漁書日誌 3.0

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師走初旬の古書

所用で神保町に出た。いまは古書会館で新興展をやっているのだが、立ち寄る暇がなく。ただし、扶桑事務所には行けたので、そこで少々購入。

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永井荷風「紅茶の後」(籾山書店)大正元年8月25日第3版凾欠美800円

長田幹彦「零落」(現代名作集)大正4年2月22日5版印300円

沼波瓊音「囀」(南江堂書店)明治38年9月5日

シュレーゲル「ロマン的人間」(第一書房昭和11年2月10日凾欠

カスティリョ「ヨーロッパの何処かで」(人文書院)昭和33年8月17日カバ帯欠、以上3冊100円

トドロフ「批評の批評」(法政大学出版局)カバ帯600円

サルトルマラルメ論」(ちくま学芸文庫)カバ帯200円

上から5点は扶桑事務所で購入。「紅茶の後」は所持しているが、背の角が切れていない状態のよいものだったので購入。これは入れ換え用。そしてまた鈴木三重吉の現代名作集の幹彦は、状態がとてもよいのに、大学図書館除籍本で表紙にレッテルがあるという悲惨さ。まだ文字を避けて貼付してあるのが救いか。

トドロフサルトルのは、帰り際にちょいと覗いた田村書店の外ワゴンで購入。お勉強用である。

窓に届かず桃花村

土曜日。

今年度は後期から金曜日午後に仕事が入ったので、基本は古書展に行けない状態。趣味展はさすがに行くがいろいろと体力的に無理がたたる。で、窓展初日だが諦め、土曜日に行こうと考えていた。しかしながら寝不足がたたっていたのかなかなか起きられず、土曜日で閉場も1時間早く、ギリギリ間に合わず。ということで、神保町には出ず仕舞い。

しかし、先日ネットオークションで落札した本が届いていた。

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吉田一穂「桃花村」(弥生書房)昭和47年11月20日特製凾1200円

存在を知ってこの3年間ちょくちょく日本の古本屋を検索していたがついぞ見つからなかった本だが、ふと検索して見たらオークションにかなりお安く出ていたのである。普及版は古書で千円くらいの本だが、詩人唯一の随想集。死の直前の限定本で、限定100部、総革装、天金、記番。署名もないし古書として出てももとより5桁行かないものなのかもしれない。とはいえ、嬉しいことには変わりは無い。

総革装といっても、革の上からニスで固めたような感じの革装。本当はこういうコーティング的なものがないそのままだとよいのだが、そういうわけにもいかないのか。ゴテゴテしてないシンプルさはよいのだが。同じ革装でも、限定版リラダン全集とか限定版三島全集みたいに、革の上からラッカーで塗り固めたようなのもある。塗料?が元セロファンとくっついてしまって、剥がすと日焼けの皮をむくように、下地のベージュ色の革が出てくる。あれも困るのだよな。

テレビと古書と

本日は五反田遊古会と和洋会古書展、どちらにも赴こうと思っていた。が、なんやかやで結局神保町出でるのは諦め、五反田に向かう。本日は土曜であって閉場は17時なのである。

五反田、検温してから入場。まずはガレージ。細かく見て行けばなかなか面白そうな雑多具合であったが、ゆっくり見ている暇もなく。「ユリイカ」のちょっと古いところが1冊200円であれこれとあって、めぼしいところを買っていくかと思ったけれども、荷物になるしというので諦め。2階の会場へ。会場もなかなか面白そうで、初日の昨日なんかはもっとあったのではないか、時間があれば週刊誌などいちいちめくっていたのになあと思ったことであった。

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中井愛訳「ドラクロアの日記」(石原求龍堂昭和17年12月5日初版美200円

中井英夫「薔薇幻視」(平凡社カラー新書)カバ200円

中井英夫「香りへの旅」(平凡社カラー新書)カバ200円

「短歌」(昭和36年2月号)500円

週刊新潮」創刊号500円

ドラクロア」は三島由紀夫関連で。実は10年くらい前に2000円で買って所持しているのだが、ピンピンに綺麗で200円というのを見つけてしまい買ってしまった。この表紙なのでずっとカバー欠かと思っていたが、元セロファンが袖に一部貼付されついていたので、もしかしたら外装無しのこのままで完本かと思ったことであった。それから「短歌」は寺山修司塚本邦雄らの座談会を読みたくて購入。その割にはちょっと高かった。しかしまあ「週刊新潮」創刊号は嬉しい収穫、安い。

そしてこちらは、先日来た扶桑目録速報で注文したもの。

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木重信「楽園の外で」(新潮社)大正8年12月5日初版凾欠2500円

吉屋信子「屋根裏の二処女」(洛陽堂)大正9年2月6日再版凾欠2500円

特に「楽園の外」は探求書であったので嬉しい。戦後に出た舟木重信遺稿集も注文したのだがこちらは売り切れであった。また植竹書院の「花袋全集」1巻も凾付で出ていて逡巡した。目録に掲載されているのは初めて見た。まず見かけないものである。吉屋のは既に所持しているが、もしかして装幀画変わっているかといってみたのである。

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ETV特集転生する三島由紀夫」28日23時〜/12月3日0時〜(再)

この番組に出演しています。冒頭、日生劇場へ行った時のと、中頃に渋谷のNHKで撮影したのと2回出て来ます。お時間のある方はご笑覧下さい。

要注意終末の趣味展

ここのところ都内感染者が連日500名越えということである。久しぶりの趣味展も、もしかしたら人数が少ないかもしれなと思っていた。仕事上、いろいろとリスクもある。それでもまあ、と、開場20分くらい前に古書会館に到着してみると、整理券を配布してみな外でたむろしている。混まないように、ということで、7〜8分前に開場し、整理券順にゆっくりと人が入っていく。わたくしは52番であったが、うしろに20名弱いたか。

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ゆっくり入ったので、これはもうちょっとアレだなという感じで入場、扶桑の棚に向かう。すでにいろいろと抜かれてしまった後であろうが、袖珍版のものが残っていたので、そこからあれこれ抜き出し、選ぶ。また棚下に並べてある雑誌に混じり菊版の明治本がちょろりとあるのを引き出す。あまりお金も使いたくないしということで、サクサクと棚に戻し、会計をした。

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小杉天外「新夫人」(春陽堂明治38年1月26日4版口絵切500円

小栗風葉・小川泰助「女」(日高有倫堂)明治41年9月1日初版落丁300円

飯田旗軒訳「ゾラ短編集」(共同出版明治42年3月27日印ラベル400円

久保天随編「明治百家文選」(隆文館)明治40年4月5日再版400円

「新夫人」は石版口絵の三分の一が欠落。「女」は扉や口絵含めて最初の数ページが欠落、「ゾラ短編集」はここのところよく古書市場に出て来ている国士舘大学図書館廃棄本でスタンプの他に裏表紙にべったりとバーコードのラベル…とダメージがある。まあ「女」は国会のをコピーして挟んでおくかと。「ゾラ短編集」は「馬場大尉」「洪水」の2編収録なのだが、日本人が主人公の日本の話に翻案しているという訳。岡田三郎助の木版挿絵が5葉挿入されている。「文選」は鏡花や紅葉ほか種々の短篇や随筆が註釈入りで収録されているもの。

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相馬御風「個人主義思潮」(天弦堂書房)大正5年9月19日3版カバ欠300円

岩野泡鳴「毒薬を飲む女」(鈴木三重吉大正3年12月24日初版800円

森田草平「ハウプトマン寂しき人々」(青年学芸社)大正3年10月11日再版500円

守田有秋「ズーデルマン作マグダ」(日吉堂本店)大正3年8月15日5版300円

守田有秋「セーキスピーア作アントニイとクレオパトラ」(日吉堂本店)大正3年12月3日初版300円

夏目漱石「倫敦塔 外二篇」(春陽堂大正13年4月15日50版300円

こちらはアカギ叢書もどきなど。「個人主義思潮」は御存知近代思潮叢書で、カバー欠。このシリーズのカバーは裏面に宣伝文句がズラリ印刷してあるもの。これはスティルナーの肖像画が巻頭口絵として貼付されていたりして興味をそそり購入。青年学芸社のはエッセンス叢書。日吉堂本店の名著叢書というのは初めて見た。アカギ叢書モドキ本だろうな。漱石のはヴェストポケット傑作叢書と同じ装幀造本だが叢書名はない。もとは漱石の縮刷としてこういうスタイルが出て、その後他の作家のをヴェストポケット傑作叢書と名付け出すことになったもの。初期の重版は天金だがこれは無し。そして今日一番高い買い物が、鈴木三重吉の現代作家叢書である。まあ参考にということで買ってみた。

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「週刊コウロン」昭和35年8月30日号200円

これは乱歩と三島がコメントを寄せている稲垣足穂の記事があったため。京都に住む異様な珍獣といった扱いの足穂。

いやしかし、一番高価なものでも800円。お金もないし置く場所もないということでケチケチとした買物になったが、まあ。本当は午後、リバース分を漁りたかったのだが、仕事に向かう。

そして土曜日。

今日は夜に芝居があるので都内に出て、まずは扶桑書房に立ち寄る。3冊100円コーナーから以下の3冊を購入。

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「文芸界」第6号、明治35年8月

ダンヌチオ「処女」(三水社出版部)昭和2年8月1日図書館廃棄本

堀口大学訳「嶮しき快癒」(伸展社)昭和12年5月1日限定700部記番

これで100円というのはかなりのお得。「処女」は「処女の巌」ではなく「処女」「祭壇へ」「センチメンタルな物語」の3編収録の短編集。上記と同じく国士舘大学図書館廃棄本で、裏表紙と背表紙にべったりとバーコードおよび番号レッテル貼付。特に背表紙は剥がれないように接着剤?で塗り固めてある。最悪。しかし「嶮しき快癒」は嬉しい。限定700部のうち200部が特製で、こちらは並製500部本。並製といっても背布クロース装の上製本

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夜はクロワ・プロジェクト公演「憂国二・二六」(三島由紀夫原作)という芝居に赴く。「憂国」をメインに、「英霊の声」「十日の菊」「仮面の告白」「太陽と鉄」などの引用がちりばめられ(あと沢地久枝を参考にしたのか)おわりには楯の会の制服姿で「檄」を演説するというシーンもあるもの。

夜9時からNHK三島由紀夫特番があるのに録画予約を忘れてしまい散々。

青展のない年の均一など

さて、三島関連とは別にここのところの購入古書について書いておきたい。まずはネットオークションから。

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菊池寛「啓吉物語」(玄文社)大正13年2月18日5版凾痛300円

ベーメ「感覚学としての美学」(勁草書房)カバ2310円

菊池寛のは芥川龍之介題字、装幀意匠というのが購入理由。題字ばかりでなく題句が署名入りで表紙に印刷されている。作家同士の交流が装幀にも及ぶ例として。ベーメのはお勉強用。

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泉鏡花「番町夜講」(春陽堂大正13年12月30日初版凾欠2500円

こちらは扶桑書房目録注文。前に持っていたのは売却してしまっており、買い直しである。もちろん雪岱装幀で、表紙は総クロス装に源氏香、そして見返しはこんな感じの木版。

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ローデンバック「歌曲 暮れ方の優しさ」(森開社)限定300部記番訳者署名入1000円

こちらは小野夕馥さんの森開社の新刊。こちらで申込のみ頒布。今回のは楽譜も入り、くすんだ桃色の本文用紙。いつもながらに瀟洒な冊子です。

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さて、10月31日、今年は青展が中止になったが、しかし一部の出版社が独自に在庫本セールをするというので神保町にチラと赴いた。白水社などは(コロナ対策もあって)長蛇の列で、これはと諦め、幻戯書房に行ってみると、ワゴンに単行本全部半額とあり。あれもこれもと思ったが、グッと我慢で以下の2冊。

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橿原辰郎「帝都公園物語」1100円

「椿実 詩歌文芸論集」500円

椿実は「メーゾンベルビウ」など限定本も半額であった。

まあそんなこんなでポツポツ買ってはいるのであるが、しかし年一回のイベントも中止だし、最近は古書展もあまり行けていないので、古書欲が高まっているなあというところで、昨日扶桑書房に赴いていろいろ買ってしまった。

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文学同志会編「立身の事蹟」(文学同志会)明治32年3月1日

マーデン「処世の良法」(大日本実業学会)明治36年11月23日
尾上紫舟「銀鈴」(新潮社)明治38年2月1日再版

小栗風葉「荒尾譲介」(新潮社)大正7年5月18日4版凾欠図書館除籍本

小栗風葉「終編 荒尾譲介」(新潮社)大正7年7月20日初版凾欠図書館除籍本

島村抱月訳「ペレアスとメリサンド」(第百書房)大正15年2月20日裸図書館除籍本

以上、3冊100円を2セット。

田山花袋「恋ごゝろ」(新潮社:情話新集)大正4年9月16日初版背痛図書館除籍本1700円

後藤末雄「生活と心境」(第一書房昭和14年11月25日初版800円

図書館除籍本とあるのは番号のレッテル貼付に図書館スタンプ入り。市場にある程度の量が出たようである。べったり貼付されてしまっているレッテル、情話新集などは裏表紙にバーコードが貼付されてしまっていて痛々しい。

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マンディアルグ生田耕作訳「満潮」(奢灞都館)限1500部記番帯欠600円

山田一夫「初稿 配偶」(盛林堂ミステリアス文庫)1400円

3冊100円はまだしも、ついでにとあれこれ買ってしまった。

三島没後50年に向けて

ばたばたしていてこちらのブログを記す暇もなかった、というか、記そうという余裕がなくそのままになっていました。

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こちらは三島由紀夫文学館で開催された三島由紀夫没後50年記念フォーラムの宮本亜門氏の公演。コロナ対策で会場は限定数のみで、申込者にはzoomで生中継というスタイルでした。わたくしはスタッフとして参加。

『男の死』の写真集が出て、秋になり三島関連書もどんどん出版されているような状況。まずは早々にお送り頂いた西法太郎「三島由紀夫事件50年目の証言」(新潮社)、宇神幸男三島由紀夫vs音楽」(現代書館)、浜崎洋介三島由紀夫 なぜ、死んでみせねばならなかったのか」(NHKブックス)、そして佐藤秀明三島由紀夫』(岩波新書)、井上隆史『暴流の人三島由紀夫』(平凡社)。感謝です。新事実や意外な点を追求するもの、三島の本質をギュッとコンパクトにまとめたもの、それから「暴流の人」などは今後のスタンダードとなるべき新しい三島評伝等々。

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犬塚潔「三島由紀夫と死んだ男」(秀明大学出版会)

いつも雑誌「三島由紀夫研究」に惜しげもなく秘蔵資料を用いた論考を寄稿してらっしゃる犬塚さんによる待望の公刊書。徹底した実証主義で、おそらく当事者達よりも正確無比な記述と秘蔵資料満載の本。署名入りで頂戴しました。感謝です。

新潮文庫も新しいのが出たり、新版になったり、ちくま文庫三島由紀夫レター教室」が限定帯出したり、ほかにも三島関連書、三島特集雑誌があれこれ出るようです。

 

 

 

三島由紀夫 悲劇への欲動 (岩波新書 新赤版 1852)

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  • 作者:佐藤 秀明
  • 発売日: 2020/10/21
  • メディア: 新書
 

 

 

暴流の人 三島由紀夫

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三島由紀夫VS音楽

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手長姫 英霊の声 1938 -1966 (新潮文庫)

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三島由紀夫と死んだ男―森田必勝の生涯

三島由紀夫と死んだ男―森田必勝の生涯

  • 作者:犬塚 潔
  • 発売日: 2020/11/10
  • メディア: 単行本
 

 

 

中央公論特別編集-彼女たちの三島由紀夫 (単行本)

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  • 発売日: 2020/10/20
  • メディア: 単行本
 

 

 

三島由紀夫の死と私 増補新訂版

三島由紀夫の死と私 増補新訂版

  • 作者:西尾幹二
  • 発売日: 2020/11/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

三島由紀夫「最後の1400日」

三島由紀夫「最後の1400日」

  • 作者:本多 清
  • 発売日: 2020/11/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

VR的完全版 平凡パンチの三島由紀夫

VR的完全版 平凡パンチの三島由紀夫

  • 作者:椎根 和
  • 発売日: 2020/12/07
  • メディア: 単行本
 

 

雨の散歩展+男の死

久々の南部古書会館である。昨日は仕事で動けず、今日は雨。ぐろりや会もやっているが、まずは五反田からと向かった。そして、土曜日は17時で終わりだったと今更ながら気付くのである。

16時頃会場着。外からそのまま1階のガレージに入れないようロープが張ってあり、脇から入って検温を済ませてから入場という流れになっていた。これはちょっと、初日はけっこう面白かったのではないかと思わせるような棚。

珍しく20分ほどみてまわり、その後2階の会場をザッとまわって終了。2階はむしろ買いたいものがあまりなく。

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黒岩涙香訳「捨小舟」中篇(扶桑堂)明治39年7月5日13版痛300円

「書物往来」大正14年1月号300円

「『新著月刊』解説・総目次・索引」(不二出版)200円

「芸術至上主義文芸」5号、10号各200円

「野生の近代 再考—戦後日本美術史」(国立国際美術館)200円

最後に掲げたのが2階会場で買ったもので、連続シンポジウムの記録集。他は1階ガレージで買ったものである。「芸術至上主義文芸」10号は、泉名月講演収録のために購入。

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さて、これはつい先日なのだが、アマゾンで予約していた本がようやく届いた。待望の本である。

三島由紀夫篠山紀信撮影)『男の死』(米・リツォーリ社)である。

三島由紀夫が最晩年に撮影し、薔薇十字社から撮影篠山紀信、被写体三島由紀夫、装幀横尾忠則、跋文澁澤龍彦で刊行しようとしていながら、三島事件によってそのまま封印されてしまった写真集である。いままで、三島没後になっても出版契約を結んでいた薔薇十字社では刊行案内リーフレットに昭和48年まで刊行予定として掲載されていたし、わたしが知る限りでも、その後幾つか実際に出版へ向けて動き出したという噂は聞いたことがあった。もちろん出ず仕舞いで、ジョン・ネイスンの三島評伝にどういう写真が撮影されたかが記されているだけで1枚も流出することなく伝説のようになっていたのが実際であろう。澁澤が「血と薔薇』創刊のときに澁澤が三島に声をかけ、三島が「男の死」という企画をやりたいと例のセバスチャンと溺死の写真となったわけだが、それ以後、いつ写真集としてまとめることを考えたのか、死ぬギリギリまで撮影していたという。それがいよいよ出るという噂を聞き、また皮算用かと半信半疑でいたのだが、5月に出た「季刊文科」にはっきり出ると横尾忠則が書いており、実際、その後米国アマゾンに書影も出ていよいよと確信したのであった。

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で、とうとう届いたのである。外装なし、背は白布装で黒箔、表紙はグレーに白箔、デスマスクを演じる写真が貼付してある。中身は、三島の「篠山起信論」再録、横尾忠則の書き下ろしエッセイ(ともに英語日本語併記)、「男の死」「楯の会」「武士の切腹」といった構成。リンチで殺された水夫、ライフルで撃ち抜かれた体操選手、刺殺されたフェンシング選手、泥の河川敷にバイクと共に横たわるサングラスのバイカー、車のガレージで腹にドライバー?が刺さり死んでいる男、半被の人夫がツルハシで頭を割られ死んでいるところ、一新太助風アンチャンが魚屋店先で出刃包丁で切腹、溺死、ふんどし一枚でヘルメットかぶった人夫が有刺鉄線にグルグル巻きにされているところ、デスマスク、首吊り屍体、といったような写真が続く。あれ、なんでセバスチャンが入ってないのか、溺死は数枚バージョン違いが入っているのに、何故だと思ったことである。それからネイスン本ではダンプに轢かれた写真もある筈。しかしもちろん初めて見る写真ばかり。どれもこれも物語性が濃厚で、篠山の技術力がともすると場面全体の稚拙さというか妙な生々しさをカバーして救っているように思われた。わたしは三島の写真活動をフォト・パフォーマンスとして論文も書いていたから、50年がコロナであれこれと潰れてしまったけれども、これ1冊出たことで帳消しといった気分。すごい。

 

Yukio Mishima: The Death of a Man

Yukio Mishima: The Death of a Man