漁書日誌 3.0

はてなダイアリー廃止(201901)を受けてはてなブログに移設しました。

青展のない年の均一など

さて、三島関連とは別にここのところの購入古書について書いておきたい。まずはネットオークションから。

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菊池寛「啓吉物語」(玄文社)大正13年2月18日5版凾痛300円

ベーメ「感覚学としての美学」(勁草書房)カバ2310円

菊池寛のは芥川龍之介題字、装幀意匠というのが購入理由。題字ばかりでなく題句が署名入りで表紙に印刷されている。作家同士の交流が装幀にも及ぶ例として。ベーメのはお勉強用。

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泉鏡花「番町夜講」(春陽堂大正13年12月30日初版凾欠2500円

こちらは扶桑書房目録注文。前に持っていたのは売却してしまっており、買い直しである。もちろん雪岱装幀で、表紙は総クロス装に源氏香、そして見返しはこんな感じの木版。

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ローデンバック「歌曲 暮れ方の優しさ」(森開社)限定300部記番訳者署名入1000円

こちらは小野夕馥さんの森開社の新刊。こちらで申込のみ頒布。今回のは楽譜も入り、くすんだ桃色の本文用紙。いつもながらに瀟洒な冊子です。

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さて、10月31日、今年は青展が中止になったが、しかし一部の出版社が独自に在庫本セールをするというので神保町にチラと赴いた。白水社などは(コロナ対策もあって)長蛇の列で、これはと諦め、幻戯書房に行ってみると、ワゴンに単行本全部半額とあり。あれもこれもと思ったが、グッと我慢で以下の2冊。

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橿原辰郎「帝都公園物語」1100円

「椿実 詩歌文芸論集」500円

椿実は「メーゾンベルビウ」など限定本も半額であった。

まあそんなこんなでポツポツ買ってはいるのであるが、しかし年一回のイベントも中止だし、最近は古書展もあまり行けていないので、古書欲が高まっているなあというところで、昨日扶桑書房に赴いていろいろ買ってしまった。

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文学同志会編「立身の事蹟」(文学同志会)明治32年3月1日

マーデン「処世の良法」(大日本実業学会)明治36年11月23日
尾上紫舟「銀鈴」(新潮社)明治38年2月1日再版

小栗風葉「荒尾譲介」(新潮社)大正7年5月18日4版凾欠図書館除籍本

小栗風葉「終編 荒尾譲介」(新潮社)大正7年7月20日初版凾欠図書館除籍本

島村抱月訳「ペレアスとメリサンド」(第百書房)大正15年2月20日裸図書館除籍本

以上、3冊100円を2セット。

田山花袋「恋ごゝろ」(新潮社:情話新集)大正4年9月16日初版背痛図書館除籍本1700円

後藤末雄「生活と心境」(第一書房昭和14年11月25日初版800円

図書館除籍本とあるのは番号のレッテル貼付に図書館スタンプ入り。市場にある程度の量が出たようである。べったり貼付されてしまっているレッテル、情話新集などは裏表紙にバーコードが貼付されてしまっていて痛々しい。

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マンディアルグ生田耕作訳「満潮」(奢灞都館)限1500部記番帯欠600円

山田一夫「初稿 配偶」(盛林堂ミステリアス文庫)1400円

3冊100円はまだしも、ついでにとあれこれ買ってしまった。

三島没後50年に向けて

ばたばたしていてこちらのブログを記す暇もなかった、というか、記そうという余裕がなくそのままになっていました。

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こちらは三島由紀夫文学館で開催された三島由紀夫没後50年記念フォーラムの宮本亜門氏の公演。コロナ対策で会場は限定数のみで、申込者にはzoomで生中継というスタイルでした。わたくしはスタッフとして参加。

『男の死』の写真集が出て、秋になり三島関連書もどんどん出版されているような状況。まずは早々にお送り頂いた西法太郎「三島由紀夫事件50年目の証言」(新潮社)、宇神幸男三島由紀夫vs音楽」(現代書館)、浜崎洋介三島由紀夫 なぜ、死んでみせねばならなかったのか」(NHKブックス)、そして佐藤秀明三島由紀夫』(岩波新書)、井上隆史『暴流の人三島由紀夫』(平凡社)。感謝です。新事実や意外な点を追求するもの、三島の本質をギュッとコンパクトにまとめたもの、それから「暴流の人」などは今後のスタンダードとなるべき新しい三島評伝等々。

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犬塚潔「三島由紀夫と死んだ男」(秀明大学出版会)

いつも雑誌「三島由紀夫研究」に惜しげもなく秘蔵資料を用いた論考を寄稿してらっしゃる犬塚さんによる待望の公刊書。徹底した実証主義で、おそらく当事者達よりも正確無比な記述と秘蔵資料満載の本。署名入りで頂戴しました。感謝です。

新潮文庫も新しいのが出たり、新版になったり、ちくま文庫三島由紀夫レター教室」が限定帯出したり、ほかにも三島関連書、三島特集雑誌があれこれ出るようです。

 

 

 

三島由紀夫 悲劇への欲動 (岩波新書 新赤版 1852)

三島由紀夫 悲劇への欲動 (岩波新書 新赤版 1852)

  • 作者:佐藤 秀明
  • 発売日: 2020/10/21
  • メディア: 新書
 

 

 

暴流の人 三島由紀夫

暴流の人 三島由紀夫

 

 

 

三島由紀夫VS音楽

三島由紀夫VS音楽

 

 

 

手長姫 英霊の声 1938 -1966 (新潮文庫)

手長姫 英霊の声 1938 -1966 (新潮文庫)

 

 

 

三島由紀夫と死んだ男―森田必勝の生涯

三島由紀夫と死んだ男―森田必勝の生涯

  • 作者:犬塚 潔
  • 発売日: 2020/11/10
  • メディア: 単行本
 

 

 

中央公論特別編集-彼女たちの三島由紀夫 (単行本)

中央公論特別編集-彼女たちの三島由紀夫 (単行本)

  • 発売日: 2020/10/20
  • メディア: 単行本
 

 

 

三島由紀夫の死と私 増補新訂版

三島由紀夫の死と私 増補新訂版

  • 作者:西尾幹二
  • 発売日: 2020/11/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

三島由紀夫「最後の1400日」

三島由紀夫「最後の1400日」

  • 作者:本多 清
  • 発売日: 2020/11/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

VR的完全版 平凡パンチの三島由紀夫

VR的完全版 平凡パンチの三島由紀夫

  • 作者:椎根 和
  • 発売日: 2020/12/07
  • メディア: 単行本
 

 

雨の散歩展+男の死

久々の南部古書会館である。昨日は仕事で動けず、今日は雨。ぐろりや会もやっているが、まずは五反田からと向かった。そして、土曜日は17時で終わりだったと今更ながら気付くのである。

16時頃会場着。外からそのまま1階のガレージに入れないようロープが張ってあり、脇から入って検温を済ませてから入場という流れになっていた。これはちょっと、初日はけっこう面白かったのではないかと思わせるような棚。

珍しく20分ほどみてまわり、その後2階の会場をザッとまわって終了。2階はむしろ買いたいものがあまりなく。

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黒岩涙香訳「捨小舟」中篇(扶桑堂)明治39年7月5日13版痛300円

「書物往来」大正14年1月号300円

「『新著月刊』解説・総目次・索引」(不二出版)200円

「芸術至上主義文芸」5号、10号各200円

「野生の近代 再考—戦後日本美術史」(国立国際美術館)200円

最後に掲げたのが2階会場で買ったもので、連続シンポジウムの記録集。他は1階ガレージで買ったものである。「芸術至上主義文芸」10号は、泉名月講演収録のために購入。

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さて、これはつい先日なのだが、アマゾンで予約していた本がようやく届いた。待望の本である。

三島由紀夫篠山紀信撮影)『男の死』(米・リツォーリ社)である。

三島由紀夫が最晩年に撮影し、薔薇十字社から撮影篠山紀信、被写体三島由紀夫、装幀横尾忠則、跋文澁澤龍彦で刊行しようとしていながら、三島事件によってそのまま封印されてしまった写真集である。いままで、三島没後になっても出版契約を結んでいた薔薇十字社では刊行案内リーフレットに昭和48年まで刊行予定として掲載されていたし、わたしが知る限りでも、その後幾つか実際に出版へ向けて動き出したという噂は聞いたことがあった。もちろん出ず仕舞いで、ジョン・ネイスンの三島評伝にどういう写真が撮影されたかが記されているだけで1枚も流出することなく伝説のようになっていたのが実際であろう。澁澤が「血と薔薇』創刊のときに澁澤が三島に声をかけ、三島が「男の死」という企画をやりたいと例のセバスチャンと溺死の写真となったわけだが、それ以後、いつ写真集としてまとめることを考えたのか、死ぬギリギリまで撮影していたという。それがいよいよ出るという噂を聞き、また皮算用かと半信半疑でいたのだが、5月に出た「季刊文科」にはっきり出ると横尾忠則が書いており、実際、その後米国アマゾンに書影も出ていよいよと確信したのであった。

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で、とうとう届いたのである。外装なし、背は白布装で黒箔、表紙はグレーに白箔、デスマスクを演じる写真が貼付してある。中身は、三島の「篠山起信論」再録、横尾忠則の書き下ろしエッセイ(ともに英語日本語併記)、「男の死」「楯の会」「武士の切腹」といった構成。リンチで殺された水夫、ライフルで撃ち抜かれた体操選手、刺殺されたフェンシング選手、泥の河川敷にバイクと共に横たわるサングラスのバイカー、車のガレージで腹にドライバー?が刺さり死んでいる男、半被の人夫がツルハシで頭を割られ死んでいるところ、一新太助風アンチャンが魚屋店先で出刃包丁で切腹、溺死、ふんどし一枚でヘルメットかぶった人夫が有刺鉄線にグルグル巻きにされているところ、デスマスク、首吊り屍体、といったような写真が続く。あれ、なんでセバスチャンが入ってないのか、溺死は数枚バージョン違いが入っているのに、何故だと思ったことである。それからネイスン本ではダンプに轢かれた写真もある筈。しかしもちろん初めて見る写真ばかり。どれもこれも物語性が濃厚で、篠山の技術力がともすると場面全体の稚拙さというか妙な生々しさをカバーして救っているように思われた。わたしは三島の写真活動をフォト・パフォーマンスとして論文も書いていたから、50年がコロナであれこれと潰れてしまったけれども、これ1冊出たことで帳消しといった気分。すごい。

 

Yukio Mishima: The Death of a Man

Yukio Mishima: The Death of a Man

 

 

古書と芝居と

9月26日土曜日、都内出たついでに和洋会古書展会場へ立ち寄る。

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谷崎潤一郎「新版春琴抄」(創元社)初版凾500円

谷口雅春占領憲法下の日本」(日本教文社)重版200円

平岡正明浪曲的」(青土社)カバ帯400円

「新版春琴抄」初版は、実は持っていなかったので凾がぼろいがようやく。というのも、この本の初版と重版では凾につまみ出し口というか半円形の切り込みが重版にはないのである(2版、3版を確認、4版以降未確認)。「占領…」は三島序文、平岡のはお安く探していたので嬉しい。

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9月になってからあれやこれやで、演劇が次々と上演再開されてきたような印象がある。三島関連でも、前にここに書いた劇団新人会もそうだし、日生劇場でのMishima2020やら三条会やら。上演再開は嬉しいけれども、こうも立て続けだと懐を直撃する。花組芝居の「地獄変」も再開してくれないだろうか。

で、Mishima2020の全4作、観に行ってきた。

21日に「橋づくし」と「憂国(「(死なない)「憂国」)」、26日に「真夏の死(「summer remind」)」、「班女」とである。そのあいだの25日金曜日には、スズナリに三条会の「サド侯爵夫人」があった。

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Mishima2020は4作品のうち戯曲は1作のみで、あとは小説の脚色、アダプテーション作品である。「橋づくし」は前に新派でも上演しており、とりわけラストはつまり「みな」についてはどう処理するのかと楽しみにしていたのだが…一応舞台は昭和30年代初頭に設定しているらしいのだが(そういう台詞があった)これについては新派初演のことも含めて論文にしたいのでそこで詳しく書くつもり。「憂国」は三島生前に一度バレエとして上演されていて、そのポスターを横尾忠則が担当したことなどもあったが、こういう舞台化は初めてではなかろうか。といっても、小説「憂国」の舞台化というよりは今現在における舞台表現を通した「憂国」批評という感じのもので、それならばタイトルも納得という感じ。警官に看護婦の夫婦、ライブハウスに密で閉じこもる人間らの対処に同じくライブ仲間の警官が行かなければならない、仲間を逮捕しなくてはならない、という流れ。警官「憂国」を愛読しなぜか急に切腹しかけるが妻がとめて、しかもそこにライブ仲間から何事もなかったかのように誘いの電話がきて…という結末。台詞でも言及していたが、原作のバタイユ的性愛については捨象して、イデオロギー的側面のみ無理矢理に取り上げた感じが残ってしまうのは、せっかく妻役が看護婦設定であるのに、あっけなく人が死んでしまう現場にいるにもかかわらず、死が他人ごとで一寸先は死という切迫感があまりないからなのかもしれない。野心的ともいえるが、わざわざ「憂国」をセレクトしなくてもよいのではとも思われた。

その意味では、「真夏の死」は舞台に椅子2脚のみで夫と妻の語りによって展開するもので極めてシンプルな舞台で、現在を舞台にしている設定。妻の方が語るうちに段々と狂的になっているところがあって面白かったが、夫は自分の妹も死んでいるのに他人事で、長々とソープ嬢相手にああだこうだ語るシーンも狙った効果は希薄で滑稽以前に冷ややかな違和感が残った。やはり小説の舞台化はなかなか難しい。どんどんチャレンジするべきと思うが、なんというか、脚色した服をハンガーにかけたはいいが、そのハンガーが舞台たる箪笥の柱になかなかかけられない、という塩梅とでもいえばよいか。そして「班女」はやはり戯曲であるということもあってその点は安心して観られた。ただ、いちいちイメージ映像のようなものをホリゾントに投影するのがちょっとうるさい。麻実れい橋本愛ほか台詞で十分あの舞台を制御できるのに、なぜああいうのを入れるのだろう。今回のすべての作品にいえることだが、これ日生劇場ではなく小劇場ならそれなりのまとまりがあったように思えて仕方がない。日生の舞台だってそこまで大劇場というわけではなかろうが、演出側に舞台空間がスカスカになってしまうことを忌むところがあったのではとすら考えてしまう。費用や日程などの問題もあったろうが、演出と舞台空間が齟齬を来しているというかジャスティファイしてないような感じというのを総じて受けた。

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25日の金曜日、15時開演で三条会の「サド侯爵夫人」。三条会の三島も「熱帯樹」以来であろうか。客席は25席限定で、料金は6千円。ちょっと高いなと思いつつも、これは値段相応のよい舞台であった。舞台は学校の教室のような感じで机と椅子が列び、ハリーポッターのテーマ曲が流れるなか、そこにシミアーヌとサン・フォンがセーラー服姿で登場。そしてモントルイユも高校の女子制服で登場。三条会っぽいなあと思っていたが、俳優はあの台詞をなんなくこなしている。俳優3名に、首輪に繋がれた犬がシャルロット(台詞は犬を連れてる黒衣)、そしてアンヌは黒衣。それでもなんでも、2幕途中くらいまでまったくあの台詞につっかえずにゆうゆうとこなしているのがなかなかの伎倆で、特にサン・フォンは抜群であった。台詞つっかえたくらいで別になんてことはないのだが、客が先回りして「あの俳優はつっかえたことを気にしてまたつっかえてしまうのではないか」といういらぬ意識に苛まれる…というのはわたしくらいか。最後、舞台面はブルーシートを使ってチラシ絵のように海?というか海岸?になるのがよくわからなかったが、台詞は台詞として技術的にも徹底的に駆使しつつ自由な演出で攻めていくのが面白かった。

『谷崎潤一郎と書物』(秀明大学出版会)出ます!

拙著谷崎潤一郎と書物』秀明大学出版会)が10月1日発売となります。

先日、著者分が届きました。何冊も出している方からすればたわいもないことでしょうが、今まで共著編著ばかりで今回初めての単著でもありこうして一冊の形になるのは感慨ひとしおです。

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A5判/xviii+283ページ/丸背上製本カバー装帯付/造本:真田幸治/図版多数

定価2800円(+税)

本体表紙はわたくしの本棚の写真、カバーには取り扱った谷崎の古書の意匠を使用。メインは古通の連載を大幅に加筆した「谷崎本書誌学序説」。そのほか水島爾保布や名越国三郎らによって挿絵が描かれてきた『人魚の嘆き』についてや、雑誌「初版本」に発表した論考、漆塗り表紙で知られる『春琴抄』各種刊本とアダプテーションの関わりを論じた論文など収録。とりわけ、序文後半の書き下ろし部分は、現在わたしの考える谷崎に限らない古書論となっています。購入は大型書店やネットが確実です。

何卒よろしくお願い申し上げます。

谷崎潤一郎と書物

谷崎潤一郎と書物

  • 作者:山中剛史
  • 発売日: 2020/10/01
  • メディア: 単行本
 

 

【付記】

 かねてより愛読しているブログ「表現急行2」さんが内容紹介を兼ねたご感想をアップしてくださっています。改めて感謝申し上げます。

九月の趣味展

9月も半ば過ぎ多少は秋の気配が感じられるようになってはきたが、湿気が残っているというのか、動くと汗だくになる。コロナも依然収まらない。今日は趣味展ということで、9時40分頃に会場到着。入口で検温ののちに整理券。38番であった。ひとりずつ、ゆっくり開場。会場もコロナ仕様で間引いた感じ。

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じっくり扶桑棚を見てから、ほかの棚も見て回るが間引いてあるぶん一回りも早い。吟味して棚に戻したり、同じようにリバースされたものをまた抜き出したりして、購入。

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村井弦斎「小説家」上巻(春陽堂)元より奥付無300円

末広鉄腸政治小説 戦後の日本」前編(青木嵩山堂)明治29年1月13日4版極美800円

儘世翁(佐瀬徳三)「続当世活人画」(春陽堂明治32年11月22日500円

雑誌「めさまし草」(明治29年4月25日)300円

「小説家」は上下巻だが下巻にのみ奥付がある。上巻には多色刷木版口絵。「戦後の日本」は最初復刻版かと思ったくらいピンピンの極美本で、つい最近まで袋があったのかと思わせるような状態。これも口絵あり。後半がないがこれは日清戦争後ということか。ちょっと送れた政治小説という感じ。「めさまし草」は参考のために。

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土井晩翠「東海遊子吟」(大日本図書)明治39年7月20日再版400円

加藤武雄「春の幻」(宝文館)昭和2年9月15日7版凾欠800円

晩翠のは中村不折らの石版画(?)が挿絵としていくつか挿入されているもの。ほぼ同じ状態の同じ再版が800円であったがこちらを買ってきた。それから加藤武雄の本は「令女界」などの掲載された少女小説集。羽二重装で、蕗谷虹児による装幀。なかの挿絵も蕗谷虹児

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薄田泣菫「泣菫文集」(大阪毎日新聞社)大正15年5月8日初版凾800円

凾は鋲打ちの機械凾、本体は背がバックスキンで平が羽二重。名越国三郎装幀。大毎で同僚だった時期があり泣菫のものをよく装幀している。章扉にもカットがある。天金。ようやくお手頃な値段で入手。

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「近代名家抒情詩集」(交蘭社)大正14年5月20日5版凾美300円

齋藤昌三「書物誌展望」(八木書店)昭和30年5月15日限定800部凾欠200円

大岡信行「正岡容このふしぎな人」(文藝春秋)昭和52年12月15日初版カバ帯300円

「近代名家抒情詩集」はアンソロジーだが、いちいち詩人の顔写真が入っている。羽二重装で装幀は蕗谷虹児。これも状態がすこぶるよい。齋藤昌三のは限定千部のうち200部が特装で800部上製本というのがこれ。凾欠で200円というのは安い。正岡容のは単に読みたかっただけなのだが、この値段なら買ってもいいかと。

本当はこれのほかにもあれやらこれやら抱えていたが、戻した。この程度で収まってよかった。

帰宅してみると、献本が届いていた。

感謝申し上げます。 

三島由紀夫事件 50年目の証言: 警察と自衛隊は何を知っていたか

三島由紀夫事件 50年目の証言: 警察と自衛隊は何を知っていたか

  • 作者:西 法太郎
  • 発売日: 2020/09/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

芝居と窓と黒死館

9月10日木曜日、上野ストアハウスに劇団新人会公演「弱法師/動員挿話」を観に行く。ストアハウスが江古田から上野に移って初めての観劇か。「弱法師」は近代能楽集の一作、「動員挿話」は岸田国士作で日露戦争召集の話。新人会は初めて観る劇団だが、つまり俳優座の衛星劇団のひとつのあの新人会で、三島関連では「班女」を初演したところである…と思ったが、あれは同じく衛星劇団の同人会だ。

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チラシのほかに4pカラーのプログラムもあった。冒頭の多少コミカルな両家争いの場は、なかなか貫禄のある中年俳優が演じるので若者の劇団が中年メイクでやるのとはやはり違う。それが終わると、桜間と2人きりのシーン、ここぞ一番のクライマックスという俊徳の空襲回想になると、B29の飛来音がスピーカーから流れる。俊徳は途中で黒眼鏡をはずして瞼をつむり盲目の演技となるのだが、炎を見た、というところで目を大きく開ける…本当は、効果音などいれず、台詞と演技のみであたかも舞台上が火の海になっている幻を現出して欲しかったところがあるけれども、なかなか難しいか。効果音が導入部のみで、台詞がのってきてからは消して欲しかったし、あの俳優ならばそれに耐えうる演技も可能だったのでは、と思ったことであった。

9月11日金曜日、今日は窓展ということで、グダグダの寝不足で準備をして出かける。が、こちらのチェック不足であったのだが、開場して入って見ると、あきつ書店が参加していない。みはる書房もかわほり堂もである。ガッカリ。ザッとまわって、結局以下を購入したのみ。

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サン・ニュース・フォトス編「天皇」(トッパン)昭和22年2月11日カバ500円

岩橋邦枝「逆光線」(三笠書房)昭和31年7月25日初版カバ300円

筋書「五月大歌舞伎」(昭和32年5月)100円

筋書「文藝春秋祭り」(昭和41年11月)100円

「国文学解釈と鑑賞」臨増三島由紀夫のすべて300円

天皇」は亀倉雄策デザイン。家族写真や行幸の写真など、人間宣言後のイメージを集めた本というべきか。布装上製本賀川豊彦が寄稿。「逆光線」は女太陽族の代表作でもあり前々からケチケチ安く探していたもの。歌舞伎座のは谷崎監修の源氏上演、文春のは文士劇の筋書。

お昼前に早々に見切りをつけ、昼食をとってから神保町より半蔵門線で表参道へ。青山にあるビリケンギャラリーで開催中の近藤ようこ展に赴き、澁澤龍彦原作の「高丘親王航海記」1、2巻のイラストとサイン入りを購入。

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帰宅してみると、ネットオークションで落札したLPレコードが届いていた。

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三島由紀夫作品連続上演「サド侯爵夫人」(ビクター)帯欠1900円

残念ながら帯欠。この松竹でやった三島連続公演のLPは完揃えまでラス1。やっとという感じである。適価で購入できてよかった。

9月12日土曜日、所用にて神保町に出る。せっかく神保町に出たのだからと東京堂に行き、今日発売の文庫を購入。雨が降ったり止んだりのなか、用事を済ませ、扶桑書房事務所にて古書を購入。

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室生犀星性に目覚める頃」(新潮社)大正9年1月5日初版凾欠2800円

小栗虫太郎黒死館殺人事件」(新潮社)昭和10年5月12日初版背少欠凾欠12000円

大きな買物である。しかし三大奇書は裸本でいいから所持しておきたかった。逡巡したがこういう値段ではなかなかお目にかかれまいと購入してしまった。また犀星の恩地装幀のこれも持っておきたかった。これは10年くらい前か、凾欠が6千円くらいで出たことがあって勇んで注文したら当たって喜ぶのもつかの間、届いてみたらその後の並製普及版だったということがあり、欲しかった本なのである。再来週にはまた三島の芝居でチケット代ごっそりかかるのでちょっときつかったが致し方あるまい。

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東雅夫編「ゴシック文学入門」(ちくま文庫)書名入定価

川崎弘二「日本の電子音楽論考編1」(engine books difference)

前者が東京堂で購入したもの。後者は現在著者に申し込めば無料で送っていただけるとツイッターで告知されていたので申し込んだもの。ありがたいものである。

けっこう買ってしまって、なかなかキツイものがある。

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わたくしの初めての単著、近刊です。ご予約お願い申し上げます。 

谷崎潤一郎と書物

谷崎潤一郎と書物

  • 作者:山中剛史
  • 発売日: 2020/10/01
  • メディア: 単行本