編「ダンヌンツイオ死の勝利」(青年学芸社)大正3年8月20日5版400円

加藤朝鳥編「ダンヌンツイオ犠牲」(青年学芸社)大正3年8月20日4版400円

青果集はもう一冊初版があったが1500円だったか。再版で十分とこちらを。ダヌンツィオは状態もよく嬉しい収穫。ともに青年学芸社のエッセンスシリーズ。

内田魯庵「読書放浪」(書物展望社昭和7年6月10日限定千部記番袋欠1000円

室生犀星「復讐」(竹村書房)昭和10年12月20日函欠800円

犀星のは表紙裏表紙ともに本作の原稿が印刷されているという装幀。装幀目当てでの購入。魯庵のは、先日普及版を購入したばかりであったが、当然こちらの背革装のが欲しかった。これは皮の状態もよく嬉しいところ。前見返しに魯庵の名刺が貼付されているが、これはデフォルトの仕様なのかしら。

書物展望社編「書祭」天(書物展望社)特装版昭和14年11月8日函400円

「書物趣味」昭和8年1月400円

「書物趣味」は座談会掲載のため。「書祭」は「書物展望」100号記念のアンソロジーで、過去同誌掲載のものよりピックアップし、天地人と3冊にまとめたもの。奥付によるとこの本は羽二重装幀の特装版らしく番号も奥付にあるが、限定何部なのかはわからない。普通は紙装なのかしらと。

永井龍男「自撰作品十一種」(新潮社)昭和49年6月25日函巻カバ500円

萩原朔太郎「月に吠える」(名著復刻全集近代文学館)カバ200円

永井龍男のは、実は前から綺麗なのが欲しかった本。背革装で本文2色刷。

十一代目市川團十郎襲名大興業筋書200円

「コメディアン」(俳優座)昭和46年1月1日200円

十一代目団十郎のは三島の「鰯売恋曳網」がある。昭和37年のものである。半券つき。「コメディアン」は俳優座の劇団新聞。アンケート集計などが掲載されていたので何かの資料になるかと購入。

いやはや、これでも絞りに絞っての購入なのだが、かなりの出費である。またあれこれと古本を売却しなければならない。

窓展からの秋風

即売展も久しぶりである。原稿用の資料などはポツポツ買っていたものの、古書展自体行けなかったり、行っても一冊も買わずだったりで、このブログに書くようなものはなかったのであった。そして久しぶりの窓展。なぜか地元が渋滞しており、バスが予定時間の20分後にくるといったアクシンデントがあって会場到着は9時55分ごろ。ゆっくり入場してあきつ書店の棚へ向かう。

最近はお金もないのでケチケチしており、今日買った一番高価な本は1100円。あとは全て千円以下である。それでもまあこれは資料で必要だしなあなどと自分に言い訳をしながら抱えていると、結構な量になってしまう。一旦帳場に取り置きしてもらってから、昼食に出てこれも久しぶりのキッチン南海でカツカレー。その後一服してから会場に戻る。リバースがチョロチョロとある。見逃していたところをじっくりと見る。予算を考えあれを戻し、これとあれを差し替えなどしてようようお会計。

佐々木信綱「歌之栞」(博文館)明治29年8月25日7版300円

丹羽瀧男「独学自在 日本速記法」(雙々舘)明治22年11月5日800円

普段なら買わない本。明治期の総革装というのと革の状態が良く安かったので。今後の原稿用。速記のは高かったが、若林玵蔵なんかのことを思い出しいってしまった。若林の伝記もあったけれどもそちらはパス。

森林黒猿「北清事変 日本の旗風 天津の巻」(田村書店明治35年11月20日3版袋200円

未知の本。従軍講談師による北清事変=義和団の乱の軍事講談。4巻でワンセットらしい。チラシや割引券なんかも挟まっていたが、これを買った理由は挟まっていた袋にある。写真右側が袋。これにちょっと興味深い印刷があって、これは原稿に使えると購入した次第。

ダンヌンツイオ(加藤朝鳥訳)「犠牲」(植竹書院)大正2年12月25日初版函900円

谷崎潤一郎「金と銀」(春陽堂大正7年10月19日再版函背欠1100円

植竹のダヌンチオのやつは函は初めて見た。菊版のクロス装。背は少し擦れているがピンピンの状態。植竹の書物だしということで購入。薔薇の意匠は函背にもあるが本体には無し。「死の勝利」なんかは薔薇小説と言われていたからそれでこの意匠なのか。「犠牲」は新潮社から後に出た縮刷本で読んだけれども、前に森田草平訳「快楽児」は買ったのに未読だったなあと。

横光利一「春は馬車に乗って」(改造社昭和2年1月12日初版函欠400円

松崎天民「裏面暗面実話」(平凡社:明治大正実話全集12)昭和4年10月10日函欠300円

内田魯庵「読書放浪」(書物展望社昭和8年4月3日普及版函欠400円

魯庵のは元は背革で布袋に入っている装幀のやつ。これは普及版。実話全集のは天民の著作。

野依秀市「風流夢譚の批判と国民への訴え」(芝園書房)昭和36年3月10日初版カバ200円

雑誌「現代」昭和29年12月号200円

野依のはまあ右派からの中央公論と風流夢譚批判の本。前からちょっと欲しいなと思っていたのだが安く手に入ってよかった。それから「現代」は三谷茉沙夫が編集発行人をしていた雑誌の第2号。当時才能ある10代作家とごく一時期話題になった作家で他号には三島由紀夫が旧稿をを寄せている。

木村毅「近代精神と文壇」(至文堂)初版函400円

紀田順一郎「内容見本にみる出版昭和史」(本の雑誌社)初版帯300円

木村のは村上浪六論が入っているので。紀田のは原稿用資料。

あんまり買いたくなかったのに、いってしまったなあと。いつか使えるかも、というのはもう理由にしてはいけないかもなあとも。本当にこのままではゴミ屋敷一直線である。

西部に朝イチ

西部古書会館に開場前に行って並んで開場と共に入場したことは前に一度ある。その時は元版(貼凾の)『悪徳の栄え』正続凾付を800円で見つけて喜んだ記憶がある。今調べてみると1998年10月3日であった。なんともう四半世紀近く前ではないか。当時はまだ中野区在住で自転車で行っていたのであった。

今日はvintage book lab.という1日限りの新しい古書展なのである。目録注文品もあり、前もって会場の棚の写真がTwitterにアップされ、盛林堂書店などは目録掲載品以外は500円均一だという。これは、ということで四半世紀ぶりに西部古書会館の開場前に赴く。開場10分前くらい、すでにガレージ部分は解放されていて、30人くらいはいたであろうか。入り口には半分くらいの客がぐじゃぐじゃに列んでいる。そして開場。もうここは靴を脱がなくても良いのである。これはというのを棚写真で見つけていたので、あるかなと行ってみると、ある。これもある、あれもあるとカゴに入れていく。群がっているお客は、おそらくはミステリ関係のコレクターが多いのであろう。文学系のものは案外残っていた。そこに目録注文していた盛林堂主人がやってきて注文品2点とも当たりという。まさか両方とも当たるとは思わず、予算が全然足りない。あれやこれやを棚に戻して、カゴを帳場に預けて外に出る。

銀行に行ってから戻ってお会計。古書仲間と合流し、その後、ぎょうざの満州で昼食、高円寺茶房でお茶して一服。今回はとてもいい買い物ができたのだが、先々月のパソコン買い替えやら、先月の「悪魔」のこともあり、一気に貧窮問答歌である。こんなに立て続けに高い買い物をしたのは初めてでではないか。相場よりもお安くいい本が買えたのではあるが、お金のことを考えると暗澹とする…。

まずは500円均一の収穫から。

大藪春彦「火制地帯」(浪速書房)昭和35年6月30日函欠

中原弓彦「虚栄の市」(河出書房新社)昭和39年1月25日初版帯欠少痛

寺山修司「誰か故郷を想はざる」(芳賀書店)昭和43年10月20日初版カバ帯

棚写真で目をつけていて一目散に確保したのが大藪のである。函欠で少し汚れがあるが、何を隠そうこの本はロス・マクドナルド「青いジャングル」(創元推理文庫)からの盗作が発覚し回収された本。それから「虚栄の市」は、本当は角川文庫版で欲しかったが、まあ読めれば十分とこちらの元版を。この河出ペーパーバックのシリーズは、帯とビニルカバーが外装。このシリーズは、ナボコフやメイラー、クロソウフスキーなんかを買ったなあと。結構いいラインナップだったなあという印象。寺山のはすでにもっているが帯のために購入。

小沼丹「汽船」(青娥書房)昭和46年6月25日初版凾帯月報付焼

郡司正勝荷風別れ」(コーベブックス)昭和51年9月25日凾帯

篠田知和基「土手の大浪」(コーベブックス)昭和51年11月30日凾帯

小沼丹は文庫本をもっているくらいだが、この「汽船」は前々から欲しかった本。ちょっと焼けがあるがまあ(確か帯が2種類ある)。それからコーベブックスの南柯叢書ー近代文学逍遥シリーズの荷風(郡司)、百間(篠田)。これは、限定500部記番入り。用紙や印刷、造本がいい。贅沢な和紙、活版印刷、シンプルな装幀、いまこんな本を作ろうと思っても作れないだろうなあと。このシリーズは数冊持っていて、金欠で売却したが、まあこの値段ならば持っていたい本である。

カッシーラー「個と宇宙」(名古屋大学出版会)カバ帯

出口裕弘澁澤龍彦の手紙」(朝日新聞社)カバ帯

菅沼定憲「いまなぜ寺山修司か」(彩流社)カバ

出口のは書き下ろしエッセイで三島文献、寺山のもちょっと読んでおきたかった本。

丸山薫「一日集」(版画荘)昭和11年9月15日凾

新興芸術派十二人「モダン・TOKIO円舞曲」(春陽堂昭和5年5月8日カバ欠15000円

丸山薫の方は均一棚からの収穫だが、世界大都会尖端ジャズ文学叢書のコレは目録注文品。これはもう昔から欲しかった本。このシリーズは同じデザインのカバーがつくが、カバ欠の少痛本ならなんとか手が出せる価格になるんではないか、と思ってはや20年。そんな都合の良い出物はなく、今回ようやく、である。そして、お次のが今回外れるだろうと実はたかを括っていた注文品。

泉鏡花婦系図」前編(春陽堂明治41年2月15日初版カバ欠

   「婦系図」後編(春陽堂大正2年4月1日3版カバ欠、前後編揃25000円

この辺はやはりいつかは欲しいというものだけれども重版口絵欠なら手が届くかもしれないが、そういう都合のいい出物はない。今回のは前編が前見返しが半分破れ、後編が本文一頁目が半分破れ欠なのである。モダン東京もあるしかなりキツいが、こういう出物はまずないだろうしと注文したもの。3版は少しクロスの質が異なり、背のタイトル文字も太明朝のような初版とは異なる書体で、ごくわずかだが判型が大きい。あれと思ったが印刷所が異なっていた。口絵は英朋と清方。良いのだけど、ここのところの立て続けの出費はキツい…色々売却していくしかないか。

 

我楽多市展、ラスト

先日届いた我楽多市の目録、真ん中にデカデカと「さよなら我楽多市」と印刷してあった。メンバーの加齢などが理由だという。目録を見ていくと、けやき書店なども参加している。そしてこれはという出物があり相場からしてもかなりお安い。ボロボロの函欠本なら所持しているがどうするか…と逡巡した挙句にとうとう注文してしまった。ということで、東京都では1日3万人のコロナ罹患者という今日、先日受けたPCRも陰性だったしと古書会館へ向かう。

到着したのは17時過ぎ。ざっと会場を回る。棚は少なめ。数百円分のみ抱えて、お会計。お金のこともあり注文品が当選していることは電話で確認していた。

谷崎潤一郎「悪魔」(籾山書店)大正2年1月20日初版凾付22000円

坂口安吾「日本論」(河出文庫)カバ100円

彷書月刊」特集 装丁•本のデザイン100円

シネセゾンあんなに愛しあったのに」パンフ200円

購入品は以上。「悪魔」の出費は痛い。痛いが、凾付がこの値段で買えることはまずない。本体背角に痛みがあり、凾も角に少し補修跡がある。こういう微妙な傷で安くなって出るという都合のいいパターンはあまりないしとエイやと行ってしまった。

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川添象郎「象の記憶」(DU BOOKS)署名入定価

西村賢太追悼文集」(GOTOGOTOBOOKS)定価

川添は「ヘアー」なんかのプロデューサーというかキャンティやってた人の息子。三島由紀夫がチラッと出てくるので購入。

藤田佑「小説の戦後 三島由紀夫論」(鼎書房)

これは献呈いただいた。感謝です。博士論文をまとめられたもので、藤田さん最初の単著。勉強させていただきます。

 

 

雨のち35度

昼過ぎに用事があって神保町に。用事が済んでから、郵便局へ古書代金の振り込み、そして東京堂へ行って新刊書を購入。それから他の用事のために移動。

午前中、雨が降って、止み、そして晴れ渡る。気温がグングンと上がり35度くらいだったか。他の用事を済ませてから、五反田に出る。今日は五反田遊古会初日。注文品はない。まずはざっと1階ガレージを見る。谷崎の改造文庫の初版やら紙装になった重版などがあったが、この数百円で後でポカリスエット買おうと棚に戻す。2階。見て回るが、これといったものがない。まあ、ということで2冊のみ。

岩城見一「美学概論」(京都造形芸術大学)200円

映画芸術」昭和41年6月号200円

前者は教科書本、後者は映画「憂国」が表紙で三島が寄稿している号だがもうとうにもっている。しかし今回のはまるで新品のように綺麗だったので予備にと購入。それから神保町に戻る。

17時40分くらいだったか。神保町では和洋会古書展の初日。こちらも注文品はない。ザーッと見て回る。これは買おうかと思った本もあったが、やめて何も買わずに出る。

それというのも、先日目録注文して先ほど代金を振り込んだ古書のことがあったからである。原稿用に必要あって、参考用の本などを最近ちょくちょく買っているし、あまり無駄遣いしたくないのである。で、目録で注文して買ったというのは、扶桑書房速報で買った花袋。

田山花袋「花袋集」(籾山書店)明治44年8月15日9版凾付4500円

花袋集自体は、第二集と共に函欠本をとうに持っている。だがこれは凾付、これはと思って注文したのである。届いてみると、すでに持っているもう少し若い重版はクロス層の丸背上製本なのだが、これは並製で夫婦函入なのであった。前に「花袋書誌」を読んだ時に、確か「花袋集」は重版で表紙の色だのデザインだの上製から並製へだのと、いろいろと異装があることは知っていた。

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新刊書店で、昨日今日と購入した本。

 

 

 

 

梅雨再開かと趣味展

金曜日、趣味展である。先月末から、梅雨が明け、連日猛暑と言っていいような日々が続いていたのではあるが、ここにきて急に雨続き。実は梅雨はこれからなのではないかくらいの勢いといった印象がある。で、金曜日も雨。9時40分頃に新御茶ノ水駅について古書会館に向かう。遠目に、あれ行列がないなと思ったら、雨なので会館の中で行列がとぐろを巻いていた。コロナもまた増加傾向にあり検温と消毒。そして階下の入り口へ移動。10時開場。

扶桑書房の棚へ向かう。前回の趣味展と同じく棚3つではなくて2つに減っていた(今後はもうずっと2つでやっていく由)。佐々木桔梗の限定本などお安めに並んでいたが手にも取らず。エッセンス叢書がズラリあり状態も良かったけれども1冊800円だったので手放し。今回はなるべくお金を使わないようにと思っていたが、会場の他の棚を一周してきて、結局あれもこれもと買うことになってしまった。正午前、友人らと会場を抜けて昼食に。うどんを食べ、茶店で一服し、会場に戻って改めて棚をチェックし、キープしているものを吟味して、お会計。

若山牧水「別離」(東雲堂書店)明治43年5月15日再版裸1500円

吉井勇西鶴物語一代女」(春陽堂大正7年12月15日初版函欠1000円

藤澤衛彦「小唄伝説集」(実業之日本社)大正10年1月2日初版函欠

斎藤昌三紙魚供養」(書物展望社昭和11年5月10日限定500部函欠1000円

「別離」はすでに持っているのだが水シミがある本だったので、これで状態のいいものと交換だと思っていた(が、どうもなんか変だなと感じてはいたけど、帰宅して確認してみると巻頭の著者肖像欠だった)。吉井勇のと藤澤衛彦のは夢二装幀。後者は木版口絵入。和綴のようなデザインを施してある。「紙魚供養」は、斎藤昌三のところにきた手紙の封筒をそのまま装幀に使用したもので、表紙は太田正雄(木下杢太郎)、裏表紙は漆山又四郎であった。本文に少し虫喰いがあるがこの価格なら嬉しい。

「文章倶楽部」(大正15年1月)800円

「書物」(昭和9年1月)500円

「書物」(昭和9年5月)500円

「文章倶楽部」は文壇一百人特集のため。顔写真とプロフィール掲載で、当時どのようなイメージであったのかがわかる。「書物」は創元社の矢部良策の記事のために。

文藝春秋祭り」パンフ、昭和30年、34年各1000円

映画芸術」(昭和46年5月)200円

文春のやつは、文士劇のパンフ。三島由紀夫が出演している時のもの。これは半額くらいで欲しかったが仕方がない。

外に出ると雨は止んでいる。このままもう降らないのではないかと思ったことであったが、1時間後、土砂降りになり、雨脚は弱まったもののその後一日中雨降りであった。

翌日の土曜日。

ちょいと野暮用で都内に出たので、恵比寿のシス書店に久々に赴く。

中井英夫生誕100年展@シス書店7月16〜30日

これに来たのは他でもない、会場限定(通販もあるらしい)で出た中井英夫「彗星の騎士」(シス書店)を購入するためでもある。本書には記載はないが限定250部。

真っ白で、本体表紙は毛羽立ちそうな紙質。パラフィン巻かないとすぐに汚れそうな感じである。

6月の蝉の鳴き声

とにかく暑い。6月末に梅雨が明け、7月末かというような気候が続いている。木曜日、多摩センターの先の方に行ったらもう蝉が鳴いていた。

久方ぶりの学会発表などがあり、バタバタしていたら買った古書も記さぬままにいつの間にか7月になってしまった。色々と忘れてしまうので、覚えも兼ねて以下連ねて書いていきたい。

6月4日土曜日、城南古書展2日目に立ち寄り、ザッとみて以下2冊。

福田純一「純粋一等国民序曲」(誠文堂新光社)昭和60年7月3日カバ帯300円

別役実「赤い鳥の居る風景」(角川文庫)昭和49年8月20日初カバ150円

買ってから喫茶店で本を取り出してみていると、あれれ「純粋一等」の方は前にも買ったような記憶。羽良多平吉の書容設計が際立った本。

6月10日金曜日、まど展初日。普段であれば朝イチで並ぶ古書展ではあるが、今日に限っては無理であった。実は裁判員裁判裁判員の最終候補になったと裁判所から呼び出しがあり、初めて地方裁判所へ。40名くらいの中から6名の裁判員に選ばれてしまった。その後宣誓やら説明があって、まだ間に合うというのでそのまま夕方に古書会館へ向かい、1冊のみ購入。

上野葉子「葉子全集第二巻」(私家版)函欠1200円

6角形の造本で知られる「葉子全集」だが、今回端本であったので装幀参考資料として購入。著者は女学校の教師で、小説を執筆しており、この2巻には朝日新聞の懸賞小説に応募して佳作になったという「雑音の中より」を収録。面白いのは、冒頭に収録作品原稿の1枚目の写真が口絵として出ているのだが、本文1ページ目としてその口絵写真が用いられているのである。つまり原稿の写真の最後の文字が次の本文に続いているという具合。こんな作りの本は初めてみた。

6月11日土曜日、神奈川県立近代文学館でのドナルド・キーン展に赴く。三島由紀夫からの新発見書簡なども展示されていた。

週明け、注文していた雑誌「螺旋の器」第6号が届く。

おなじみ森開社の小野夕さん主催の雑誌である。今回はモンテスキウ特集第2弾。ネット告知のみ、直接注文のみなので見逃すわけにはいかない。

6月19日日曜日、お誘いがあって、六本木の俳優座劇場へ新劇交流プロジェクト公演2「美しきものの伝説」に行く。俳優座に芝居を見に来るのもだいぶ久しぶりのような気がする。渡辺美佐子が本公演で舞台生活を引退する由。松井須磨子役であった。

週が明けてから後、扶桑書房目録速報が届き、1点注文、それがすぐに届く。

広津柳浪「人」(金尾文淵堂)明治43年1月1日函欠7500円

元々は夫婦函に入った1000ページを越す分厚い角背上製本。今回は函欠。この本、蒼々園叢書と銘打っているが、この1冊だけの模様。奥付には特製の値段も記してあるので、別に特製があったのだろうか。「一段落」とタイトルを改めようとしたが既に印刷に入っていたから諦めた云々後記あり。新聞連載ものだろうか、分厚くて読む気が削がれるほどだが、考えてみれば漱石のものなども同じように分厚い菊判で、「明暗」と同じくらいの分厚さ。

6月24日金曜日、ぐろりや会古書展、初日。注文品はなし。会場をざっと回り、三島に関するエッセイが入っているので尾崎一雄のエッセイ集と、文庫を1冊。

尾崎一雄「四角な机丸い机」(新潮社)昭和49年1月15日初函200円

共同通信社編「東京あの時ここで」(新潮文庫)カバ200円

それから新刊書店へ行って、文庫などを購入。

6月26日日曜日、明治大学駿河台校舎にて日本近代文学会6月例会。ここで「三島由紀夫のエンターテインメント作品と方法意識」なる発表を行う。

論文の校正やら裁判員裁判やら発表での準備などでもうグッチャグチャであった状況だが、ようやく荷を下ろす形に。その反動か、欲しいなと思っていた新刊書籍をズバズバと買ってしまう。

7月2日土曜日、愛書会古書展2日目。目録注文品はなし。ザーッと会場を回るも、これといったものもなく、書き込み用に用紙がいい頃の「詩学」と、三島由紀夫「火宅」初演のパンフを。

俳優座創作劇研究会5パンフ300円

ボワロー「詩学」(岩波文庫)重版帯150円

「文学」特集・出版文化としての近代文学(1998冬)200円

俳優座パンフは党に持っているけれど、公演チラシ挟まっており。こういうエフェメラがたまに挟まっているのが面白いところ。

その後、武蔵小金井に移動して野戦之月公演「鯨のデーモス」を高架下の特設テントで観る。学生時代、風の旅団の公演には行きはぐっていたのでこれが今回初なのだが、アングラ的芝居と、旅回りのドサ芝居のような客席のへの浸透感とがいい具合にミックスされたちょっとみたことのないような芝居であった。

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ここのところ新刊書店で購入した新刊書籍。

発表用の資料本やらお勉強用の本などもあるが、新刊書籍だと以下のようなところ。このほかに、藤澤清造の随筆集も買わないとな、と。