漁書日誌 3.0

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中止古書展の注文品

4月17〜18日に開催予定でコロナ禍のために中止となった五反田散歩展の目録で注文した本が届いた。

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糸井武雄「明治大正小説とそのモデル」(章華社)大正15年12月6日再版2000円

定番の「金色夜叉」「不如帰」あたりから珍しいところでは谷崎潤一郎「羅洞先生」まで、もちろんゴシップ記事の当て推量だろうけれどもズラリと列挙。「金色夜叉の真相」とかそういう本はすでにあったけれども、大正期にすでにこういういろいろな小説のモデル一覧のような本が出ていたわけだ。つまりこれは、この小説は誰それをモデルにしているという、主人公重ね合わせ型、ゴシップ先行型の読書の副読本のようなものだ。そういう読み方と楽しみ方がメインとはいわないまでも少なくなかったということである。否、こうした情報なくして小説読書はありえたのかとすら思える。テレビのない時代、芸能ワイドショーを見る感覚で私小説を楽しむ読書もあったのだ。文学研究者なら鼻で笑いそうだが受容の実態ということを考える上で興味深い資料である。

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この版元、恥ずかしながら全く聞いたことがないところだが、巻末広告に「なるまで叢書」なる叢書の広告。これは欲しい…

ところで、昨日は西部古書展の目録が届いた。表紙にデカデカとコロナの影響で中止になるやも云々記されていたが、これも散歩展のようになるか。目録は目録で面白いのだが、やはり古書展の醍醐味は場を漁ることで、事態の終息を祈るばかりである。とかいいつつ遠隔授業の準備で古書どころではない。

緊急事態宣言下の古書

コロナ禍による緊急事態宣言が東京に出されたのが7日、そして今日はそれが全国に敷衍されることになった。まさに戒厳令下のようである。都心郊外のうちの近所などでも20時以降はコンビニしか開いていないような状況。

古書展は軒並み中止、古書店も営業停止の区分に入ったとかで(ただし広さによる)、ツイッターなどを見ていると古書業界の戦々恐々といった状況のようである。これがあと(うまくいって)1ヶ月も続くのではたまらない。

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下町展も和洋会も、そして窓展も散歩展もみな中止となってしまった。

そして古書は。そう、こういう状況でも買うのである。一昨日だったか、ポストに扶桑書房目録速報が届いていた。いつも矢庭に来るが、閉じこもりで鬱々とした気分であったからであろう、今回ほど届いたというだけで意外な嬉しさがあったのはほかにない。この状況でさすがだなあと思いつつ封を切る。目を通し、電話。欲しいものはあった。注文。そしてすぐに届く。

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小川未明「白痴」(文影堂書店)大正2年4月1日再版凾9500円

小川未明「闇」(新潮社)明治43年11月28日初版裸印5000円

千葉春村「絵画小説 愛の力」(婦女界社、大正10年9月20日再版裸1200円

未明の2冊が扶桑目録で注文したもの。「愛の力」というのはネットオークションでの落札物である。で、「白痴」。これは前に凾欠を買っていたが、今回ようやく凾付。津田青楓の装幀(扉だけ木版)、戸張孤雁による著者肖像油絵がカラーで口絵になっている。どっしりとした本で初版は天金だが、今回入手した再版は天金ではなかった。それから「闇」は初めて実物を見る本。見返しに大きく蔵書印があるが全体的には美本。外装はおそらくはカバーかなと思われる。

それから「絵画小説」というのは、まあ挿絵が多い本なのだが大正の後半にちらほらこういうジャンル名を冠した小説が一部で出てくる。これはそのうち論文にまとめるつもり。

しかしけっこうな出費だが、まあこういう状況では(精神衛生的にも)致し方ないか。とはいえまあ、無宿渡世の非常勤としては今後収入の不安もかなりあり、出費はなるべく抑えていかなければなあとケチケチ。今後数年はいまn影響を受けていくのだろうなあと思うとまさに暗澹とするほかない。

発熱チェック古書展+ささま閉店

昨日、ツイッター荻窪ささま書店が5日に閉店し、木曜から在庫セールだとの情報を得た。ささまが閉店って、そうなったらもう荻窪に下車することもなくなるのではないか、というくらいの存在である。この漁書日誌(ブログ以前のサイトの方)だと1999年の記述にもう出てくる。たぶん1997年か98年くらいに行き始めていると思う。なかなか広く、薄利多売でお高めの学術本が安く買えたり、たまに戦前の本がぽつりとあったりする、という印象。ここがなくなるのはきついな。惜しい。これはいかなくてはなあと思っていた。

で、今日である。向かう途中でツイッターを開くと、既に混雑している様子。このコロナ禍もなんのそのである。どうも今日木曜から、西部古書会館で青札市というのをやっているらしいことを知り、だったらどうせ荻窪くんだりまでいくのであればと、まずはそちらに行くことにする。

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入口では体温を計測して熱がないか確認してから入場できる。おでこに小さい拳銃型のものを向けると熱が測れるというもの。そして入場にあたって消毒アルコールも用意されていた。

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いやしかし、西部古書会館も久々である。半年、いや、1年ぶりくらいか。今日は入ったところにみすず書房岩波書店人文書が、ボールペンの線引きがあるが安くドッサリ並んでいて、この程度ならとあれこれ漁っていた。

で、結局買ったのは以下。

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グリーンブラッド「ルネサンスの自己成型」(みすず書房)カバ800円

村上淳一「仮想の近代」(東京大学出版局)カバ200円

演劇実験室天井桟敷チラシ500円

早稲田祭1958パンフレット540円

最初の2冊は、ほんのわずかにボールペンによる線引きがあるが、たったこれだけでこんなに安いなら大歓迎的なもので、ホントはこの他にも数冊抱えていたが、ささまでの買い物を考えて手放した。それから天井桟敷のチラシは「青ひげ」と「伯爵令嬢小鷹狩鞠子の七つの大罪」を同時上演したときのもの。初期桟敷のチラシが500円なら。それから早稲田祭パンフは、この数年前のやつなら寺山修司の「忘れた領分」とか出ているだろうと参考に買ってみたもの(帰宅後調べてみると、寺山のを上演したのは昭和31年5月の「緑の詩祭」であって学祭ではないみたい)。それでも豪華な面子の催しが目白押しで、例えばミステリクラブは乱歩と清張らを読んで講演、ほかにも中野重治尾崎士郎の講演、増村保造野添ひとみゲストに呼んでの映画上映等々いまとは比べものにならない感じ。

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で、17時過ぎにそこを出て、今度は一路荻窪へ。ささま書店を目指す。このくらいの時間になると冷たい風が強く吹く。寒い。と、既に店の中にはかなりの人。店内のものはすべて1割引で、合計1万円以上の買物だと2割引になるという。

まあしかし、先日きたばかりだよなあとザーッと回って、以下のものを購入。

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岡野他家夫「日本出版文化史」(原書房)凾帯1000円

大正演劇研究会編「大正の演劇と都市」(武蔵野書房)カバ帯500円

近代文芸復刻叢刊「屋上庭園」(冬至書房)帙段ボール凾110円

とくにこれというものはなかったけれども、出版文化史はこの復刻版の方を安く欲しかった(紙質がいい)。棚はけっこうスカスカになっているところもあって、かなり売れているのだなあと思われた。頻繁ではないけれども、20年ちょい通っていろいろな買物をした記憶に充ちており、やはり閉店はさびしいものである。

外出自粛令下の古書展

東京都では週末外出自粛要請が出た。五輪延期となってからコロナ禍はますます猖獗を極め、たとえば昭和文学会や日本近代文学会といった学会も春季の大会・例会は中止との由。古書展も本部古書会館での和洋会は中止となった。しかし南部古書会館の五反田遊古会、西部古書会館での中央線古書展は予定通り開催された。

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五反田遊古会に二日目の土曜日に赴いた。2階への入口には消毒液、2階は窓があけてあり(少し寒いが)換気が意識されていた。で、もちろん注文品があったからというのもあるのだが、今回はちょっとそれ以外の理由もあった。

とはいえ、ダラダラしていたら遅くなり結局は閉場15分前くらいに会場に到着。ガレージをザーッと見てから、2階の会場へ。そこにいらした月の輪書林さんに、今回目録出品されている“コピー”を見せていただく。というのは、中央公論社の編集者で、一時期谷崎潤一郎の秘書をしていた(その後谷崎と衝突、出入禁止に)、小瀧穆(穆=あつし)の昭和20〜21年の日記のコピーが出品されており、前回趣味展の会場での立ち話で、ご厚意で見せていただけるとのことであったからである。終戦直後、谷崎の所に挨拶にいったときの記述、「細雪」出版についてかなり細かい指示を受けて困惑している様子、小瀧は荷風担当であったこともあり荷風についての記述などもあった。これはむしろその後の日記を見てみたい、こうしてコピーが出回っているということはこれ一部ではない筈だ、それはいまどこにあるんだろうかなどと思ったことであった。

で、残り5分くらいだったが、せっかく来たので会場をザッとまわる。澤口書店が黒っぽい棚で、初日には掘り出し物があれこれあったと聞く。しかしゆっくり見ている時間はなく、2点のみ。

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長谷川郁夫「美酒と革嚢」(河出書房新社)カバ帯2200円

小尾俊人「出版と社会」(幻戯書房)カバ帯2500円

これは目録注文品。両方とも買って読みたかったが、なかなか相応の定価に手が出せなかったもの。安く入手できて嬉しい。

それから、会場で買った2点にくわえ、今週ネットで買った古書も記しておく。

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「特別号(附)」カード11枚帙500円

サンデー毎日昭和3年300円

斎藤光次郎「青騎士前後」(名古屋豆本)昭和43年5月31日限定2380円

幸田成友「番傘・風呂敷・書物」(書物展望社昭和14年6月18日再版凾欠1260円

末松謙澄訳「谷間の姫百合(一)」(金港堂)明治21年11月14日校正再版

末松謙澄訳「谷間の姫百合(二)」(金港堂)明治21年12月21日初版、2冊揃100円

「特別号(附)」というのは何だかよくわからないのだが、おそらくは昭和初期の梅原関連で別途読者に配布された附録であろう。内容は無修正のたぶんフランスのエロチックポストカードかと思われる。この程度のものを当時秘密裏に頒布していたのかという資料として。それから「サンデー毎日」は、名越国三郎の絵のため。この辺はきりがないが。この2点が会場で買ったもの。

名古屋豆本は、今執筆している原稿のために必要で、なくなく日本の古本屋で注文したもの。これでしか見たことのない情報が出ていて、まあ元は取ったか。奥付には「名古屋豆本 別冊企画本その第1集」とあるが記番のあるところは番号がなく、限定何部なのかもわからない。発行は名古屋タイムズ気付亀山巌友の会。

あとの2点はネットオークションにて。幸田の本は書物関係でちょっと面白い記事がありそうということで。

締切目前の原稿が終わらない、確定申告まだやってない、4月からの準備等々、とてもではないけれども、家に籠もってあれこれやらなければならず、病気に罹患する余裕は一ミリとてもない。

コロナ禍趣味展

趣味展である。前回も記したけれども、コロナウイルスによるコロナ禍は全世界に及び特にイタリアが酷い状況との由、連日のニュースで知るところである。それはそうだが、身の回りに罹患者を聞かないからか、こちらはいたって呑気ではある。しかしたしかにアルコール消毒は見かけたらやるようにしているけれども、マスクも買い置きがあるわけではない。

古書会館に9時半頃には到着したいと9時頃には駅前に行ったのだが、駅前のドラッグストアには長蛇の列。あれがマスクやトイレットペーパー買いの行列かと思ったものである。そんな光景を横目に、古書会館へ向かう。

今回、大阪に引っ越される古書仲間の方から春陽堂の「明治大正文学全集」全巻予約者特典の本棚を譲り受けることになり、しかも本日持参してくれるとのことで古書会館で受け取る手筈となっていた。で、趣味展の行列中に受取り、持参した袋に入れて持ちそのまま列び、帳場へ荷物預ける時に一緒に預かってもらう。

で、趣味展。中年から老人の芋洗い状態の趣味展である。もちろんマスク着用。帳場前に待機してあと5分で開場という時に、開場。せまいこの場所にギュウギュウ詰めで人間がいる状態を続けるのがあやういと判断したのであろう。そそくさと扶桑書房の棚へ。今日は小型本がズラリ出るという話を時前に聞いていたが、だいたいが詩歌の本。

注文していた鴎外『青年』(籾山書店)初版凾欠背傷4000円はハズレ。これはお手頃だけど、今回は外れてくれてよかったかもしれない。というのも、昨日、扶桑書房の目録速報が来て注文したばかりであったから。コロナで先行き不透明な時期、非常勤の職では明日何があるかわからない。

で、友人等とお茶に出てから、戻ってきて一通り見て、買い物を吟味してお会計。一等高くても800円。けっこう抑えたけれども、しかしそれでもかなり散財。

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「明治文庫」5編(博文館)明治26年12月25日口絵欠400円

田山花袋「ふるさと」(新声社)明治33年3月1日3版背痛400円

柳原白蓮「几帳のかけ」(玄文社)大正8年4月5日総革再版裸800円

「岡田式静坐法」(実業之日本社)大正5年7月10日68版改訂増補凾欠300円

「明治文庫」は山田美妙の巻。短篇小説明治文庫といえども、なかには韻文やらエッセイ(?)も入っていてちょっと面白い。花袋のは何てこともない小冊子。「几帳のかけ」は御存知白蓮の作品集で戯曲も収録。バックスキンものは粉が問題。改訂版は同じ革装でも装幀を一新して出される。

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若山牧水「別離」(東雲堂書店)明治43年5月15日再版裸少ムレ800円

小山内薫「霧積」(籾山書店:現代文芸叢書)明治45年6月13日初版400円

水谷まさる「少女詩の作り方」(交蘭社)大正11年9月20日初版裸200円

佐藤是康訳「ダヌンチオ集」(中央出版社:世界文学叢書)昭和3年12月20日再版凾800円

「別離」は嬉しい。前に扶桑目録で重版裸と重版カバー付が出ており後者を注文したら重版途中で改装したバージョンで、こちらの角背上製本が欲しかったのである。それからなんと言っても「ダヌンチオ集」。本の存在自体知らなかった。中身はほぼ「犠牲」で、「フランチェスカ・ダ・リミン」も併録。著者解説もあるけれども英訳からの重訳だろうか。「犠牲」は新潮社のドイツ訳からの重訳だったか、あれを読み、その後、映画公開記念で出た「罪なき者」も読んだ。

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荒木巍「雷鳴」(版画荘:版画荘文庫)昭和12年12月20日初200円

薄田泣菫「猫の微笑」(創元社昭和2年5月25日再版凾美800円

藤原審爾「みんなが見ている前で」(コバルト新書)昭和30年9月20日20版カバ200円

稲垣足穂全集13」(ユリイカ)昭和34年4月5日凾欠痛400円

「雷鳴」は表紙全体にパラフィン紙がくっついてしまっているのでこの価格。「猫の微笑」は泣菫の名越国三郎装幀本のなかでは見かけない方。

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「帝国劇場絵本筋書」大正10年10月、200円

「文芸文化」昭和18年3月、200円

中村歌右衛門展」図録(世田谷文学館)500円

歌右衛門展、行こうと思っているけれどまだ行けてないのである。それが古書展会場で先に図録だけ買ってしまうとは。「文芸文化」は三島由紀夫掲載号で。それから帝劇の筋書きだが、これは小野清子「本朝王昭君」上演時のもの。小野清子とは北島春石の奥さんの名前。偽作詐欺で逮捕された後の倉田啓明が北島のところに世話になっており、奥さん名義で萬朝の懸賞に出したら一等になった作品。

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「批評」2号、3号、各100円

「南北」(1967.9)150円

「シナリオ」(1971.10)200円

これら雑誌は、三島由紀夫寺山修司関連で。「批評」は持っているが今回のが状態良いので。

それから、趣味展から本棚を持って帰宅後、自宅に届いていた扶桑目録注文品である。

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鈴木善太郎「幻想」(萬朶書房)大正7年1月1日初版凾欠6500円

これは入手できて嬉しい。短篇集で、並装、川端龍子装幀。鈴木善太郎は、これで「幻想」も「暗示」も「人間」も入手できた。

 

で、本棚である。

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楔で止めてあるだけの極めてシンプルな作り。「明治大正文学全集」のプレートがなければなんだこれはというところだが、90年前のそのままのようで、補修などもされていないようである。これにズッシリと明治大正文学全集全巻が入るのか、と。

ウイルス禍と古書展

紙魚展に赴く。

米国では非常事態宣言が出た由、世界的にウイルス禍である。こういうときこそ「猖獗」という言葉がぴったりくる。電車に乗ると、その車両でマスクをしていないのはワタクシだけだったり。スペイン風邪が流行したときも、みなあの黒いマスクなどして街鉄なんかこんな感じだったのであろうか。

で、古書展だが、ウイルスなど関係ないってくらいの通常運転、盛況であった。数冊文庫本などを抱えていたが、これはというのがあって、すべて元の棚に戻した。というのは、後藤宙外とか尾崎紅葉とかそこそこの価格で口絵付本が並んでいたからだ。お金もないし、それでも逡巡した上で購入。

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尾崎紅葉三人妻」(春陽堂明治28年6月13日3版裸少汚3500円

「小劇場」2号(俳優座)200円

三人妻」は、元は上下巻の本。これは3版だが、上下合本になって1冊本になったのは再版か3版からか。初版は下巻のみ持っている。で、あとで気がついたのであるが、この本、表紙には下巻の表紙が用いられ、裏表紙には空押しの上巻意匠(「三人つま」表記の方)が用いられている。これはなんだろう。他の合本重版でもそうなのか。

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「小劇場」の方は、六本木の小劇場が出来た時に1号が出たようだ。その後1年以上の間を空けて2号が出ている。3号以下出たのであろうか。

ところで、会場に入る前に古書会館2階で開催中の「作家・大西巨人」展を見る。原稿、書簡、メモから本の書き込みまでズラリと展示、解説冊子も配布している。これはファンや研究者は嬉しい展示だろうなあ。

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 追記。本日、図録「作家・大西巨人」をお送り頂きました。感謝です。古書会館のみならず二松學舍大学でも開催されていた同展のオールカラーの図録で、編集は山口直孝先生。肉筆のここという箇所が全部カラーでこれは資料としてもただ読んでも面白い図録になっています。

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津田青楓展から荻窪へ

コロナウイルスの猖獗によって各種イベントが中止となり(本当なら写真美術館での「クレマスター」全作上映とか予約していた)、都立図書館が閉められ昨日になって国会図書館もしばらく閉館というので滑り込みで行ってきたり。まあそういう状況であってみれば、ウイルスはどうでもいいとしても、行こうと心づもりしていたものが早々に終了してしまってはかなわない。ということで、今日はまだ無事にやっている津田青楓展に赴いたのであった。

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生誕140年記念 背く画家 津田青楓とあゆむ明治・大正・昭和@練馬区立美術館。ここは一昨年だったか芳年展を見に行ったところである。で、17時半入場終了で18時まで。17時半少し前に入る。

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木版画、デザインから油彩、南画など、いろいろな側面で活躍したわけで、絵画としてはやはり緑色がかった肌の特徴的な裸婦像とか小林多喜二虐殺を象徴的に描いた聖セバスチャンの殉教の様な殉死図など迫力があったが、一等の興味はやはり装幀である。漱石の後半のものとか、三重吉や松岡譲などの装幀作品、装幀下絵など興味深く見て行った。会場(図録にも)には神奈川近代から借りてきた三重吉『女鳩』の特装・総革装帙入が展示してあった。『櫛』もあったが、こちらは表紙肉筆油彩の限定20部本ではなかった。上の写真は、図録と絵葉書(装幀原画のもののみ)。

練馬区立美術館の最寄りは中村橋駅だが、駅の反対側のバス乗り場からバスで中杉通りを一直線、15分程度で阿佐ヶ谷へ。阿佐ヶ谷から電車で一駅、荻窪で下車して、今度はささま書店へ。まあ、こちらの方にせっかく来たのだからという理由以外にはない。

1時間、じっくり見て、最終的に(この金欠時に)またこんなに買ってしまう。

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西村真琴「凡人経」(書物展望社昭和10年3月20日限定500部記番凾欠800円

清岡卓行編「イヴへの頌」(詩学社)昭和46年4月12日限定1200部記番凾800円

「イヴへの頌」は今まで迂闊にも気がつかなかったが、全編肉筆で編まれた詩集である。それがちょっと気になり。記番の番号は3番で状態も良く安いからでもあるが。しかしなぜこの本は凾と本体のサイズがこんなにずれているのだろう。凾が大きすぎてスカスカ。

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それから西村真琴は、御存知、学天則西村真琴である。西村の実母の描いた絵を30枚別刷りにして貼付したエッセイ集。徳冨蘆花の揮毫、島崎藤村の序文、そして自序と、3種の肉筆が巻頭に印刷されている。凝り過ぎ。さすが書物展望社の本である。これが少し前にネットオークションに出ていて競り負けていたので、これは嬉しかった。

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ヴィトコップ他「グラン=ギニョル恐怖の劇場」(未来社)カバ帯500円

「続塚本邦雄歌集」(国文社:現代歌人文庫)400円

井口時男「批評の誕生/批評の死」(講談社)カバ帯500円

先の図録と交通費を考えるとけっこうな散財だ。